本単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、消防署の働きについて、人々の生活との関連を踏まえて理解するとともに、調査活動、具体的な資料を通して、必要な情報を調べまとめる技能を身につけるようにする。また、消防署など関係機関の相互の関連や、人々の生活との関連、そこに従事する人々の働きについて考え、考えたことを表現する力を養う。消防署の働きについて、主体的に学習の問題を解決しようとする態度や、よりよい社会を考え学習したことを社会生活に生かそうとする態度を養う。
単元の評価規準
知識・技能
消防署の見学・消火栓や火災報知器など調査したり地図などの資料で調べたりして、必要な情報を集め、読み取り、消防署や地域の人々の諸活動を理解している。また、消防署を中心とする関係機関が、地域の人々と協力して火事などの防止に努めていることを理解している。
思考・判断・表現
消防署に関する資料から問いを見いだし、関係機関や地域の人々の諸活動について考え表現している。また、学習したことをもとに社会への関わり方を選択・判断して、適切に表現している。
主体的に学習に取り組む態度
消防署を中心とした安全を守る働きについて、予想や学習計画を立てたり、見直したりして、主体的に学習問題を追究し、解決しようとしている。また、地域や自分自身の安全を守るために自分たちにできることを考えようとしている。
単元の展開【1~9時】
1時(第1次) 火事が起きたら
・「火事が起きたらどうなる」「火事が起きたらどうする」と問いかけ、これから調べる教材への興味を高める。火事が起きた時に活用できると予想されるもの(例、消火栓・避難口・消火器・防火シャッターなど)がある場所を実際に確認するため、校内を巡回する。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
2時(第2次) 学習問題をつくり、学習の見通しを立てる
・前時で気づいたことを班で共有する。
・火事に関係する写真(例、火災現場の写真・消火している様子・消防自動車など)を見て感じたことや考えたことから学習問題をつくる。
・単元の学習問題(例、「消防署はどのようにして火事から学校やまちを守っているのだろう?」と問いかけ、予想をする。
・消防署見学に行って確かめるという意欲を高め、社会科見学の計画を立てる。
3・4時(第3・4次) 消防署をたずねる
・消防署を見学して、分かったこと・消防署ではたらく人の説明をメモする。
・消防署見学を終えての感想を書く。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
・事前に消防署側と打ち合わせをし、今後の学習計画につながるような話をしていただくようにお願いをしておく。(例:通信指令室・消防署の一日・消防服・消防自動車・迅速な出動の工夫など)
5時(第5次) 消防署とさまざまな人のはたらき
・119番の電話による通報は、どこにつながるのか調べる。
・通信指令室はどのような関係機関と連携するのか調べる。
・個人で通信指令室の役割について考える。
・個人で考えたことを、班で共有する。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
6時(第6次) 消防署の一日
・個人で「出動がない時の、消防署の仕事」を予想する。
・消防署の仕事の時間割や1日の仕事を調べる。
・個人で「消防署の仕事の工夫」を考える。
・個人で考えたことを、班で共有する。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
7時(第7次) 地域の人々の協力
・班で地域の消防施設を調べて、それらの場所を白地図に書き込む。
・個人で「消防団などの人々の取り組み」について調べる。
・個人で調べたことを、班で共有する。
・班で「火事の発生を予防するための取り組み」について話し合う。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
8時(第8次) まとめる
・個人で学習問題について考える。(振り返りシート)
・班で学習問題に対する自分の考えを発表する。
・クラス全体に発表する。
9時(第9次) つなげる
・班で「火事から自分の身の安全や地域の安全を守るためにできること」を話し合う。
・個人で「火事から自分の身の安全や地域の安全を守るためにできることで、自分が最も大切と考えること」を考え、班で発表し合う。
・友達の発表を聞いて、相互に評価し合う。
振り返りのあり方について
一般的な社会科単元の学習は「つかむ→調べる→まとめる」で構成されています。その構成を先生はもちろん、子どもも意識していないといけません。子どもが「つかむ→調べる→まとめる」を意識することで学びの目的を明確化し、単元を通した学びの深まりを実感していくのです。では、子どもが「つかむ→調べる→まとめる」を意識するためにどうすればいいのか。単純に、社会科の学習は「つかむ→調べる→まとめるだよ」と伝えるのではありません。一時間毎に何を学んだのか明確に提示し(学びの目的を明確化)、何を学んだのか振り返ること(学びの深まり)をしないと「つかむ→調べる→まとめる」を意識することはないでしょう。また、意識しなくても自然と「つかむ→調べる→まとめる」ができる単元や授業の流れをつくることができるといいです。つまり、一時間毎に学習課題とそれに対する振り返りを行い、学びを積み上げていく必要があります。正直、「理屈は分かるけど、現実的ではない」「時間がとれない」などと思う先生もいるでしょう。私も最初はそうでした。そこで今回は、私が実際に使っていた1枚の振り返りシート(裏表)を紹介します。
(表)
私が単元で毎時間使っていた「社会科単元のウェビングマップ(振り返りシートのこと)」です。活用する際の概要を説明します。
①第一時(場合によっては、第二時)の学習から中央の単元の学習問題を設定し、記入します。
②6つの枠は、一時間毎の学習課題を記入し、一時間の終末に学習課題に対する自分の考えを記入します。これが、一時間毎の振り返りになります。下に、3つの楕円枠がありますが、一時間の授業で自分が思った大切な言葉(キーワード)を記入します。キーワードは3つまで書くことができるとしています。1つでも2つでも構いません。4つになると多すぎると思います。
③単元によって枠は6つもいらなかったり、少なかったりします。使わなかったり、付け足しをしたりします。大事なのは、「学習問題を解くために、一時間毎の振り返りをしている」ということを子どもが意識しているかです。これなら、単元で学んだことが一目で分かります。
裏に続きます。
(裏)
④表で書いた振り返りをもとに、いよいよ学習問題を解決していきます。「単元の学習問題について、キーワードを3つ使って、自分の考えを150字以上200字以下でまとめましょう。」と示します。ここで、思考・判断・表現の評価をします。
⑤最後に、「この単元を終えての感想を教えて下さい。」と示します。ここで、主体的・自分から学びに向かう姿勢の評価をします。もちろん、思考・判断・表現・主体的・自主的に学びに向かう姿勢の評価はここだけですることではありません。しかし、どこかで子どもの書いた振り返りやレポートなどの評価やフィードバックは必要不可欠です。意欲はもちろん、客観的に評価できるものであり、次の学びにつながったり、学びを深めたりすることができます。
以上、私が使っていた「社会科単元ウェビングマップ(振り返りシートのこと)」の概要を説明しました。参考までに載せましたが、先生のやりやすいよう変えてもいいですし、子どもの実態に合わせて変えてもいいです。大事なのは、「学習問題を解くために、一時間毎の振り返りをしている」ということを子どもが意識しているかです。
[参考出典]
・教育出版「令和6年度版『小学社会3』年間指導計画・評価計画」
執筆者プロフィール
nanalalala
元小中学校教員。「思考を深める」(アクティブラーニング・思考回路図の活用など)、「安心して学ぶことができる」(ユニバーサルデザインを意識した授業計画・環境整備など)、「SST」「理解教育・インクルーシブ教育」などを意識し、教育活動・学習活動などに取り組んできた。現在は自身の経験を伝えるWebライターとして活動中。
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