1年生も二重跳び②(岡篤先生)

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はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「教師の基礎技術 288号~294号1年生も二重跳び」から引用・加筆させていただいたものです。子どもたちに縄跳びを通して自己肯定感を得たり努力することを学んだりしてもらう先生の取り組みを紹介します。
岡篤先生のメルマガはこちら↓を参照ください。
http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm
関連記事↓も、是非ご参照ください。
1年生も二重跳び②(岡篤先生)

目次

1 実践内容

■学級経営の一環としての縄跳び

「そんなに縄跳びばっかりして、他の教科の時間がなくなるのでは?」「1年生に高度な技に挑戦させる必要があるのか?」という疑問をお持ちの方もおられるかもしれません。この点の私の答えは、明確です。「学級経営の一環として縄跳びを位置づけている」です。確かに縄跳びは体育だと考えると、体育の時間以外にやっている分も体育で計算すると年間ではかなりの数が超過することになります。二重跳びやハヤブサも1年生で目標にするにはレベルが高すぎるともいえます。しかし、自己肯定感を持ち、努力を積み重ねる、自主的に取り組む、といった様な面を見れば、道徳の「自分自身に関すること」や特別活動に入るとも考えられます。

■指導要領で考える 道徳

念のため、指導要領を見ておきましょう。低学年では、以下のような記述があります。主として自分自身に関すること。
(1)健康や安全に気を付け,物や金銭を大切にし,身の回りを整え,わがままを
しないで,規則正しい生活をする。
(2)自分がやらなければならない勉強や仕事は,しっかりと行う。
この部分を縄跳びを通して育てると考えるわけです。

■指導要領で考える 特別活動

特別活動は、どうでしょうか。各学年に共通することがとりあげられている部分があります。
(2) 日常の生活や学習への適応及び健康安全
ア 希望や目標をもって生きる態度の形成
イ 基本的な生活習慣の形成
ウ 望ましい人間関係の形成
中略
カ 心身ともに健康で安全な生活態度の形成
縄跳びをクラスの目標に掲げ、教え合ったり、認め合ったりして取り組む。または目標を持って進んで練習をする、といったことは上記の中に含まれるでしょう。したがって、学級経営上に位置づければ、体育以外の時間も使うことも問題はないというわけです。 
では、具体的な指導に入っていきたいと思います。まずは、縄跳びカードです。

■必要な配慮

私がクラス用に作る際には、絶対に必要な配慮があります。それは、スタートを一番苦手な子に合わせるということです。前号にも書いたように、私は縄跳びを体育だけでなく、学級経営の一環として位置づけています。であれば、苦手な子が意欲を失ったり、全く上手くならないということはあってはなりません。

■一段目の一番左

現在使っているカードは、一つの種目に対して5段階の目標を作っています。例えば、1回旋1跳躍(前跳びということにします)なら、「まえとび」と書いた右に「10,20,30,50,100」という数字があり、それを達成したら各数字の下にある枠にシールを貼っていくようになっています。この「まえとび」の10回は、何となく決めたのではありません。カードを始めた時点で、一番苦手な子が前跳びが5回連続が最高だったからです。クラスの実態によっては、ここが1回になったり、50回になったりということがありえるわけです。一週間の間に30回まで伸び、一学期の終わりには五十回跳べるようになりました。もちろん、本人の努力の成果です。それに加え、カードにシールが増えていくことの喜びもあったようです。

■四段目の一番右

一段目の一番左が苦手な子への配慮だとしたら、一番下の段の一番右は、得意な子に示す目標です。一つの種目に対して五段階の基準を数字で表していますが、実は欄外というか、シールの枠としては、少し間をあけて作ってある枠が各種目に一つずつあります。特別な目標です。前跳びなら100回が五段階の最高ですが、その横に少し間をあけて200回の枠を作っています。これは、得意な子が簡単にできすぎてしまってはおもしろくないだろうとかなり厳しい目標をあえて設定しているものです。そのため、子ども達には、「これは難しすぎるからできなくていいところ」といっています。一番下の種目は、二重跳びです。この五段目は10回、「特別な目標」は20回です。つまり、表の左上が苦手な子への配慮、右下が得意な子への目標設定ということになります。

■昨年度と今年度の違い

昨年度も今年度も二枚のカードを出しています。昨年度の一枚目の種目は、以下の四種目です。
・前跳び
・かけ足跳び
・横振り跳び
・二重跳び
かけ足跳びと横振り跳びは、縄跳び集会で行うリズム縄跳びに入っています。意外と一年生には難しいのでカードに入れてみました。今年度は、以下の四種目です。
・前跳び
・30秒跳び
・二重跳び(台あり)
・二重跳び(台無し)

■なぜ変えたか

どちらも4種目です。学校のカードは種目や基準がたくさんあります。このメリットは、これ一枚で色々な技を練習する目安になること、もし伸び悩みの時期があっても何かとりあえず目標達成を目指せる項目があること、といったことです。デメリットは、子ども自身が自分は今何をどれだけ跳ぶのが目標なのか、分からなくなってしまうということです。カードを見てから「えーと、じゃあこれに挑戦しよう」ということになります。クラスでの取り組みは、シンプルであることを頭において、4種目にしています。今年度、種目を変えたのは、二重跳びに絞ったということです。昨年度も二重跳びは入れていますが、リズム縄跳びの難しい技からの二種目(横振り跳び、かけ足跳び)と混じっていました。今年度の場合、二重跳びの可能性を充分に認識しているので、ここに目標を絞り込みました。

