1 はじめに 「節度、節制」の授業のポイント・注意点
本教材「かぼちゃの つる」は、小学校学習指導要領解説「特別の教科 道徳(平成29年7月)」の内容項目A「節度、節制」に該当する教材です。
内容項目の「節度、節制」とはどのような意味があるのでしょうか?
節度は「行き過ぎのない適当な程度(デジタル大辞泉)」とあり、節制は「度を越さないように控えめにすること(デジタル大辞泉)」とあります。
両方に共通する点は、「やり過ぎない」ということです。
学習指導要領では節度、節制の内容には2つの要点を含んでいることが示されています。
- 基本的な生活習慣に関わること
- 進んで自分の生活を見直し、自分の置かれた状況について思慮深く考えながら自らを節制し、程よい生活をしていくこと
(小学校学習指導要領解説「特別の教科 道徳P32)
「やり過ぎない」ということと、上記の2つの要点を掛け合わせると以下のような生活・行動を子どもたちが見つめ直す授業が重要になってきます。
- 好きなお菓子を食べたら止まらなくなった
- 楽し過ぎて約束の時刻を越えて遊んだ
- とても楽しかったので周囲の迷惑を考えないで(ルールを逸脱して)遊んだ
- 友達に言いたいことを言いすぎた
「わがままをしない!」というお題目で終わる授業ではなく、自分自身をコントロールするよさや大切さに気づかせる授業が求められます。
例えば、わがままをしないでルールを守ると気持ちよく生活できること、自分の気持ちをコントロールすることで後悔の念が少なくなること、面倒だと思うことを最後までやることで成長できることなどに気づかせ、子どもたちが実生活で「節度、節制」を実践する力を養っていきます。
低学年では「わがままをしない」「身の回りを整える」などの基本的な生活習慣に重きをおき、具体的な行動に焦点を当てて授業をします。
中高学年では、「自分でできることは自分でやる」「安全に気を付け、よく考えて行動し、節度のある生活をする」といった自分の生活を見つめ直す授業を中心に展開できるとよいです。
また、社会的な視点から道徳の授業を構想することも大切です。
あおり運転や誹謗中傷、闇バイトなどの社会問題は「自分さえよければ(楽しければ)よい」という風潮が原因になっているといえます。
「節度、節制」を軸とした自分をコントロールする力があれば、あおり運転や誹謗中傷、闇バイトに加担するようなことは抑制されるのではないでしょうか?
子どもたちの将来を見据え、社会問題の視点も頭に入れて授業を構想していきましょう。
2 教材、あらすじ、授業のねらいについて
- 小学校1学年 道徳科 主題名 「わがままを しないで」
- 教科書 東京書籍 『新しい道徳』「かぼちゃの つる」
- 内容項目 A-(3)節度、節制
あらすじ
わがままなかぼちゃが自分の思うままにつるをどんどん伸ばしていきます。
蜂やチョウたちが注意をしますが、かぼちゃは聞く耳を持ちません。
つるは道路を挟んだ隣のすいかの畑にまで伸びていき、すいかや小犬にも注意されますが、かぼちゃは構わずつるを伸ばし続けます。
そして、道路をトラックが走り、かぼちゃはつるを切られて大泣きします。
ねらい
わがままや自分勝手な行動の影響を理解させ、わがままな言動を慎もうとする心情を育てる。
3 授業の工夫
かぼちゃの行動に対して子どもたちが客観的に意見をするのではなく、子どもたちが自己の行動を振り返り、正していく授業の工夫をここからは紹介していきます。
自分事として登場人物の気持ちを考えさせる工夫
道徳授業の基本である「自分事として考える」
「かぼちゃのつる」かぼちゃのわがままで自分勝手な行動に着目しながら、登場人物の気持ちを問う授業が効果的です。
かぼちゃの気持ちを問う発問
T 「みんなから注意をされたかぼちゃはどのような気持ちだろう?」
C 「人が通る道なんてオレには関係ない」
C 「オレはこっちに伸びたいんだ」
C 「だれも困らないからいいじゃないか」
T 「つるを伸ばし続けるかぼちゃはどんな気持ちだろう?」
C 「伸ばしたいところにどんどん伸ばすのって気持ちいいな」
C 「この調子でどんどんつるを伸ばそう」
かぼちゃの気持ちを問う意図は、わがままをしている時は自分をコントロールできていない時であることを子どもたちに気づかせるためです。
きっと子どもたちにもかぼちゃのように自分を見失った経験があるでしょう。
C 「甘くて美味しいから、たくさん食べちゃった」
