本単元で身に着けたい資質・能力
本単元では、1位数(1桁の数)同士の加法について、和が10より大きい数になる加法を「10とあといくつ」という数の見方を活用して計算できる能力を養う。また、数量の関係に着目し、計算の意味や計算の仕方を考えるとともに、それらを日常生活に生かそうとする態度を育む。
単元の評価基準
- 知識・技能:1位数同士の加法の計算が確実にできる。
- 思考・判断・表現:数量の関係に着目し、計算の意味や計算の仕方を考えることができる。
- 主体的に取り組む態度:さくらんぼ図をかいて、積極的に10のまとまりを作ろうとする。
本実践の意図
本実践では、数図ブロックを用いた具体的操作から(さくらんぼ図を含む)式での計算を用いた念頭操作へ移行を極力なだらかにすることを目的とする。つまり、「数図ブロックを使って計算をしていたら、いつの間にか繰り上がりの足し算ができていた」という状況を理想とする。
そもそも繰り上がりが難しい理由としては以下の2点があげられる。
- 減法(ひきざん)、交換法則、結合法則を同時に用いているから
例:交換法則 2+3=3+2 、結合法則 3+(4+5)=(3+4)+5 - 補数(与えられた数に足したら10になる数)を探すことに慣れていないから
前提として教員は、「繰り上がりの計算」が大変難しい計算だと認識すべきである。いままで1つ1つの計算を丁寧に行ってきた児童にとって、3つのことを同時に行うこの計算はとても大きな壁である。だからといって一つ一つを丁寧に取り上げてしまうと、話が長くなり余計難しく感じてしまう。複雑な計算だからこそ、教員が話す時間は極力短くしていく必要がある。
また、5より小さい数の補数を見つけることに苦戦する児童も多い。児童は与えられた数と10との距離を数えて補数を探している。8であれば「2つ」数えれば済むが、3であれば「7つ」数えなければならず、補数を探すのに時間がかかってしまう。その分、数え間違いも増える。では、我々はどのように計算しているのだろうか。
例えば3+9を計算するとき、以下どちらで計算しているだろうか。
① 3+9=3+(7+2)=(3+7)+2=10+2=12
② 3+9=(2+1)+9=2+(1+9)=2+10=12
きっと、②で計算をする人が多いだろう。そもそも5より小さい数の補数は考える必要がないのである。児童にも「より繰り上がりのしやすい数」に注目をさせることで、簡単に補数を見つけられるように支援する必要がある。
最後に授業は以下の流れで行うこととする。
- 10のまとまりを作る練習
- 答えの数値化(タイルを2位数で表す)
- 数図ブロック操作と計算式の紐づけ
- 数図ブロックのない状態での計算練習
ICTドリルの活用
本実践では画像付き簡易計算ドリル(以下、「めくりドリル」と呼ぶ)を活用する。めくりドリルとは、問題カード⇒答えカード⇒問題カード⇒……(以下繰り返し)となるように並べたICT上の計算ドリルのことである。必要に応じて、問題カードと答えカードの間に解説カードをはさむことで、児童それぞれの実力に合わせたドリル演習を行うことができる。
授業実践
1. 10のまとまりを作る練習
「はこづめ きょうそう! ①」等と名前を付け、ゲームを始める。下の画像のような問題を複数まとめ、めくりドリルを作成し、児童のタブレットに共有する。児童は左右どちらかのたこ焼きを、必要個数分もう片側に移動させて10のまとまりを作る。どちらにいくつあげるのが最適かを考えさせ、制限時間内に何枚の問題を正確に答えることができたのかを競う。
これにより補数を理解させるのと同時に、より繰り上がりのしやすい数に自然と目が向けられるようになる。
慣れてきたら、「はこづめ きょうそう! ②」にバージョンアップする。②は、たこ焼きの画像(数図ブロック)を与えず、数字のみでどちらにいくつあげるのかを答えさせる。これにより具体操作から念頭操作への切り替え練習ができる。このとき、決して和には触れず、補数を見つけて片方の数をさくらんぼ図に分ける練習に集中させる。「できた!」という感覚を持たせ、褒め続けていきたい。
2. 答えの数値化
「はこづめ きょうそう! ③」にバージョンアップする。
たこ焼きを移動させるだけでなく、最後に何個になったのかまで答えさせる。
ここでようやく足し算について考える。
3. タイル操作と計算式の紐づけ
今までのゲームを足し算の式で丁寧に説明をする。
その後、「はこづめ きょうそう! ④」として、足し算の練習をさせる。ただし、児童に共有する問題カードのたこ焼きは動かせないように設定し、さくらんぼ図をかくことの有用性を体感させる。
4. タイルの無い状態での計算練習
最後はたこ焼きの画像(数図ブロック)なしでの計算演習を行い完結。
執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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