書く・読む・共感の輪をひろげる作文の授業(小美濃威先生)

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、2013年3月31日に朝日新聞の連載記事「花まる先生」で実践が紹介された、元杉並区立桃井第五小学校の小美濃威(おみのたけし)先生への取材をもとにしたものです。

朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/edu/articles/TKY201303300278.html
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作文とは、児童ひとりひとりが自身の体験・心情を吐露するとてもプライベートなものです。しかし、それを個人のもので終わらせず、クラスメートの前で発表することで、絆を深め、互いへの思いやりの気持ちを育てる素晴らしい『教材』にもなります。

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2 『書く』指導

テーマを決めて(「友情」など)、時間を工面し何時間か連続した授業で行えるとよい。

1.参考文献を読む

過去に指導した児童の作文で、参考になるものがあればプリントして配布する。

2.取材指導(ここでは自分自身を取材することをいう)

  • 「何を書けばいいのか分からない…?」

先生がテーマに関する問いかけをし、それに対する答えを発表→紙に書かせる→模造紙などに貼り出す。

※児童に自分の書きたい作文のイメージを掴ませることが大切。

3.構想指導(どういう順番で書くのか)

  • 「どういう順番で書けばいいのか分からない…?」

どういう順番で書くのか簡単に指導し(構成シートを渡して、取材指導で書いたものに時系列で番号を付ける)、詳しく書きたいところには○をつけメモでふくらませておく。

※過去形で、時間の順序に従って、ですます調で書くように指導。説明形で、根拠の入ったものを書けるように。

4.記述指導(どういう風に書くのか)

  • 「どういう風に書けばいいのか分からない…?」

心の中のものをたくさん入れて書くように指導する。2時間ほど時間を長めに取る。誤字・脱字や漢字なども気にせず、とにかく思考を留めずに書かせるようにする。先生は原稿用紙を持って立ち歩き、進度を見つつ児童に原稿用紙を渡す。

※このとき「座席は移動自由」だが「つるまず」「孤独に」ということがポイント。児童は自由に居心地のいい場所で執筆ができるが、自身と対話するため、ひとりきりになることが重要。

5.推敲指導

自分で誤字脱字を直し、書き加えをさせる。
3回声に出して読み、児童自身が気持ち悪いと感じたところを書き直させる。

書いたものは児童の心そのものなので、内容を尊重する。膝下指導(1対1の丁寧な指導)は一度きりで、児童の意見を優先する。書きたいことがうまく伝わっていない場合は、問答式の会話でそれを引き出す。

※「その時どう思ったの?」「思い出したことを書けばいいんだよ」 

3 『読む』共感の輪を広げる

1.音読

本人にクラス全員の前で作文を発表してもらう。このとき、聞き手の児童たちに作文のコピーを配布する。

※プライバシーを守るため、事前に必ず本人と保護者に承諾を得ておく。「クラスのため、自分のため」と話し、説得する。先生と児童の信頼関係が重要。場合によっては、クラスの雰囲気により、作文を発表して良いタイミングかどうか先生が判断する。

※「文章はプライバシーだ。だから、前提に信頼関係がなきゃいけない。だが、『君のその強い生き方がみんなに影響を与えるから。』こう言うとほとんどの子が良いよと言ってくれる。そして、本当にクラス全体にもその子自身にも影響を与えるような授業になる。」(小美濃先生)

2.聞き手に感想を求める

○最初は班ごとに話し合い、次にクラス全体で話し合う。
段落ごと、丁寧に感想を聞き出す。

  • すごい
  • 正直によく書けている
  • 成長している
  • 勇気がある

などの感想が出てくる。

それに対し、「どこに書いてあったの?」と問いかけ、その箇所に線を引かせ発表してもらう。「よく見つけたね」と褒め、やる気を引き出す。

※このとき、「もうちょっとしゃべってみて」と児童を持ち上げるように言葉を促すのもテクニック。

3.国語的読解から道徳・生活指導、共感の輪を広げる

例えば、「不登校で学校に来られなくなってしまった子が、学校に来られるようになった体験」を綴った作文を発表したとする。

※以下『』内は作文から引用。

○国語的読解

  • 『教室にはぜんぜんいけませんでした。』の文章。

「行かない」「行けない」の違い→「行けない」だと、教室に行きたいという気持ちが伝わってくる、前向きな言葉だということがわかる。

○共感の輪

  • 『ぼくはこれからも4年3組のみんなや先生といっしょにがんばっていきたいです。』

→ただでさえがんばっているのにまだ「がんばろう」と言っているのがすごい。(発表者の子に対して)

  • 不登校の子の心を縛るのではなく、本人が自発的に、好きだから教室に戻ってきた。

教師は気持ちを翻訳してあげる。
 
以上のようにすると、困難を乗り越えて仲間の輪に加われる素晴らしさがわかる。作文を通して不登校の子の心を考え、理解が生まれる。クラスの一員として迎え入れる環境がより整う。

書き言葉に対して、「俺もわかる」「僕もわかる」「私もわかる」と結びついていく。
→クラスメートの作品を、共感して自分の中の言葉で判断する。

※このとき、板書にも工夫があるとよい。

  • 構造的板書を行う。

例えば、「不登校の子が教室に戻ってくる過程」を磁石の名札を用いて、黒板に貼る位置で表現する。最初はクラスの名札から離れた場所に貼り、授業の進行に沿って徐々にクラス全員の名札に近づけていく。

4.最後に「こんなにすばらしい授業ができたのは誰のおかげ?」と問いかけ、発表者にみんなで拍手を送る。

※こうすることで児童達が「次は私が!」という気持ちになり、好循環が生まれる。

4 まとめ

「国語の教科書や道徳の副読本とは別に、いつも一緒にいるクラスの子の作文を読みあうことで、より身近な存在として『俺もそう思ったことあるよ!』『私もその気持ち分かる!』と共感の輪が広がっていきやすい。そこには読解の要素も含まれるが、クラスの一体感を高めるといった学級経営の面でも効果を発揮する。」(小美濃先生)

5 取材を終えて&編集後記

自分と向き合って作文を書き、それを発表し考え合うことで共感の輪を広げる。これは自分自身と仲間であるクラスメートの両方を深く考え、集団として高まっていける好循環を生み出します。

取材時の小美濃先生の「作文=思考力=人格」という言葉が特に印象的でした。作文とはとてもプライベートなものですが、クラスで発表し、それが受け入れられたとき、発表者は「人格」をクラスに認められたこととなり、認める側と認められる側の双方が大きく成長するきっかけとなるのではないかと思います。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 長谷川文)

6 実践者プロフィール

小美濃威(おみのたけし)
杉並区立馬橋小学校教諭(新人育成教員)
1952年生まれ。早稲田大学法学部卒。
秋川市立東秋留小学校 練馬区立大泉南小学校 武蔵野市立千川小学校 目黒区立東山小学校 杉並区立桃井第五小学校 同区立八成小学校を経て2014年4月1日より現職。
元日本作文の会常任委員。学校図書国語教科書執筆者。

著書「かさこじぞうの授業」(桐書房)

編著「楽しい読み合いの授業」(日本標準)

共著「楽しい随筆の授業」(日本標準) 他

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