「故郷」(魯迅、竹内好 訳)中学・国語の授業案~人間関係の変化を時代や社会と関連づけて考える~

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目次

1 はじめに

本記事は、光村図書・中学3年『故郷』(魯迅、竹内好 訳)の授業案です。
単元前半は、人物や関係の変化に焦点を当てて読解。
後半は、作品のテーマである「希望・道」や「身分・貧富」について、時代や社会の状況と関連させて考えます。
 参考資料も載せましたので、学習や授業の参考になれば幸いです。

2 単元前半:読解(変化を読み取る)

・あらすじをつかむ

鲁迅《故乡》动漫朗读(节选自《美文共赏》-YouTube

(字幕は中国語のみ)

故郷(魯迅) | 10min.ボックス 現代文 | NHK for School

作品のポイントが10分間の映像でで分かりやすくまとめられています。

・場面分け

  • 約20年ぶりの故郷_はじめ~P107L3
  • 母・ホルンとの対面_P107L3~L20
  • ルントウとの思い出(回想)_P108L1~P111L11
  • ヤンおばさんとの再開_P111L12~P113L18
  • ルントウとの再開_P113L19~P117L7
  • 別れ、旅立ち_P117L8~おわり

・風景や人物の変化を考える

(教科書p121を参考。①-2,3と②-2は追加課題)

  • ① 次の風景や人物について、回想の場面と現在の場面では、描写がどのように変化しているだろうか。それがわかる部分を抜き出そう。

・故郷の眺め

・我が家の様子

・ルントウ

・ヤンおばさん

  • ①-2 上の風景や人物以外に、変化したものを考えてみよう。
  • ①-3 作品の中で、変化していないものを考えてみよう。
  • ②「私」と「ルントウ」の関係はどのように変わったのだろうか。また、なぜ変わったのだろうか。
  • ②-2 二人の関係を図や絵でまとめてみよう。

(読解の例)

① 次の風景や人物について、回想の場面と現在の場面では、描写がどのように変化しているだろうか。それがわかる部分を抜き出そう。

・故郷の眺め

私の覚えている故郷は、まるでこんなふうではなかった。私の故郷は、もっとずっとよかった。P106L7
  ↓

わびしい村々が、いささかの活気もなく、あちこちに横たわっていた。P106L3

・我が家の様子

父もまだ生きていたし、家の暮らし向きも楽で、私は坊っちゃんでいられた。P108L7
  ↓

屋根には一面に枯れ草のやれ茎が、ー(中略)ーひっそり閑としている。P107L4~7

・ルントウ

艶のいい丸顔で、小さなー(中略)ー私にだけは平気で、そばに誰もいないとよく口をきいた。半日もせずに、私たちは仲良くなった。P109L3

ルントウの心は神秘の宝庫で、私の遊び仲間とは大違いだった。P111L5
  ↓

背丈は倍ほどになり、昔の艶のいい丸顔は、今では黄ばんだ色に変わり、ー(中略)ーしかもひび割れた、松の幹のような手である。p114L2~8

子だくさん、凶作、重い税金、兵隊、匪賊、役人、地主、みんな寄ってたかって彼をいじめて、でくのぼうみたいな人間にしてしまったのだ。P116L19

・ヤンおばさん

そういえば子供の頃、筋向かいの豆腐屋に、ヤンおばさんという人が一日中座っていて、−(中略)−こんなコンパスのような姿勢は、見ようにも見られなかった。P112L15~18
  ↓

