本単元で身に付けたい資質・能力
地域の発展に尽くした先人の働きなどについて、人々の生活との関連を踏まえて理解させる。調査活動、地図帳や各種の具体的資料を通して、必要な情報を調べまとめる技能を身に付けさせる。また、先人が当時の地域や人々の生活の向上に貢献したことを考え、表現する力を養う。そして、主体的に学習の問題を解決しようとする態度や、地域社会に対する誇りと愛情、地域社会の一員としての自覚を養う。
単元の評価規準
知識・技能
先人の働きについて、博物館や資料館などを見学したり、昔と現在の市の地図や写真などの資料で調べたりして、年表などにまとめている。
思考・判断・表現
当時の世の中の課題や人々の願いなどに着目して、地域の発展に尽くした先人の具体的事例を捉え、先人の働きを考え、表現している。
主体的に学習に取り組む態度
先人の働きについて、予想や学習計画を立てたり、見直したりして、主体的に学習問題を追究し、解決しようとしている。
単元の展開【1~13時】
1時 オリエンテーション
・地域の昔の様子を伝える史跡や行事を見学する。
・地域は昔、どのような所だったのか、個人で考える。
・個人で考えたことを、班で共有する。
・地域は昔、どのような場所だったかについて班で調べる。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
2時 米がほしいけれど
・新田開発が行われたわけを班で調べる。
・調べたことをもとに、気になったことや疑問に思ったことを班で話し合う。
・話し合ったことをもとに、学習問題をつくり、予想を分類・整理し、学習計画を立てる。
・単元の学習問題(例:昔の地域の人々は、どのようにして、米がたくさんとれる田を開いたのだろう。」)を問いかけ、個人で予想をする。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
3時 見沼代用水と井沢弥惣兵衛
・図書館の本やインターネットなどを使って見沼代用水の開発について個人で調べる。
・見沼代用水や、井沢弥惣兵衛(いざわやそべえ)について、地図や年表を使って個人で調べる。
・調べて、気づいたことや疑問に思ったことを、班で話し合う。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
4・5時 どうやって水を引いた?
・班で調べることを確かめて、博物館へ行く。
・弥惣兵衛(やそべえ)は、見沼代用水のコースをどのようにして決めたのかを、個人で調べる。
・見沼新田に水を引くための工夫について、個人で調べる。
・調べたことを班で共有する。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
6・7時 ふたてに分かれた用水路
・用水路がふたてに分かれて流れる場所の地形や土地の高さの違いを、地図から班で読み取る。
・二つの用水路に挟まれた土地の高さが、周りの土地より低いわけを班で考える。
・用水路がふたてに分かれて流れるわけを個人で調べる。
・個人で調べたことを、班で共有する。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
8時 どのようにして工事は行われた?
・弥惣兵衛は、工事をどのような時期に行おうとしたのか、個人で考える。
・工事の進め方や使われた道具を、個人で調べる。
・個人で調べたことを、班で共有する。
・個人で調べて分かったことを、ノートや付箋に書く。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
9時 調べてきたことを整理しよう
・これまでに書いた付箋を見て、調べて分かったことを個人でふり返る。
・見沼代用水の地図の上に、書いた付箋を貼って調べたことを班で整理する。
・弥惣兵衛(やそべえ)が行った、他の工夫について個人で調べる。
・個人で調べたことを班で共有し、話し合う。
・班で話し合ったことをクラス全体に伝える。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
10時 もっと知りたいな、井沢弥惣兵衛
・弥惣兵衛(やそべえ)の思いや、抱えた苦労を、想像して班で話し合う。
・弥惣兵衛(やそべえ)が抱えた思いや苦労について、個人で調べる。
・個人で調べたことを班で共有する。
・工事の無事などを願って弥惣兵衛(やそべえ)が建てたとされる施設を、班で調べる。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
11時 そして、ゆたかな土地に
