教育の原点は「公教育」〜フェロー経験を通して感じたこと〜(Teach for Japan)

1 はじめに

Teach For Japanとは、すべての子どもがその子にとって素晴らしい教育を受けられる社会の実現を目指しているNPO法人です。多様な経験を持ち、教育への情熱を兼ね備えたフェロー(教師)を公立学校へ送る「フェローシップ・プログラム」を展開しています。こちらの記事はフェローの方の体験談をまとめたものです。この記事は、コラボ記事になっておりますので、こちらもご参照下さい(http://teachforjapan.org/)
また、こちらの記事の一部はWEBやフライヤーに掲載されたものを編集したものです。

2 フェローの紹介

第2期フェロー 木村彰宏さん

1990年、京都府亀岡市生まれ。大学卒業後、岩手県にて復興支援NPOに就職し、岩手県沿岸の子どもたちの学習・居場所づくり支援を行う。その後、2014年4月からNPO法人 Teach For Japan の第2期フェローとして奈良県内の公立学校に教員として赴任。フェロー任期中、心の知性「EQ」育成を主な狙いとしたSocial Emotional Learning をアメリカで学ぶ。2016年3月末のフェロー任期終了を受け、現在は東京にて株式会社LITALICOに勤務。

3 フェローになったきっかけ

もともと両親が教師をしていたこともあり、教育関係の仕事に興味は持っていました。しかしそのイメージはポジティブなものばかりではありません。日々のクラブ活動や学級運営のため、毎日のように学校へ行っていた父は、あまり自分のことを見てくれていないような気がしていました。

反発心を抱くことさえあったそんなとき、自分の人生を変えるようなある事実に気がつきます。自分が困難に当たった時、支えになったのは自分に本気で向き合ってくれる大人だ、ということです。たったひとりでも向き合ってくれる大人の存在が、子どもにとってどれほど重要であるか、自ら実感しました。

それ以降、子供たちのために必死に働く父親を誇りに思えるようになりました。そして自分も、周りの大人から受けた恩恵を次の世代につなげていくため、教育に携わろうと考えました。

そうして大学時代から教育に携わる様々な活動を行い、卒業後は1年間、東日本大震災の復興支援を行うNPO法人で働いていました。そこでは震災の影響で精神的に傷ついた子に、居場所を提供したり、勉強を教えたりしていました。

しかし私は活動のかたわら、「本当に支援を必要としている子はもっと見えないところにいるのではないか」という思いを抱きます。なぜなら、学習支援の場所に来ている子たちは、周りに気にかけてくれる大人がいるからです。本当に支援を必要としている子は、自分を気にかけてくれる大人に出会えず、学習支援の機会も得られていないと考えました。

本当に支援を必要としている子に直接アプローチできる機会として公立の小学校教師、特に困難な課題を抱えた地域で勤務できるということでTeach for Japanのフェローに応募しました。通常の教職過程では受けられないような、赴任前研修や個別的なサポートが受けられるというのも魅力的でした。

4 フェローとして取り組んだこと

実際に勤務をはじめると、日々子供たちの小さな成長に立ち会うことができ、喜びを感じました。もちろんその裏には様々な苦労もあり、例えば私は若かったこともあるので、保護者の方の信頼獲得には苦心しました。毎日学級通信を発行したり、家庭訪問を行ったりすることで徐々に信頼を得ることができ、何か取り組みを始める際にはスムーズに進めることができました。

取り組みの一つが、「100人のおとな」というプロジェクトです。これは社会の様々なフィールドで活躍しているおとなが、自分の仕事について語るビデオを子供たちに見せるというものです。これまで出会わなかった大人の存在や世界を知り、自分の可能性や勉強する意義を見出してもらいたいとの意図がありました。結果として子供たちの勉強に対する意欲も上げることができ、良い取り組みができたと考えています。

5 活動を通じて感じたこと

フェロー期間を通じて分かったのは、子供に一番影響を与えるのが公教育である、ということです。塾や支援所など様々な外部施設がありますが、誰にでもチャンスが開かれているのはやはり公立の学校です。教師は、自分が望めば、子どものために本当に多くのことをしてあげることができます。

6 活動を終えて

現在は自分の経験を広げるため、教育系の事業を展開する民間企業に勤務しています。公教育の重要性を痛感したのになぜ現場を離れたのか?と思われるかもしれませんが、そこには理由があります。 それはもう一度、外から俯瞰して学校現場を見たいと思ったからです。学校現場では複雑な問題が絡み合って存在しており、日々多くの問題に追われる中で、見落としてしまった問題もありました。

現在の勤務先で療育(障害を持つ子どもが社会的に自立することを目的として行われる医療と教育)に携わる中で、現場教師や保護者の苦労を知っていることで、より良い対応ができているとも感じています。

7 フェローを志す方へ

フェローに必要なのは「主体性」「子供への愛情」です。教師は子供の貴重な人生の一部を預かる、責任の大きな仕事です。それを遂行するためには、研修など与えられたものだけでなく自主的に学んでいく姿勢が必要ですし、困難に当たったときもモチベーションを維持し続けられるような動機の源泉も必要です。それが「主体性」「子供への愛情」に帰結すると思っています。

8 編集後記

フェローとして2年間、学校現場に向き合って活動することは、自分の成長はもちろん、これまで見えてこないかった学校教育の課題が発見できるチャンスだと思いました。これも読んでくださった方が「フェローシップ・プログラム」について興味を持っていただけたら幸いです。

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