教師力をつけよう、若手教師たち! ~いじめを生まない学級づくり~

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作成者:Satoshi Arai (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、2015年6月14日に行われた第3回JEES(全国初等教育研究会)教育シンポジウム第2部の、パネルディスカッション「学級づくりを授業づくりにつなぐには」を基に作成しています。現職の教員でありながら立場の異なる、福田純子先生、盛山隆雄先生、吉川奈々先生の3名のパネリストと、進行役の堀田龍也先生の計4名により行われました。

JEES「特定非営利活動法人全国初等教育研究会」は、公教育の担い手である教師と連携し、学校教育を支え、児童により良い教育を提供することを目的とした団体です。公教育の学力実態調査や教材開発による教師のサポート、サークル活動等による全国の教師の指導レベルの向上、地域社会と学校をつなぎ、社会全体で公教育を支える仕組みの構築を実行しています。詳しくは、こちらをご覧ください。

2 パネルディスカッション概要

昨今、ベテラン教員の大量退職が進み、若い教員の大量採用が進んでいます。数少ないベテラン教員には重要な役職が回ってきて、若手の先生を指導できるあまり余裕がないという現状があります。若手の教員の増加に対しては、学校として、そして国として、どのような対策を打てるかが重要です。

若手の教員の悩みとしては、学級づくりなど授業以前でのものが多いです。参考になる情報はたくさん存在するものの、自分の悩みに合ったものを見つけるのはなかなか難しいのが現状です。実際の解決策は教員が自分で考えなければいけません。

このような状況の中で、若手教師はどのように「学級づくり」を「授業づくり」へと繋げていったらいいのか、「いじめを生まない学級づくり」のためにはどうすればいいのか、についてディスカッションが行われました。

教員3年目の吉川先生には、若手の教員の立場から「今何に力を入れていて、何に悩んでいるか」についてお話いただきました。このお話に対して、福田先生には管理職の立場から、教員歴20年を超える盛山先生には授業づくりの観点からお話を重ねていただきました。

3 吉川先生の取り組みと悩み

努力している取り組み

学級づくりの第一歩として、今年度は体育の最後の5分を使って長縄跳びに取り組んでいます。

最初は、「失敗した子にはドンマイって言うんだよ」のように声をかけても、引っかかった子に対して突っかかる子が出てきて、まさにいじめの芽のような状況が起こってしまいました。しかし、練習を重ねるごとに児童も跳べるようになり、熱中するようになりました。今では児童は声を掛け合ったり、背中を押してあげたりすることができるようになりました。児童が協力して何かをする機会を与えてあげることの効果を感じました。

学級活動の時間にもこのようなことが出来ないかと思い、クラスでうまくいっていることと、うまくいってないことを児童の間で話す時間を設けてみました。短い時間の中で児童が学級の課題を確認して解決策を話し合ういい機会になっていると思います。担任の教員が一方的に指示するよりも、児童で話し合った方が効率のよい解決につながると思っています。

今抱いている悩み

グループ学習の運営の難しさ

児童に、グループになって話し合ってごらんと言うと喜んだ様子を見せ、実際にも話し合っているように見えます。しかし、こちらが与えた型にただ当てはめているだけの形式的な話し合いになってしまっていると感じています。こちらとしては、友達の意見を聞いた上で、自分の考えを深めて、また話し合って、ということをしてほしいのですが、なかなかこちらの意図通りにいかないのが現状です。児童の中には、自分の意見を発表するのが恥ずかしくて、発表を妨害するような児童もいて、話し合いの前に人間関係作りがまず大切なのではないかと思っています。

学級のリーダーの育成での苦労

児童の中のリーダーの育成に苦労しており、担任の自分がついリーダーのように指示を出しがちだと感じます。理想としては、児童の間で声を掛け合ったりすることで、学級全体が動くようになればいいと思うのですが、まだまだ課題があります。学級委員の子が2人いてやる気もあるのですが、2人をどう導けばいいか、悩んでいるのが現状です。

児童の細かい気持ちの察知が課題

ベテランの教員のようにトラブルが起こりそうな空気を察知することや、そこで有効な対策を打つことはなかなか難しく、トラブルが生じてから児童の気持ちに気づくことも多いです。自分が毎日の授業に必死で、児童の細かい気持ちや行動を見逃しがちであると反省しています。児童や保護者とよりコミュニケーションをとることが必要と考えています。

