準備の負担がけっこう大きい
私は基本的に「1人1実験」を目指しています。準備(≒予算)の都合で「1人1実験」が難しかったとしても、できるだけ少人数で実験をさせてあげるのが理想だと思います。
この理想を実現するにはのはけっこう骨が折れます。最近は多くの動画にアクセスしやすくなってきているので、動画を見せて済ませることも可能なのですが、できるだけ子供たちに体験させてあげたいなと思っています。
器具や材料が十分に足りない現実(実験道具は高いです)があるので、なかなか「1人1実験」は難しいです。教科書に載っている器具を使って地層を作る実験をしようとすると、たいへんな道具代がかかりますので、それは下のYoutube動画を見せて済ませました。
今回はメスシリンダーの中に地層を作ることにして、4人に1つの実験にしました。結果がこれ↓↓↓です。けっこうはっきりと層に分かれているのが見えます。
上手く結果が出るようにするには、「水・砂・礫(れき)の分量をどれくらいにするのか」「どれくらいの水を入れるのか」「何mLのメスシリンダーに何回流し込むのか」等が不明でした。予備実験の時に試行錯誤してベターな量がまあまあ分かってきましたので、共有します。
実験の準備
土砂の準備1
ホームセンターで「砂」を購入しました。170円程度です。安いので、たくさん買えます。
「小石(礫)」はちょっと高かったので購入を諦め、メダカの水槽に使っていたものを使いまわしました。小学校では「礫」「砂」「泥」と習うので、本当は様々な大きさの粒がいい割合で混ざっているのがベストです。「小石(礫)」:「砂」が1:1になるぐらいに混ぜました。ホームセンターで私が買った「砂」は、けっこういろんな大きさの「砂」が混じっていたし、教科書に書かれている「厳密な砂(粒の大きさが0.06mm~2 mm)」ではないので、そこそこ「泥(粒の大きさが0.06mm以下)」も混じっていました。泥の沈殿は遅く、とても細かい泥は水が澄んでくるまでに4日ほどかかります。泥によって沈殿していく過程が違い、授業中に観察できる沈殿と授業が終わった後に時間をかけて沈殿していく姿の両方を見られるのは大切です。たっぷりと泥が入っている状況を準備できるといいですね。
土砂の準備2
用意した土砂を混ぜます。下記のようにトレイに分けておいてあげると子供たちが取りやすいと思います。4人班で一人一回流し込みましたので、何回も土砂を取りに来ます。
均等に混ぜて、初めから少し湿り気を与えてあげると固まるので漏斗に盛り付けやすいです。盛り付けた土砂に水をかけると、一気に流し込むことができます。盛り付けには百均で買ったプラスチックスプーンを使いました。
メスシリンダーの破損を防ぐ
メスシリンダーではなく、ペットボトルなどでも実験はできます。しかしメスシリンダーの方が細いので、少しの土砂でも地層の縦幅が大きくなるのは魅力的です。細いので土砂の準備も少なくて済みます。
メスシリンダーはとても正確にメモリが刻まれているため、高価です。また、メスシリンダーは重心が高い割に脚の部分が大きくないので転倒しやすいです。下↓↓↓の写真のように水槽の真ん中に置いておくと、転倒しても割れにくいです。実験中に泥水が吹きこぼれる場面もありますので、水槽の中に置いておくと、吹きこぼれた水を受け止めるという点でもメリットがあります。
ろうとの準備
土砂を一気に流し込んだ方がはっきりした地層ができるので、ろうとは大きい方がいいです。漏斗の途中で大きい礫が引っかかって詰まることがあり、そうなると引っかかった場所でふるいにかけられて砂や泥が先に落ちてしまいます。それでは「大きい粒の方が速く沈む」という結果に導くことができません。
注ぎ口が大きいろうとの方が土砂を一気に流し込むことができます。100均やホームセンターで売っている漏斗も、けっこう大きいものがありますが、今回は格安かつ作成の手間が少ない漏斗を、ペットボトル(2L)で作ってみました。キャップを取って、注ぎ口から12cmあたりを切っただけのものです。
