本単元で身に着けたい資質・能力
本単元では、加法の結合法則や簡単な加減の暗算を用いて、工夫した計算をすることができる能力を養う。また、ただ答えを出すだけで満足せず、その過程を振り返ることにより計算法則の良さに気づき、それらを日常生活や学習に生かそうとする態度を育む。
単元の評価基準
- 知識・技能:加法の結合法則や括弧を用いた式の計算をすることができる。
- 思考・判断・表現:加法の交換法則や結合法則を用い、より簡単に計算することができる。
- 主体的に取り組む態度:工夫した計算を振り返り、数理的な処理のよさに気づき、それらを日常生活や学習に生かそうとする。
実践前の確認事項
1. 結合法則の導入
たし算のひっ算で習う2つの数の「交換法則」が3つの数でも成り立つことを確認し、「結合法則」への理解を促す。たし算だからできるということを念押しする。
2. 和の一桁目が0になる組み合わせを見つける練習
すべての計算を暗算でできる必要はないが、最低限身につけなければいけない暗算もある。そのうちの1つが今回登場する「和の一桁目が0になる組み合わせ」のたし算である。この暗算が必要なのは、できないと気づけない「工夫」があるからである。ここで身に着けたい暗算とはつまり、目を鍛えること。式を見た瞬間にその組み合わせが浮かび上がって見えるようになるのを理想とする。
3. 括弧の扱いにおける注意
「括弧はその中にあるものを先に計算するのがルール」と教えてはいないだろうか? これをルールとして教えてしまうと、中学入試や中学校数学で出てくる分配法則はルール違反になってしまう。括弧はそもそも「弧(こ)で括(くく)る」と書く。つまり、複数の数をひとまとまりにしているに過ぎない。ひとまとまりにしているのだから、「先に計算をしてあげた方がわかりやすい(ことが多い)」だけである。ここでは括弧の導入として、「括弧は箱である」ということを強調し、ポイント2とともに、児童には目の動かし方まで意識させる。
授業実践
1. 結合法則の導入
下図において2数の和の中で同じ答えになるものを選ばせて、交換法則の復習を行う。
3数の和における交換法則の確認を行う。
下図のようにレベル別の問題を用意し、児童に選ばせることにより、主体的に取り組む姿勢を養うこともできる。
ハイレベル
逆算の考え方は数学にも生きるので、扱えるときには何度でも考えさせたいことの1つである。ハイレベルに取り組んだ児童には、ほかにも答えがないのかを確認すると良い。
交換法則から、たし算は好きな順番で計算できることを確認させ、結合法則を教える。
このとき本実践の意図3に留意して括弧を教え、以下の図のような目の動きを教える。
ここでは児童が結合法則や括弧の利点を感じられないので、数的処理の仕方と括弧の書き方を軽く確認する程度で十分に目標達成である。
2. 和の一桁目が0になる組み合わせを見つける練習
下図のように、たし算の式を多量に用意し、児童には次のように問いかける。
「皆さんは学校の先生です。この中から問題を5問選びテストを作ります。できるだけ多くの人が満点をとれるテストを作りたかったらどの問題を選びますか?」
発問に対する児童の解答とその理由を共有し、和の一桁目が0になる組み合わせは計算がしやすいことを念押しする。
その後は間違い探しの要領で、上図と同じようなシートを見せて、同組み合わせが何個あったのかを短いスパンでチェックし、目を鍛える。制限時間をどんどん短くすることにより、児童は必死で探し始めるだろう。ここでは同組み合わせを「見つける」のが目的ではなく、見つける「瞬発力」を鍛えることが目的である。
3. 3つの数の和における計算の工夫
「18+23+7」の計算式を見せ、「今からこれを計算したいのだけど……気づいた?」等と質問する。気づいている児童が少ない場合は、「あの形がいるよね。」と学んだこととヒントをもとに少しずつ注目すべき形に気づかせていく。その後どのように工夫して計算できるのかをともに考え、結合法則のよさや目を鍛えることの重要性を再確認する。計算演習後、「23+18+7」も同様に計算できることを確認する。計算の工夫の定着が心配な場合は、どこを先に計算すべきか〇をつける作業だけをさせる時間をとっても良い。
最後に括弧についての捉え方を念押しする。
執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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