頬骨の出た、唇の薄い、ー(中略)ーまるで製図用の脚の細いコンパスそっくりだった。P112L7~9

①-2 上の風景や人物以外に、変化したものを考えてみよう。

・私

ルントウが海辺にいるとき、彼らは私と同様、高い塀に囲まれた中庭から四角な空を眺めているだけなのだ。
  ↓

知事様、お金持ち

・別れの場面のわたしとルントウ

別れがつらくて、私は声を上げて泣いた。ルントウも台所の隅に隠れて、嫌がって泣いていたが、とうとう父に連れてゆかれた。P111L8
  ↓

古い家はますます遠くなり、故郷の山や水もますます遠くなる。だが名残惜しい気はしない。P118L10

・「私」への眼差し

ルントウ→私

兄弟のような仲
  ↓

「旦那様!……。」

ヤンおばさん→私


「忘れたのかい。なにしろ身分のあるお方は目が上を向いているからね……。」P113L4

①-3 作品の中で、変化していないものを考えてみよう。

海空の情景

−−紺碧の空に、金色の丸い月が懸かっている。その下は海辺の砂地で、見渡すかぎり緑のすいかが植わっている。P108L1
  ↓

まどろみかけた私の目に、海辺の広い緑の砂地が浮かんでくる。その上の紺碧の空には、金色の丸い月が懸かっている。P119L13
「美しい故郷」=ルントウとの思い出は、「私」の心の中で変わらないもの

②「私」と「ルントウ」の関係はどのように変わったのだろうか。また、なぜ変わったのだろうか。

なぜ?

  • 時代が変わったから(約20年)
  • ルントウの生活が大変になったから(お金、子育て)
  • 本音で話せなくなったから
  • 田舎と都会、身分の違いによる考え方の違い→厚い壁

②-2 二人の関係を図や絵でまとめてみよう。

3 単元後半:時代や社会の状況と作品を関連付ける

本文内キーワード例

  • 引っ越し、家
  • 旦那様
  • 悲しむべき厚い壁
  • 相変わらずの偶像崇拝
  • 新しい生活、希望

時代のキーワード例

  • 封建思想と近代西洋哲学
  • 「新青年」
  • 辛亥革命
  • 五四運動

4 参考資料(見出しからリンク先へ)

◎魯迅と文学

魯迅が語った「道」と高村光太郎の「道程」 – 独立記者の挑戦 中国でメディアを語る

魯迅が語る「道」には、大きな民族が想起されている。同時期(1914年)に『道程』を発表した高村光太郎の「道」との比較。

【 日本で愛されるのはなぜ? 】中国の偉大な文学者・魯迅 | 歴人マガジン

医学から文芸の道を志したきっかけや藤野先生との出会い、他の作品も紹介されています。

魯迅と心の革命: ラクーンのブログ

海外から自国を眺め、自分の思想を文学の形で発表した夏目漱石と魯迅。
「しかし、夏目漱石は内省的な分析家だとすると、魯迅は強靭な精神を持った行動的な革命家のように思え、まったく似ていない。」(記事本文より)

魯迅がみた日本人と中国人。彼が本当に批判したかったものは何か。ニーチェの超人思想との関係。

故郷-魯 迅 (竹内好 訳)_沪江日语学习网

本文:日本語

Lu Xun Home Page

本文:中国語

◎世界史との関連

辛亥革命:映画「1911 Revolution」

「タペストリー授業実践例」清末・民国初期の中国─魯迅「故郷」の世界史教材化のための覚書─群馬県立桐生高等学校 安達 淳

◎魯迅 その他の作品

狂人日記 魯迅 | 明かりの本

「明かりの本」は、装画つきの縦書き表示で名作をまるごと読める読書室です。宮沢賢治、夏目漱石、高村光太郎をはじめ、あまたの本を無料公開しています。

故郷/阿Q正伝 (光文社古典新訳文庫) |藤井省三 訳

藤野先生(福井県観光連盟)

5 関連授業案

「スーホの白い馬」国語・物語文・授業案~人物の思いを想像して読む~

小学2年、物語文「スーホの白い馬」の授業案です。
スーホや白馬の気持ちが読み取れる叙述が多いという教材の特徴に合わせた、場面ごとにスーホと白馬の思いを想像することを中心にした授業案です。
作品全体を通して、スーホと白馬の変わらない関係を考えます。

「なまえつけてよ」国語・物語文~人物関係の変化を考える~

小学5年、物語文「なまえつけてよ」の授業案です。
下の視点で、登場する2人の関係の変化を考えます。「故郷」の読解にも繋がる視点かと思います。

・一番変わったのは何か?
・どのように変わった?
・いつ変わった?
・なぜ変わった?

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