上↑↑↑の写真のようにペットボトルの漏斗に土を片寄らせて入れておき、そこに水を流し込むと、一気に土砂が落ちます。
土砂の量を測るカップの準備
何層もの地層を作るには、水の量や土の量を調整する必要があります。何度も繰り返して予備実験をした結果、まあまあ綺麗な地層ができる組み合わせは、
メスシリンダー250mL + 最初から入れておく水120mL + 土砂80mL + 土砂を流し込む水120mL
でした。あくまで、私の体感です。
持ち上げてもポタポタ水が落ちない程度に濡らした土砂を80mLです。土砂は濡らすと少し体積が減りますし、水の中に流し込んだ後はさらに体積が減ります。80mLの土砂であれば、4人で4回流し込んでも250mLのメスシリンダーなら余裕で収まります。200mLのメスシリンダーでも、なんとか収まります。
子供は量の調節がうまくできないので、百均で買ったカップの80mLに当たる所に緑色で線を引いています。
水を流し込むカップの準備
まず、メスシリンダーに120mLの水を入れます。
次に、土砂を流し込むための水120mLを用意します。ビーカーよりも安価で壊れにくいものをと思って百均の「断熱カップ」(8個入)を購入して、内側に緑の線で120mLの印をつけておきました(だいたいでいいです)。百均グッズやペットボトルが大活躍です。
実験の記録
先に子供たちにゆっくりと教師のデモンストレーションを見せます。その後、もう一度デモンストレーションしながら手順を説明します。
① メスシリンダーの120mLの印の所まで水を入れます。
② 透明のカップの緑線の所まで土砂を入れます。
③ 漏斗に土砂を少し片寄らせて入れます。なぜ片寄らせるかと言うと、一気に土砂を流し込みたいからです。
④ コップに120mLの水れて、一気に土砂を流し込みます。一気に流し込まないと地層は上手にできません。ここがポイントです。
⑤ 観察しながら、2分待ちます。
⑥ ①~⑤を4回繰り返します。やる人を1回ごとに変えて、みんなが参加できるようにしましょう。
⑦ 2回目からは水があふれてくるかもしれませんが、メスシリンダーを水槽の中に入れてあるから大丈夫です。
実験の結果
どの班もはっきりと地層が見えるように作ることができました。水をちょろちょろ流し込んでしまった人の所は曖昧になっていても、4回やれば3人は成功します。次の日になると、砂利とメスシリンダーの間にある濁った水が落ち着き、よりクリアに地層が見られます。写真↓↓↓で見るよりも実物の方がずっと分かりやすいです。
土砂を使うのが泥遊びみたいで楽しくなりすぎて、キャーキャー言ってしまっていた班もありましたが、メスシリンダーの中で地層ができることには興味を持つことができたようです。本当は今回の実験よりももっともっと長い時間をかけて地層ができることを子供たちに伝えました。
後始末
せっかく苦労して作った土砂なので捨てずに回収し、トレイの上で乾かして次年度にも使えるようにしたいです。水中に漂っている細かい泥を捨ててしまわないように、上澄み液は丸型水槽に回収しました。5日ぐらいすれば泥が沈んでくるので(下写真)、トレイに戻して土砂と混ぜました。
もう一つの実験
教科書にはもう一つの実験のやり方が載っていました。「ビンに土を入れて振る」という簡単な実験です。ビンはたくさんなかったので、ペットボトルで代用しました。ペットボトルの1/4に土を入れた後、3/4に水を入れて振ります。
メスシリンダーが4回繰り返すと何重もの層ができるのに比べて、ペットボトルは1回分の地層しかできません。それに、あまりクッキリとは層が分かれないのが弱点です。4日ほどたつと、上澄み液の濁っていた部分の細かい泥が沈んでくるので、それでできる層は観察に値します。
土をペットボトルに入れる作業にけっこう手間を取られます。ペットボトルを切って作った漏斗に百均で買った水やり用のキャップを切ったものを付けたろうとを使うと、スムーズに土を入れることができます。
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