・見沼代用水が完成し、地域がどのように変化したかを個人で想像する。
・見沼代用水が完成した後の地域の変化を、個人で調べる。
・新田開発が終わったその後の地域の様子を、個人で調べる。
・調べたことを班で共有する。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
12時 未来に残そう、みんなの見沼
・地図やパンフレットを使って、見沼新田や見沼代用水の今の様子を、個人で調べる。
・見沼新田や見沼代用水を生かす人々の取り組みを、個人で調べる。
・調べたことを班で共有する。
・地域の人々は、新田が開かれた場所や見沼代用水に、どのような思いをもっているかを、班で考える。
・班で考えたことを、クラス全体に伝える。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
13時 昔と今を年表や地図でつなげよう
・見沼代用水の開削と新田開発について、さらに調べたことを年表や地図に班でまとめる。
・整理した年表や地図を見て、学習問題について自分の考えを振り返りシートに書く。
・新田開発を終えた弥惣兵衛(やそべえ)の気持ちや、自分が弥惣兵衛に伝えたいことについて個人で考え、班で話し合う。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
知識の構造図とは
「知識の構造図」というのをご存知ですか。「単元構造図」や「教材構造図」などとも言われていますが、「知識の構造図」については、教育者であり教育学者の北俊夫先生が著書『社会科学力をつくる“知識の構造図”-“何が本質か”が見えてくる教材研究のヒント-』において以下のように示されています。
社会科は「内容教科」です。にもかかわらず,「社会科は何を指導するのかがはっきりしないから難しい」という声がたびたび聞かれます。「何を」指導するのかを明確にして授業づくりに当たることにより,社会科の教科としての役割を十分に果たすことができるようになります。「何を」指導するのかを小単元ごとに整理したものが「知識の構造図」です。 |
「知識の構造図」を使うことによって、3つの「何を」指導するのかが明確になっていきます。
1つ目は、「具体的知識」です。「具体的知識」とは、「一時間毎に習得させる知識」です。
2つ目は、「概念的知識(中心概念)」です。「概念的知識(中心概念)」とは、「単元の終末に、調べて取得した具体的知識を活用して獲得させる知識」です。
3つ目は、「用語や語句」です。「用語や語句」とは、「都道府県の名称や地図記号などのような一般的な知識」です。
以上の3つの「何を」指導するのかについて、「知識の構造図」は階層的に整理されています。このことによって、一時間毎に何を指導するのか,単元の終末に何をまとめさせるのかが明らかになります。授業者は授業のゴールのイメージを明確にもつことができるのです。
例えば、本授業実践での「具体的知識」は、1時は「約300 年前のこの地域は、水田が開かれたくさんの米がとれた。」、2時は「昔、地域の人々には、田を開いて米を増産したいという願いがあった。」など、1時から13時までの「具体的知識」が「知識の構造図」によって明確になります。「概念的知識(中心概念)」は、「見沼代用水の工事は弥惣兵衛によって様々な工夫が施され、完成した。そのため、新田開発で地域の人々の生活は豊かになり、今も見沼新田や見沼代用水は地域の人々に大切にされている。」などが単元の終末にまとめさせたい知識です。「用語や知識」は、1時は「新田開発」、2時は「見沼新田」など、1時から13時までの「用語や知識」が「知識の構造図」によって明確になります。これらを図にまとめたものが「知識の構造図」です。
次の実践(『わたしたちの県のまちづくり』焼き物を生かしたまちづくり)で、実際の「知識の構造図」を紹介していきます。
[参考出典]
・教育出版「令和6年度版『小学社会4』年間指導計画・評価計画」
・明治図書『社会科学力をつくる“知識の構造図”-“何が本質か”が見えてくる教材研究のヒント-』(北俊夫 著)
執筆者プロフィール
nanalalala
元小中学校教員。「思考を深める」(アクティブラーニング・思考回路図の活用など)、「安心して学ぶことができる」(ユニバーサルデザインを意識した授業計画・環境整備など)、「SST」「理解教育・インクルーシブ教育」などを意識し、教育活動・学習活動などに取り組んできた。現在は自身の経験を伝えるWebライターとして活動中。
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