C 「お母さんがいないことをいいことに、たくさんゲームをしちゃった」
実はかぼちゃのわがままな行動と同じようなことを自分たちもやっていたことを認識させていきたいですね。
つるを切られたときのかぼちゃの気持ちを問う
T 「トラックにつるを切られたかぼちゃはどんなことを考えたでしょう?」
C 「わがままするんじゃなかった」
C 「みんなの言うことを聞けばよかった」
C 「どうして伸ばし続けてしまったんだ」
わがままをした結果、後悔の念を強くする場合があります。
子どもたちも、
C 「食べ過ぎて気持ち悪くなった」
C 「ゲームをやり過ぎて、次の日起きられなかった」
というような、後悔の経験があるでしょう。
教材のかぼちゃの行動と自分の行動を行ったり来たりして、自分をコントロールする大切さに気づかせていきましょう。
わがままな行動の周囲への影響を考えさせる
また、かぼちゃだけでなく、かぼちゃに助言した蜂やチョウなどの登場人物の気持ちも問うようにします。
かぼちゃの行動が周囲に与える影響を考えさせるためです。
T 「どんな気持ちでかぼちゃに注意しているでしょう?」
C 「とても迷惑だな」
C 「どうしてわがままするの?」
C 「このままだとかぼちゃが危ない」
C 「もうかぼちゃと関わりたくない」
「周囲にどんな影響をあたえるか」「迷惑にならないか」という視点は、わがままで自分勝手な行動を抑制するきっかけになります。
かぼちゃのわがままな行動が周囲を困らせていることに気づかせ、自分の行動を見つめ直す授業展開が重要です。
わがままで自分勝手な状態は自分をコントロールできない時と子どもたちがわかり始めた段階で、「では、どうしたらよいのか?」という問いを子どもたちに投げかけていきましょう。
自己の言動を見つめ直し、実践力を養う工夫を
「かぼちゃの つる」では、かぼちゃの行動と気持ちを考えるだけでは、授業のねらいには迫れません。
「かぼちゃはわがままだな」「自分勝手なことはしないようにしよう」という学びの一歩先を目指していきましょう。
自分の気持ちをコントロールすることがまだ難しい1年生だからこそ、子どもたちが自分自身の生活や言動を見つめ直し、よりよくしていこうとする意欲を高める授業実践を心掛けましょう。
授業の導入時に自己の行動に注目させる発問
T 「わがままをしたことはありますか? それはどんな時でしたか?」
C 「お母さんにゲームを止めるように言われたけれど、止めなかった」
C 「イチゴが美味しくてたくさん食べた。そしたらお腹が痛くなった」
「自分はわがままをしていないかな?」という問いで、子どもたちのわがままな行動があぶり出されると思います。
子どもたちから出てくるわがままで自分勝手な行動を共感的に受け止め、自己の行動を見つめ直す話し合いの入口を作ります。
児童の実態によっては、教材を範読後に「かぼちゃと同じようなわがままな行動をしたことはありますか?」と発問する場合もあります。
正しいことをする力を高める発問
授業の後半では、子どもたちの道徳的実践意欲を高める時間として展開しましょう。
T 「わがままをしないようにするためには、どうしたらいいだろう?」
C 「ルールを守る」
C 「迷惑がかかっていないか考える」
C 「自分にストップを掛けられるようにする」
C 「友達やお父さん・お母さんの言うことを聞く」
児童の実態、授業展開によっては、子どもたち自身の行動を問う前に「かぼちゃはどうしたらよかっただろう?」と、主人公の行動を考え直す方法もあります。
「かぼちゃは〇〇したらよかった」の〇〇が子どもたちの行動をよくしていくヒントになります。
1年生の発達段階では、ルールや約束、保護者や教師の言葉がわがままや自分勝手な行動の抑止力になると思います。
しかし、「節度、節制」の最終的な目標は「自分で気持ちをコントロールする」「自分でストップをかける」ということです。
そのことを念頭に置いて、授業を展開していきましょう。
執筆者プロフィール
マー
小学校教員を15年務めた後、フリーのWEBライターに転身。教員時代は安全主任、体育主任、生徒指導主任、学年主任を担当。現在は「物事のよさをより多くの人に」をモットーに教育系記事、金融系記事を主に執筆。趣味は野球観戦とランニングで、野球やマラソン・駅伝を応援するブログを運営している。

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