はじめに
「太陽と地面の様子」の学習後に設定されている、光の性質について学習する単元である。鏡で日光を反射させて遊んだり、虫眼鏡で紙を焦がしたりする中で、児童は自分たちが光を操っていることを感じる。「日光」を「光」として捉え直して性質を調べる中で、生活に役立てることを考えながら学んでほしい。
ちなみに学習指導要領では「光と音」とエネルギー領域の内容としてまとめてある。領域の違いにとらわれず、児童が感覚的に気付いたことから授業を展開していきたい。
本単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、光を当てたときの明るさや暖かさに着目して、光の強さを変えたときの現象の違いを比較しながら、光の性質について調べる。活動を通してそれらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身につけさせたい。授業では主に差異点や共通点を基に、問題を見いだす力や主体的に問題解決しようとする態度を養うことができるようにする。
単元の評価基準
知識・技能
- 日光は直進し、集めたり反射させたりできることを理解している。
- 物に日光を当てると、物の明るさや暖かさが変わることを理解している。
- 観察、実験などに関する技能を身に付けている。
思考・判断・表現
- 光を当てたときの明るさや暖かさの様子について追究する中で、差異点や共通点を基に、光の性質についての問題を見いだし、表現している。
主体的に学習に取り組む態度
- 光の性質についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしているとともに、学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
本単元の難しさ
- 光についての素朴概念
光がどのように進んでいると思うか児童にきくと、直進とは違うイメージをしている児童がかなりいる。反射した光が直進していることは目に見えないので、反射した光を地面に這わせたり、手をあてて空気中のどこを通っているか追ったりして直進することを確認したい。それを黒板に直線で示したりすることで、光の直進性についてのイメージがもてるようにしたい。
- 鏡や虫眼鏡で光を集める実験
複数の鏡で光を集めて的の温度を上げようとしても、児童が手に持っている鏡で光を反射させて、同じ場所に光を当て続けるのは意外と難しい。実験では、時間を計る児童などに、鏡の枚数分の光が当たっているか見させておくなど、どの班も同じ条件で実験ができるようにしたい。
虫眼鏡で光を集める実験では、光が一番小さくまぶしくなる状態をつくるのが難しく、色画用紙を燃やすことができない児童がいる。雲がない日に十分な時間をとって、手や色画用紙の角度を試行錯誤しながら全員が経験できるようにしたい。
単元開始までの準備
- 授業の日程を調整する
「太陽と地面の様子」と同様に、快晴の日を選んで観察や実験ができるようにする。
実験中に太陽に雲がかかると、結果から考察をすることができなくなってしまう。
- 授業をする時間帯に、日光を反射させて当てられる壁(日陰)を見つけておく
日光を反射させるためには日なたにいないといけないが、反射させた日光は日陰に集めないと実験ができない。実験ができる場所は時間帯によって変わってしまうので、ちょうどよい場所を見つけておく必要がある。
- 反射した光を当てる的を作っておく
段ボールを切り、棒温度計を差し込んだものを班の数だけ用意しておく。また、同じ大きさの鏡を班に5枚ずつあるように用意しておく。(小さな手鏡では温度が上昇しにくいため、たくさん用意する必要がある。)
単元の展開【全7時】
第1時 光で的当てをしよう。
【準備】鏡(できれば一人1枚)、的
- 鏡で光を反射させて遊んだ経験について話す。
- 直射日光が当たる教室の窓際で、教師が鏡で光を反射させて黒板に当てて見せる。
- 一人1枚鏡をもって、影になっている校舎の壁に光を当てに行く。
- 教室に戻り、気付いたことを交流する。
- 次時の問題をつくる。
児童から出したい言葉
「鏡で光の場所をコントロールできるようになったよ。」
「光でおにごっこみたいにできたよ。」
「日光をはねかえしているから、光が当たったら暖かいんじゃないかな。」
「みんなで日光を反射させて同じところに当てて遊んだよ。」
「虫眼鏡でものを燃やせると聞いたことがあるよ。」
「光はジグザグに進むと思うよ。」「光はまっすぐ進んでいると思うよ。」
(児童の気づきをもとにして、次時以降の問題をつくっていきたい。)
第2時 光はどのように進むのだろうか。
【準備】鏡(できれば一人1枚)
- 前時の気づきから問題をつくり、光の進み方を予想する。
- 調べる方法を考える。
- 実験で予想を確かめる。
- 分かったことをまとめる。
第3・4時 反射させた光を集めたら、明るさや温度は変わるのだろうか。
【準備】鏡
- いくつもの鏡で光を反射させ、その光を集めたときに明るさと温度が変わるか予想する。
- 調べる方法を考える。
- 実験で予想を確かめる。
- 分かったことをまとめる。
実験の役割分担
- 鏡で日光を当てる人・・・5人(鏡は大きい物があればそれを使う)
- 温度を記録する人・・・1人
- 時間を計る人・・・1人
- 記録画像を撮影して明るさを調べる人・・・1人
※理科の班は4人で8グループ作ることが多いが、この実験は8人4グループくらいがちょうどよい。
※タブレット端末は明るさを自動調整するので、光が当たったところにピントを合わせると、明るさが違う画像になってしまい比べられなくなる。カメラを向けたときに影の部分をタップして、画像の明るさを揃えるよう声をかけておく。
※小さい鏡を1・2枚増やしても、温度が上がりにくく1枚のときと差が出にくい。鏡が1枚のときと鏡が5枚のときで比べると、温度に明らかな違いがでてくるので分かりやすい。
第5・6時 虫眼鏡を使うとなぜ紙をもやすことができるのだろうか。
【準備】虫眼鏡、黒い色画用紙をカードサイズに切ったもの
- 虫眼鏡で黒い色画用紙を燃やしてみる。
※虫眼鏡で紙が燃える様子を動画で撮影しておく。
- 燃える部分が非常に明るいことから、そこに光が集まっており、温度が高くなっていることに気付かせる。
- 分かったことをまとめる。
※レンズがなかったら虫眼鏡の枠だけがかげをつくり、枠の中は明るくなる。レンズがあると、枠の中が暗くなり、中心だけが非常に明るくなることから、光が集められていることに気付けるようにするとよい。
第7時 太陽の光について学んだことをまとめよう。
- 分かったことを絵や字を使ってノートにまとめる。
※自由に絵をかきながらまとめるときには、黒板に矢印や太陽の絵をかいて見本にしてやると、児童も自由な表現で学んだことをまとめはじめる。理科で学んだ言葉や、感覚で感じた温かさなど、学習を通して経験したことをまとめることで、記憶に残りやすくなる。
※「太陽と地面の様子」の学習ともつなげて、ここまで構築してきた概念をアウトプットさせて残しておく。
参考:国立教育政策研究所, ”「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する指導資料【小学校 理科】”, p.37, 東洋館出版社, 令和2年, https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/hyouka/r020326_pri_rika.pdf
執筆者プロフィール
Cana
元小学校教諭。学年主任・研修主任などを経験後、家庭の事情で退職。現在も非常勤講師として小学校で授業をしながら教育系Webライターとして活動中。学生時代は理科教育を専門に勉強し、大学院で小学校教諭専修免許を取得。理科では、本物にかかわることや、心を動かす授業にこだわっている。
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