教員を目指し、NPO法人Learning for Allで学習支援ボランティア教師として活躍していた方々の特集をお届けする最終回、第4回目です。
*NPO法人Learning for Allについてはこちら
http://learningforall.or.jp
「教員を目指すにあたって、今のうちに力をつけたい」と思っている方、必見です。
今回は、学生時代にボランティア教師や運営スタッフを経験し、大学卒業後、海外留学を経て、現在はLearning for Allの職員として教師の研修や採用を広く担当している入澤充さんにお話を聞きました。Learning for Allの研修や学習支援には、どのような特徴があるのでしょうか。
インタビュー
Learning for Allは、どのようなことを目指して活動していますか?
入澤:Learning for Allは、子どもたちに学びを届けることによって教育格差の是正を目指しています。我々のアプローチは大きく分けて2つあります。
①短期的アプローチ
主に貧困世帯の子どもたちに学習支援を提供しています。
私たちの教室には、さまざまな困難を抱えた子どもたちが通っており、学力面では定時制の高校に行くのも難しい子どもたちも大勢います。
そのような子どもたちが、この先生きていくうえでどういった困難をかかえるかを考え、人生の道筋をより良い方向に変えたいという想いを持って活動しています。
②長期的アプローチ
一方で、現在、日本の子どもの6人に1人が相対的貧困状態にあると言われており、学習支援だけでこの現状を解決することが非常に難しい現実もあります。
そのため、私たちの活動に参画してくれる学生ボランティア教師の育成にも力を入れています。
これによって、彼らが大学卒業後社会に出た時に、学校現場や企業、行政など様々な分野からアプローチすることが可能になると考えています。
Learning for Allに参加する学生ボランティア教師には、どのようなサポートがありますか?
入澤:私たちは、ボランティアといっても子どもたちから見れば「ひとりの教師」に変わりないという思いを持ってボランティア教師を育成しています。
困難をかかえる子どもたちに向き合うには、しっかりとした実力をつけなければなりません。
そのため、専門家の監修を受けながら5年以上かけて開発した計50時間の研修をボランティア教師に実施しています。
研修では大きく3つのことをお伝えしています。
①子どもの学力を向上するための、指導方法に関する内容
まず、一人ひとりの子どもたちの深い理解に根ざした指導案の書き方です。
子どもにはどういう特徴があり、それぞれの子どもに対する指導はどうするのが効果的なのかを考え、1分1秒に意図を持った指導ができるような指導案を書くスキルをお伝えしています。
併せて、子ども目線にたった指導方法や教材作成の方法もお伝えしています。
また、様々な知見を取り入れ、自己肯定感の低い子どもたちの意欲を引き出す方法についても学習してもらえる内容となっています。
②学習面以外で教師に必要とされるスキルに関する内容
子どもたちのあるべき姿を描き、現状とあるべき姿の間にある課題を特定し解決していく思考方法、他者を巻き込むリーダーシップ、そして、成長につながる自己内省(リフレクション)の方法等をお伝えしています。
Learning for Allでは、毎指導後に自分の指導について振り返り、自分のあり方を変えていくからこそ教師は成長できると考えています。
そのため、指導期間中は教師一人ひとりにメンターがつきます。
メンターは、「答えを教えてくれる人」ではなく、「教師の成長を信じ伴走してくれる存在」です。
毎回教師の指導を観察し、よかった点についてフィードバックをくれたり、教師が困難を感じた指導場面について的確な質問を行い、教師の思考を促すことを通して、教師の成長に寄り添っています。
③チームビルディングに関する内容
Learning for Allの学習支援プログラムでは、8~10人の教師と、過去に教師を経験した2、3人のスタッフが1つのチームとなって各教室を運営しています。
研修時から、チームのビジョンを共有する等メンバー同士の対話の時間を多く設けており、チームビルディングがなされる仕組みがあります。
これにより、チームのメンバー同士で常に支え合い学び合える関係を築いています。私たちのプログラムには、初めて参加する教師が毎期大勢います。
一人で指導すると思うと難しく感じることもあるかもしれません。
しかし、私たちには教室のメンバー全員が子どもたち全員に責任をもつ文化があり、指導後には一人の子どもへの指導のあり方についてメンバー全員で1、2時間かけて話をすることもあります。
初めての方にも安心して参加いただける体制が整っているほか、チームのなかで経験を積むことを通して、参加する一人ひとりが他者の意見や多様なものの見方を吸収し、自分を指導のあり方を客観視できるようになるという効果もあります。
教員を目指している方へのメッセージをお願いします
入澤:Learning for Allのプログラムを卒業し、現在教員として活躍している人が大勢います。彼らは皆、多忙を極める教育現場においても、一人の子どもも置き去りにしないという覚悟を持って日々子どもたちに接しています。
教室のなかには、学習意欲が低いように見える子ども、先生に反抗する子ども等さまざまな子どもたちがいます。
しかし、Learning for Allの現場で困難をかかえた子どもたちと向き合う経験は、そういった子どもたちに出会った際に違った見方、接し方ができる引出しを増やしてくれることと思います。
子どもを抑え込むのではなく、子どもたち一人ひとりの可能性を信じ、肯定的な働きかけができる、子どもの人生をより良い方向へ導くことができるような先生になれるきっかけのひとつになると思います。
教員を目指す方にとって、今のうちにできることはたくさんあると思いますが、そのひとつとして、Learning for Allのプログラムはさまざまな力をつけることができる有力なひとつだと自負しています。
後悔はさせません。
教員を目指す方にはぜひ一度、まずはLearning for Allの説明会にご参加いただきたいと思います。
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NPO法人Learning for Allについての4回にわたる連載は以上です。
Learning for Allでは現在、2017年1月〜3月に実施される冬期プログラムの学習支援ボランティア教師を募集しています。プログラムに関する詳細は下記をご欄ください。
http://saiyou.learningforall.or.jp/
過去のインタビューはこちら
⇒特集:教員を目指す私たちが、学習支援の経験で得たもの①
⇒特集:教員を目指す私たちが、学習支援の経験で得たもの②
⇒特集:教員を目指す私たちが、学習支援の経験で得たもの③
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