低学年のいじめを予防するには、子どもたちにわかりやすい指導をまずは心掛けましょう。
指導には、学習指導、生徒指導、清掃指導、給食指導など、いろいろな指導が含まれています。
わかりやすい指導で、子どもたちのストレスや負担を減らし、気持ちよく学校生活を送れるようにすることで、いじめの芽が出にくくなります。
低学年の子どもは自己中心的な面が色濃く残り、感情のコントロールも上手ではありません。
また、コミュニケーションスキルも未熟なため、些細なトラブルが起こりやすいので、「どのような言動が相手を喜ばせたり、落胆させたりするのか」を具体的に子どもたちに指導していく必要があります。
「いじめはいけない」と伝えるだけでなく、子どもたちの成長に目を向けたいじめ予防策を今回は解説していきます。
低学年のいじめの主な原因

まず、低学年のいじめで多い原因を探っていきましょう。原因がわかれば対策も立てやすいです。
① 自己中心的な思考
低学年の子どもたちの中には、自己中心的な考え方をする子がまだ多いです。
自分が何をしたいのか、どう感じるかに強く焦点を当てるため、他人の気持ちや立場を考えることが難しい面があります。
その結果、無意識に他の子どもを傷つけてしまうことがあります。
② 社会的なスキルの未熟さ
低学年の子どもたちは、まだ人間関係をうまく築くスキルが十分に発達していないことが多いです。
言葉をうまく使えなかったり、感情をうまく表現できなかったりすると、摩擦が生じやすくなり、いじめの原因になることがあります。
③ 集団の中での位置づけや優位性
友達関係を築く中で誰がグループ内でリーダーシップを取るのか、誰が外れた存在になるのかといった位置づけが子どもの世界では重要です。
友達を位置付ける過程で、弱い立場にある子どもがいじめのターゲットになりやすい傾向があります。
④ 家庭環境の影響
いじめの原因として、家庭環境が影響する場合もあります。
家庭でのストレスや親の関係が不安定だと、子どもがその感情を他の子どもに向ける可能性があります。
また、親がいじめを許容するような態度を示している場合、子どもがいじめを正当化してしまうこともあります。
⑤ メディアや周囲の大人の影響
映画やテレビ、インターネットなどのメディアで見られる暴力的な行動やいじめの描写が、子どもたちに影響を与えることもあります。
また、暴力的な言動や他人を無視する態度といった大人が示す行動は、子どもに模倣されやすいので注意が必要です。
⑥ 感情のコントロール不足
低学年はまだ感情のコントロールが十分にできない場合が多いです。
何かのきっかけで感情が爆発し、その結果として他の子どもを傷つけていじめにつながることがあります。
低学年に多いいじめの種類
低学年のいじめには特徴があり、特徴を踏まえて対策をする必要があります。
言葉によるいじめ(言葉の暴力)
低学年では、以下のような言葉を使ったいじめが多く見られます。
- 「デブ」や「バカ」などあだ名をつけてからかう
- 相手の悪口を言う
- 差別的な言葉や否定的な表現を使う(外見や行動をバカにする)
自分が思うことをすぐに口に出したり、相手の違いや弱点を指摘したりして、友達を傷つけてしまうケースが多いです。
無視(社会的排除)
低学年の子どもは友達との関係を大切にします。
しかし、「遊びに誘わない」「会話や活動に参加させない」「特定の子を無視することで孤立させる」といった社会的排除する芽があることを念頭にいれておきましょう。
グループ内での「仲間外れ」や「無視」は深刻ないじめにつながるので、先生方は早めに察知する必要があります。
身体的ないじめ
小学校低学年では、まだ体力や力の差が出やすく、身体的ないじめも発生することがあります。
- 押す、引っ張る、叩く、蹴るなどの暴力行為
- おもちゃや文房具など物を奪う
- 肩を押して転ばせる
- 叩いて泣かせる
こうした行為は即指導できるように、日頃から子どもたちをよく観察しておきましょう。
物を使ったいじめ
物を使って他の子どもをいじめる場合もあります。
お金やお菓子を強要したり、他の子の持ち物を隠したり、壊したり、盗んだりと悪質なケースに発展する場合が、高学年に限らず低学年でもあります。
模倣的ないじめ
低学年の子どもたちは、周りの大人やテレビ、映画、ゲームなどで見た行動を模倣することがあります。
テレビ番組で見た悪い例を真似したり、ゲームでの暴力的な行動を真似したり、周囲の大人が使う言葉をそのまま使って悪口を言ったりして、無意識に友達を傷つける場合が少なくありません。
競争や比較によるいじめ
子どもたちはスポーツや勉強などの分野で他の子と比較することが多いです。