■二重跳びに至るまでの過程

二重跳びに絞り込んだということと、もう一つは、二重跳びができるようになる過程をカードに入れようと考えたことも、種目を変えた理由でした。何といっても前跳びが基本だと認識したことがきっかけです。100回続けるには、安定したフォームとリズムが必要です。そして、これは二重跳びの基本でもあるということが分かりました。次は、30秒跳びです。30秒間で、何回跳べるかというものです。縄を速く回す練習になるので、これも二重跳びにつながります。前跳びの延長でもあり、焦ったりリズムが安定しないと速さ以前の段階で、ひっかかる回数が増えて、70回にはなかなかいきません。二重跳びが上手な子を見ていると一つは、この縄を回す速さです。腕で回さないとか、手首を使うというのも、速く回すためでもあります。前跳び、30秒跳びの練習をしているうちに、自然にそういうフォームに近づいていきます。そして、ジャンピングボードを使った二重跳びです。

■あえてジャンピングボードのカードに

ジャンピングボードを使えば、二重跳びができやすくなり、練習になるのは分かっていました。しかし、それをあえてカードに入れることによって、子どもの意識が変わることをねらいました。ジャンピングボードでの練習が、「二重跳びができるための練習」から「シールがもらえるカードの種目」に変わるということです。「台(ジャンピングボード)でやったら、二重跳びができやすくなるよ」といっても、「シールもらえないもん」とあまり積極的にならない子もいたことから考えたことです。ジャンピングボードでの二重跳びをカードにきちんと位置づけることで、二重跳びや前跳びと同じ一つの種目として認識されるようになったわけです。当然、練習への意欲も高まり、結果的に二重跳びのレベルも上がりました。

■ジャンピングボードが効果的な理由

二重跳びができる要素は、いくつか分けることができます。一つは縄を速く回すことです。手首を使って、力を入れずに回すことができれば、速く楽に回せます。次は、しっかりしたジャンプです。1年生ではこのジャンプがうまくできない子がいます。「3回軽くとんで、4回目に思いっきり跳んでごらん」といっても、1回目でいきなり大きく跳ぼうとしたり、4回目の同じような跳び方しかできなかったりという具合です。最後に、縄回しとジャンプのタイミングです。これがつかめると多少疲れてジャンプが落ちても、続けて跳べるようになります。ジャンピングボードはこのうちの、ジャンプ補助することになります。それによって、縄を速く回したり、ジャンプのタイミングを合わせたりといったことに自然と専念できるようになるわけです。

■2種目の入れ替え

2年目の縄跳びカードの1枚目は、前跳び・30秒跳び・ボードを使っての二重跳び・二重跳びの4種目です。以前にも書いたように、前年度は横振り跳びや駆け足跳びも入れていました。毎週学校全体で取り組んでいるリズム縄跳びの中の子どもが苦手とする種目です。今回は、二重跳びにねらいを絞って、この2種目を30秒跳びとジャンピングボードを使っての二重跳び(台二重と書くことにします)に入れ替えました。

■前跳び100回の価値

前跳びの目標は、100回としました。リズムがあまり安定していない子にも微妙なところで100回という数字は一つの壁になっているような気がしました。目標が100回、得意な子のための「特別な目標が200回」、そして一番苦手の子を想定した最初の数が10回というのが数の設定です。これは、2年とも同じでした。ただ、今見直していて気づいたのですが、100回までを5段階に区切る数字が多少違いました。
1年目 10・20・50・80・100
2年目 10・20・30・50・100

■苦手な子への配慮

この違いはふつうにできる子にはほとんど意味がありません。少しがんばればすぐに100回はいきます。その間が30であろうが、80であろうが、一気にすぎてしまうでしょう。しかし、苦手な子にとってはどうでしょうか。1年目の数だと、20から50と、50から80、が同じ30回になっています。おそらく苦手な子のかなりの割合が、20から50までも難しいはずです。そこで、2年目に30回を入れたのだと思います。1年目の苦手な子の様子を見て、そして2年目にも苦手な子がいるという事実をふまえるとそういうことになったのでしょう。2年目の課題の一つとしては、得意な子を伸ばすことがあります。二重跳びの数をもっとたくさん跳べる子が出てきて欲しいと思いました。二つ目は、苦手な子への指導です。少ない人数ですから何とか全員1回は跳ばせてやりたいと思いました。意図的に取り組んでみると、得意な子をさらに伸ばすことより、苦手な子を1回跳べるようにすることの方がはるかに難しい指導だと再認識しました。 

2 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
 1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。(2017年12月5日時点のものです)

3 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

4 編集後記 

当記事では、目標回数の設定が工夫された縄跳びカードを作成することによって縄跳びが苦手な子も得意な子も練習に積極的に取り組むことができるようになる実践を紹介しました。子どもたちが自己肯定感を高めたり、努力することを学んだりする上で少しだけ高い目標を持たせ、それを可視化することは非常に大事なことです。その点で縄跳びカードを使った実践は体育の他に学級経営においてもとても重要な役割を果たすでしょう。

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 中丸 和)

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