1 はじめに
この記事は、シリーズ【教育に関わる仕事の生の声、集めました】の一環として、LITALICOジュニアで児童発達支援員として働く髙橋美咲(たかはしみさき)さんの仕事内容について2018年12月29日にインタビューしてまとめたものです。
◯ シリーズ【教育に関わる仕事の生の声、集めました】とは ◯
教育に関わる仕事はしたい、でもどんな風に考えて決めたらいいかわからない。そんな学生の方に向けて、教育に関わる仕事をしている社会人の方々にお仕事の内容について実際にお聞きしてその内容をまとめたのが、シリーズ【教育に関わる仕事の生の声、集めました】です。
教育に関わる仕事に携わっている方々が、その仕事にどんな風に取り組み、そしてどんな思いを持っているのか、その仕事の魅力や大変なところはいったい何なのか。そういった仕事に関する深い内容にまで踏み込み、その仕事に関わる人のリアルな声をお届けします。
この記事を読んだ学生の皆さんが、その仕事を身近に感じ、進路選択の参考になれば幸いです。
2 LITALICOジュニアでの仕事内容
発達障害と診断されたもしくは疑いのあるお子さん一人ひとりの困難に向き合い、支援します。指導は学習から集団活動、ソーシャルスキルなど個々に合わせて行います。
LITALICOジュニアとは?
株式会社LITALICOの中のサービスの1つ。詳しくはをこちらご覧ください。
指導の様子
個別指導(1~5人)と集団指導(10人程度)の両方があります。指導内容はお子さんに応じて様々なケースがあります。
例えば、言葉での要求より先に手が伸びやすいお子さんは、言葉で要求する前におもちゃを取ってしまうという行動が出てしまうことがあるので、「貸して」と言えるようにすることや、アイコンタクトをとる、呼びかけに応じる、ということをマンツーマンで指導しながら練習していきます。
お子さんのニーズに合わせて、指導方法は大きく変わります。一見机上学習のようなものでも、おもちゃを使ってやり取りの練習をしたり、ものづくりすることで自分の考えをつたえるなどの指導方法もあります。
3 LITALICOジュニア職員の1日
平日のスケジュールの一例を紹介します。
出勤は9:30で、午前中に授業が1コマあります。授業1コマあたり60分で、45分間の授業、その後15分間親御さんとお話する時間となっています。午後の授業は2コマあります。18:00の終礼後には報告書の作成などを行い、定時は18:30で必要に応じて残業しています。
指導以外にも、指導計画書の作成や、必要に応じて幼稚園・学校などに訪問し普段の様子を見に行ったり、親御さんとお話したりすることもあります。1日に3コマないときもあるので、空きコマに書類作成や訪問などを行います。このようにして、お子さんの周辺に関わる人たちにもアプローチしています。
仕事がある日は固定ではなく、シフト制です。だいたい週の5日間働き、2日間はお休みがあります。
4 この仕事を選んだ理由
LITALICOを選んだ理由
美術大学に通っていて、絵を描くことや、ものづくりが好きでした。はじめは美術の先生になろうと思っていましたが、何も社会を知らない状態でいきなり「学校」という狭い箱の中に入るのは苦しいかなと思っていました。
大学時代に学童保育やa.school(a.schoolの詳細はこちら)、公立中の特別支援学級の補助などのアルバイトをした経験から自分のやりたいことを考えた時に、「大人数に一斉に指導する」というよりは、「目の前の子どもに何か支援をしたい」という想いがありました。LITALICOを知り、そこで自分の想いを実現できると思い働くことを決めました。
「発達障害支援」を選んだ理由
私は勉強が苦手意識をもっていましたし、学力を伸ばすことは他の人でも十分できるので、学習支援をしたいわけではありませんでした。
自分の今持っている技術や培ってきたものを活かすには「学力」ではなくて「ソーシャルスキル」を伸ばすことだと思いました。私自身、もし子どものころに集団のルールや友達との接し方などを学べていたら何か変わっていたかもしれないなと感じることも度々あるので、LITALICOのような指導を受けてみたかったという想いもあります。
5 魅力・大変さ
実際に自分の予想以上に、お子さんが「がんばった」「できた」と思えたとき、そして親御さんにその姿を見せられたという機会を作ることができたときは非常にやりがいを感じます。お子さんと親御さんをつなげられた時に、この仕事をやっていてよかったと感じます。
一方で大変な面は「責任の重さ」です。私たちの助言が家庭や進学に影響することも少なくはありません。あくまでも私たちは選択肢やお子さんの状況などの情報を提供することしかできません。最後に選択するのは親御さんやお子さんなので、正解を出さずにどこまで補助するかが難しいと思います。
6 職場の雰囲気
人間関係については、基本的に上下関係があまりないので、年数が長くても対等に接してくれます。いい意味で認め合い、フィードバックしあえる関係ですね。
また、キャリアも様々です。新卒は教育や心理を学んできた人が多いですが、中途採用で入ってきた方の中には元スイミングスクールのコーチや、以前飲食店で働いていた人などがいます。
仕事のモチベーションは各々違いますが、みんなが「お子さんを支援したい」「親御さんに幸せをつなげたい」という想いをもって同じ目標に向かっているところがおもしろいと感じます。
7 これからのキャリアについて
ファーストキャリアとしてはLITALICOを選びましたが、いつかは学校現場に入りたいと思っています。やっぱり今でも美術は好きなので、「お子さんの作品をもっとみたいな」「自分も絵を描きたいな」という想いが強くなった時には、その想いがより実現しやすい学校現場に行ってみたいです。
8 大学生へメッセージ
漠然と教育に携わりたいという気持ちはもちろん大事だと思います。そこから学生生活や就活を通して、「どのくらいの規模の」「どんな人に」「どのような方法で」関わりたいかという軸を持っておくことで、やりたい職業や描きたいキャリアは絞られてくると思います。
視野を広げつつ、自分が何のために働いてどうなりたいのかを考えられると、一つひとつが大事に感じると思いますよ。
9 インタビュイー紹介
髙橋 美咲 (たかはし みさき)
児童発達支援員、LITALICOジュニア事業部
多摩美術大学油画科卒業 中高美術教員免許取得
大学時代はNPO法人ROJEつぼみプロジェクトに所属
(2018年12月29日時点のものです)
10 編集後記
自分のやりたいことをかなえるには、今どの手段が一番いいのかということにとことん向き合い、こだわって考えてきた高橋さんの姿はとても生き生きしているように感じました。人生において仕事は1つだけではなく、複数のうちのファーストキャリアという選択肢もあるという考えに大きな刺激を受けました。今回の取材は、自分自身のキャリア観が大きく変わる機会になりました。そのようなすばらしい機会をいただいたことに感謝いたします。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 勘田真由、村嶋章紀)
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