この競争心が過度に強くなると、勉強や運動ができないことを馬鹿にしたり、自分が優れていると思って他人を意図的に劣っているように扱ったりし、他の子を見下す行動やいじめにつながる場合があります。
低学年のいじめ予防対策
ここからは低学年のいじめ予防対策を解説します。
「ダメ」という指導ではなく、子どもがノビノビと成長しながらいじめを防ぐ視点を大切にしていただきたいと思います。
トラブルを円滑に解決する
子ども同士のトラブルが起こった際、円滑に解決できるようにしましょう。
ポイントは子どもが納得するように解決することです。
子どもが先生の指導に納得したかどうかを、子どもに自分の意見や感情を言わせて確認するとよいです。
指導内容について子どもがどう感じているかを簡単な質問をして確認します。
例えば、「これで解決できたと思う?」や「何か気になることはある?」といった問いかけを行い、子どもの反応を見ましょう。
一方、トラブルが尾を引いてしまう場合もあります。
感情的な対立が長引いたり、解決策が十分に説明されなかったりしてトラブルが解決されないままだと、子ども同士の信頼関係が損なわれ、学級の雰囲気に影響を与える可能性があります。
これを防ぐために、早期に問題を解決し、子どもたちが納得できる形での説明やフォローを行いましょう。
トラブルの尾を引かないように、子どもがスッキリする対応を心掛けましょう。
「何かあったら先生が助けてくれる」という安心感がトラブルの再発防止にもなります。
言葉遣いに注意する
子どもに対する言動に気を付けましょう。
知らず知らずのうちに特定の子に集中して指導をしていると、「〇〇さんはいつも先生に怒られていてダメな子」という偏見を生みます。
子どもが偏見をもたないように、先生方は言葉遣いや指導方法に気を付けましょう。
ささいなことを察知する
いじめのサインは子どもの様子に表れます。
特に低学年の子どもは顔の表情や態度によく表れます。
「いつもより暗いな」
「元気がないな」
そんなことを少しでも感じたら、すぐに声を掛けましょう。
また、文字や服装の乱れであったり、壁や机などへの落書きなどもいじめの芽になり得るので、ささいなことを察知するアンテナを張り巡らすことが大切です。
即対応する
気になること、特にいじめのサインと疑われることは、その日のうちに確認・報告・相談できるようにしましょう。
学年主任、生徒指導主任に相談したり、子どもの話から事実確認をしたりして対応をします。
早めに対応すればするほど、いじめの芽を小さくしたまま対応できます。
いじめの芽が大きく育つと対応に苦慮しますので、即対応を心掛けましょう。
ここまでの予防策はいじめの芽を大きくしない教員の心掛けです。
次からは子どもたちの成長を促していじめ予防をする方法を解説していきます。
コミュニケーションスキルを育てる
いじめ予防のために必要なコミュニケーションスキルは、相手の気持ちを大切にしながら、自分の気持ちも伝える力です。
低学年の子どもは相手の気持ちを想像することが難しい段階です。
まずは「ありがとう」や「ごめんなさい」といった相手に寄り添う言葉を使えるように指導していきましょう。
相手が喜ぶ言葉を考えさせる
「ありがとう」や「ごめんなさい」以外にも、相手の気持ちに寄り添う言葉はたくさんあります。
「大丈夫」「一緒に頑張ろう」「何か困った」などの言葉も心がポカポカと温まる言葉です。
心が温まる言葉を子どもたちに考えさせ、進んで使うように指導していきましょう。
温かいコミュニケーションのよさを実感させていきたいですね。
道徳の授業で他者理解を促す
道徳の授業では、いじめを題材とした教材だけに力を入れることがないようにします。
つまり、どの内容項目の授業でも友達の考えに耳を傾け、他者を理解する態度を育てていきます。
こうした一つ一つの道徳授業の積み重ねが「自分も相手も大切にする心」を育むことにつながっていきます。
いじめ予防に即効性はありません。
毎日の授業や学級経営を丁寧に取り組むことで、いじめの芽が育たない学級環境を形成できます。
ぜひ今回の記事を参考に、温かな人間関係づくり・学級づくりを実践して、いじめを予防してください。
執筆者プロフィール
マー
小学校教員を15年務めた後、フリーのWEBライターに転身。教員時代は安全主任、体育主任、生徒指導主任、学年主任を担当。現在は「物事のよさをより多くの人に」をモットーに教育系記事、金融系記事を主に執筆。趣味は野球観戦とランニングで、野球やマラソン・駅伝を応援するブログを運営している。
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