いのちと性のダイバーシティ

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目次

1 はじめに

本記事は、2018年2月8日(木)に板倉中学校で行われた群馬医療福祉大学の齋藤敦子先生による講義「いのちと性のダイバーシティ」を取材し、記事化したものです。

2 性のダイバーシティとは何か?

LGBTsQ という言葉をご存知でしょうか。これは、一般的に性的少数者を指す言葉です。齋藤先生は講義の中で、普通とは何か?と生徒に問いかけ、「みなさんは少数者をみて“普通とは違うよね”と言っていませんか?」と重ねて問うていました。また、現在統計上でも、LGBTsQの人は少なくても人口の約8%と言われ、少数者とも言えなくなっているのではないでしょうか。「身のまわりに数人存在するのが当たり前の人々なのではないですか?」と言うと生徒たちは驚いたような表情を浮かべていました。

L(レズピアン、Lesbian)、G(ゲイ、Gay)は同性愛者、Bは両性愛者(バイセクシュアル、)、T(トランスジェンダー、Transgender)は生物学的な性と性自認が一致しない人、s(サムシング、something)は、以上の分類の他にもセクシュアリティの種類があること、Q(クエスチョン、question)は定まっていない人を指すと言われます。

セクシュアリティとは「性のあり方」を示していて、その主な構成要素は

  • 生物学的な性(生殖に関する特徴)
  • 社会的性役割(ジェンダーアイデンティティ)
  • 性的自己同一性(セクシャルアイデンティティ)
  • 性自認(自分の性をどのように認識しているか)
  • 性的指向(どの性の人間を恋愛や性愛の対象とするか)

などで説明されます。

しかし、齋藤先生によれば、性・セクシャリティとは、性別や上記にあげた意味の他にも、その人が持ついのちそのものや生き方、自分がどのように生き、どのような人を好きになり、触れ合い、共に生きるパートナーとして愛し愛されるかという自らへの冒険であり、哲学でもあり、ギフトでもあるということです。そのため、性・セクシャリティというのは地球上の約70億人全員が個別に持ち、約70億通りの性のダイバーシティ(多様性)があるということになるそうです。

3 講義内容

性とは人が本来備えている「いのちのあり方」のことである。

「性」と聞くと、ジェンダーや性的少数者のことを思い浮かべてしまいがちですが、実際はそれだけではありません。性には私たちが思っている以上に意味様々な意味を持っており、性別やジェンダーはもちろんですが、その人の「生まれつき」「たち」といったような、「性質」という意味も持っています。

現在「性」に関して、LGBTsQと呼ばれる少数派の人々が差別にあっています。

それは、少数の人を多数派の自分たちとは違って普通ではない!と言っているにすぎません。実は13人に1人はLGBTsQであり、クラスに2.3人はいるのが当たり前なのです。誰もが持っている「いのちのあり方」、すなわち「特徴」と考えればそれに良し悪しはありません。足が速いことも、頭がいいことも、性的多数者でないということも、どれも特徴の一つです。少数であること、多数派でないことは、差別する理由にはならないのです。嗜好、文化、意見、自分のあり方など、多数派であっても、少数派であっても、それは全て認められて当然です。

自分の「特徴」を見つけて、認め合う

一方で、自分の素晴らしさが見つけられなくて自分の価値について悩む場合があります。しかし、優れているところ、才能がない人はいません。ないと思っている場合はまだ見つけられていないだけです。今回の講義では、アクティブラーニングを用いてまだ見つけられていない自分の長所を探しました。

相手を認め合うワーク

  1. 7、8人で班を作る
  2. 画用紙に自分の像を書く
  3. 班員それぞれについて長所を探し、紙に書いて渡し合う

齋藤先生のお話

  • 世界でも日本でも、性に関する差別はまだ残っています。中学生のうちからその現状を知り、問題意識を持つことで子ども達にこれからの、差別のない社会を創造していって欲しいです。
  • 自分の性について悩みを持つ子どもたちに、学校でもオープンに語り合える、という安心と未来への希望を持ってもらえたら嬉しいです。

現場の先生のお話

  • LGBTの授業が義務化されましたが、教科書に載っていることではないので学校の先生が教えるのは難しいです。これを外部の専門家の先生に教えていただけたのは良かったと思います。
  • 子ども達は話を真剣に聞いていました。「性教育」と聞いてイメージされる内容だけでなく、もっと幅広い「ダイバーシティ」とそれを「認め合う」、という内容が、子ども達に響いたのだと思います。
  • 自分の性について考えるきっかけになった子もいると思います。多様な性のかたちを教えるだけでなく、それを認めることを一緒に教えてもらえて良かったです。
  • アクティブラーニングでは、普段は輪に入れない子や、何気なく相手を傷つける言葉を使ってしまう子もみんながお互いのいいところを書き合うことができました。ワークに取り組む子ども達の目はみんなキラキラしていました。

4 実践者プロフィール

齋藤敦子(さいとう あつこ)

群馬医療福祉大学准教授、横浜創英大学国際看護論講師、心理・性カウンセラー、バングラデシュ国立医学総合大学客員講師(2018年2月8日時点のものです)

5 編集後記

性的少数者を公言されている方に出会ったことのないまま今まで生きてきて、会ったこともない人に対して「差別してはいけない」と言う意識だけが先行していました。この講義を受けて、認めるということは驚かないことや批判しないことなどではなく、他の特徴や長所と同じように性を相手の一部として受け入れることなのだと知りました。学校教育でそのことを専門家の方に教えていただける機会は貴重なものであり、このような授業が全国で行われれば、性的少数者に対するにおける社会の意識は変わっていくのだろうと思いました。
( 編集・文責 EDUPEDIA編集部 上山結生 )

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