1 はじめに
本記事は、1/9に名古屋で行われた『「ビリギャル」坪田信貴×「百マス計算」隂山英男 徹底反復研究会冬季セミナーin名古屋』での、坪田信貴先生と隂山英男先生の対談をまとめたものです。なお、記事中の2人の発言には編集上の関係から一部記者が手を加えています。
坪田先生の著書『ビリギャル』を発売直後に購入した陰山先生は、「なんだこれは!これは本物だ」と確信し、坪田先生を京都に招待します。その後、坪田先生の塾に行った時に、坪田先生の机の上に、自分の徹底反復の本があったことに驚きます。
そんな二人が、百ます計算・反復学習の効果や学習のポイントを語り合いました。
2 短期間の学習
「ビリギャル」の本の中で、大学受験対策でも、小学校の学習が身に付いていない場合は小4からやり直すという場面があります。その点について2人の先生は次のように言います。
坪田先生
「特におこなったのは算数、漢字です。読み取りというところも始めました。一年分だから一日一ページとかいう進め方はダメで、経験的にもデータ的にも、短時間で集中してやったほうが良いです。」
隂山先生
「僕なんかも、一年分の漢字を前倒しで、できるできない関係なしでやってしまえと言っています。まずは一通りやってしまうことが重要。
ところが学校の先生は真面目なので、指導したところは全員ができるようになっておかなければいけないと考えてしまい、結果的に授業の進度が遅くなります。」
3 短期間の学習がもたらす効果
このような学習法では、「どんどん先に進むけど、本当に学力が身に付くのか?」という疑問も浮かんできます。それに対して、短期間の学習には、学習内容が身に付く以上の効果があると言います。
隂山先生
「学校の先生はすべてにおいて100点を目指している傾向が強い。100点を目指さないことによって学習にスピード感が出てきます。スピード感は、集中とつながっています。
また、私は小学校高学年の担任を持つことが多く、未達成感によるコンプレックスを抱えている生徒を受け持つことが多くありました。そこで百ます計算をすると、「やったら案外できるじゃん」という感覚を持たせることができます。百ます計算の一番の効果は、やったら自分が思っていたよりもできるということを実感させることができることなんです。」
坪田先生
「完璧主義って身を亡ぼすなと思っていて、完璧な成功や100点を目指すと必ず失敗します。「成功」じゃなくて「成長」を目的とするなら百ます計算は成長を実感できるのでとても効果的だと思います。
すべてを100点に持っていく必要はない。例えば、ロールプレイングゲームでは1レベルを50レベルに上げるのってすごく順調で簡単。一方、98レベルを99レベルに上げるのはものすごい時間と労力がいるのに、上がったレベルは1です。それなら、1を50に上げることを多くしたほうが子供の自己効力感も上がるのです。」
4 その子の成長を見過ごさない
次に、勉強のやる気につながる夢や目標を持つ大切さについて話が進みます。
陰山先生は、「夢や志は高い目標ほど実現しにくいもの。それよりも、こうしたら明日もっと良くなるよねという希望のほうが小学生にとっては大切」だと言います。
坪田先生も同じように、「高い目標を持つことは悪いことではないが、高い目標を持つのならば直近目標も持ちましょう」と生徒に伝えているようです。
どんなに大きな目標も小さな成功の積み重ねの先に実現するものです。例えば、坪田塾では、「机に座る」「教科書を開く」といった当たり前なことでもできたら褒めるということを大切にしています。
個々の成長に目を向ける必要性を説く陰山先生は、「出来て当たり前だからと考えると、その子の成長に目を向けられない」と指摘しました。
5 世間が人生を変える勉強法を知らない
対談の後半は、セミナーテーマ「人生を変える勉強法」について2人の考えが話されました。
坪田先生
「それぞれの子の目標から逆算して、いまその子に何が必要なのかを適切に判断し、学習をサポートするのが先生の役割なのだと思います。」
隂山先生
「突き詰めていくと、人生を変える勉強法を世間が知らない、日本の教育界に根付いていないというこが言えます。」
従来の受験や勉強に対するイメージとは大きく異なる考えが示され、会場の参加者がハッとさせられる問題提起となりました。
講師紹介
坪田信貴(つぼた・のぶたか)
坪田塾塾長
これまでに1000人以上のを個別指導し、心理学を用いて生徒のやる気に火をつけ、偏差値を短期的が急激に上げることに定評がある。どんな学力レベルの子でも成績を圧倒的にのばすカリスマ塾講師。
陰山英男(かげやま・ひでお)
立命館大学教授、徹底反復研究会代表
全国各地で学力向上アドバイザーを務め、学校・教育委員会と連携しすべての子どもの基礎的な学力保証を目指す。30年の教師生活、3人の子育てを終えた今、学力向上の基礎となる【幸せを学習する】ことの重要性を説く。
6 編集後記
本記事では、学力向上に関して素晴らしい成果をあげている坪田先生と隂山先生の対談を扱いました。
塾や学校という一見対立に思える立場のお二方が主張していた中で、短期間集中でスピード感をもって学習すること、小さな成長を当たり前だからと見過ごさずにほめることなど、共通点の多さに驚きました。
また、日々の勉強が子どもの幸せにつながると強く信じている姿が印象的な対談でした。
対談の続きを聴ける日が楽しみです。
(編集:EDUPEDIA編集部 宮崎俊一、大和信治)
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