そこで、今年度から、児童の学校での頑張りを保護者に伝える手段として、その日頑張ったことを一筆箋に書き、連絡帳に貼るという活動を始めました。毎日最低1人、だいたい数人ずつやっているのですが、自分自身がこれによって児童の変化、よいところにより気を配るようになりました。保護者に対して書いているものですが、児童自身もこれを見るので、児童を褒める良い機会にもなっています。また、一筆箋をきっかけに保護者とのやり取りが続くこともあり、保護者との情報交換の場にもなっていると思います。

4 福田先生から若手教師へのメッセージ

相談相手を見つけよう

新人の教師がベテランのように授業がうまく出来ないのは当然です。新任1、2年目の教師の7割が、授業がうまくいかないと悩んでいるというデータもあります。

問題は失敗をすることではなく、失敗をしても立ち直るセーフティーネットを持っているかということです。半分以上の若手教師が相談できる先輩、指導者との出会いによって成長できたというデータもあります。

昔から一般的に行われている授業研究、同僚性を重視しお互いに介入して高め合おうという体制は、日本独自の文化で海外からも評価されています。学校の中だけでなく、学校の外での研究や研修でも自分に合う先輩や仲間を見つけましょう。どんな人でも抱えるであろう行き詰まりや悩みを克服するのにとても有効な手段です。

思い込みから離れよう~柔軟に、俯瞰して~

直面している課題の解決には複眼的な視点を持ち、より大きな枠組みを意識して取り組むといいです。全体の中での今の位置づけを意識することで見えてくるものも多いです。これは学級づくり、授業づくりにもつながります。

複眼的な視点というのは、対極にあることの両面をみる意識を持つ、例えば部分と全体を見る努力をするということです。一つの授業を全体計画からの視点でとらえる、一つの分掌を全体の組織の視点からとらえる、一つの行事を年間行事の中からの視点でとらえる、といったことをすることで、課題の解決に近づくことが出来ます。

学級づくり

学級経営とは、学級を単位とする教育活動の計画、実施、評価に伴う学級担任が行うすべての活動です。(学級経営計画、学習指導、生活指導、進路指導、学級事務、保護者との連携、etc) 様々な要素がありますが、この中で自分の強み、弱みである分野は何かということを考えてみるといいでしょう。

育てたい児童像を明確に!

まず、児童理解について。児童理解は学級経営の基礎です。多くの児童と出会い、経験を重ねていく中で直感が磨かれていきます。そして、児童と深く真剣に向き合うほどその精度は上がっていきます。しかし、例えベテラン教師でも、研究を怠っていると狭い範囲の中での類型化による決めつけに陥って、児童理解とは程遠くなってしまうこともあります。様々な実践を試み、試行を重ねて、具体的な取り組みを抽象化し、それをまた具体的な事象に当てはめていく、このように考察しながら児童理解の勘を鍛えていっていただきたいと思います。そのためには、児童の実態を見ようとするときに、自分なりの視点、考え、願いを持って臨むことが大切です。

次は集団育成について。話し合いをしなさいというと、自分の言いたいことに集中してしまい、「意見の並列」のまま終わってしまうケースが見られます。話し合いではなく「聴き合い」を育てる意識を持ち、人の意見への付け足しや感想を伝え合う所から始めましょう。また、先生の立場は児童と児童とをつなぐコーディネーターだという意識を持つことで、授業が進めやすくなるはずです。そして、児童が自分で考えを発信しようとする必然性を持つ仕掛けづくりをすることが大切です。加えて、児童同士で目標を共有させ、組織の一員としての責任を持たせていくことも重要です。

道徳教育

道徳教育は授業の中だけではなく、すべての教育活動を通じてねらいを持って行われるものであるため、学級経営に大きく関わります。道徳が教科化された際、いじめの防止が大きく打ち出されました。現象面での解決に直結するのは、生活指導や学級会です。しかし、道徳は一つひとつの授業実践を着実に積み重ねることで、児童の内面の判断力が育ち、必ずいじめが起きにくいクラスにつながります。友達と話し合い、時には葛藤のなかで意思決定をする経験を積むことで、人間としての道徳性が高まるからです。児童が学んだことを自分自身の体験や心に照らし合わせて振り返り、自分のものにしていってこそ意味があります。

道徳の時間を重ねていくことは、学級の歴史づくりです。学級で共有する心の成長の歴史を大切にしましょう。

授業づくり

二つの面から捉える

  • 教師側と児童側

教えたのに教わっていない、という状況が起きがちです。問題点を児童のせいにせずに、出来ない要因を分析して、具体的に対策を実行していきましょう。

  • 習得と応用

いくら自由に意見を言おうとしても、知らないもの、体験したことがないものについての意見は出てきません。一部の児童の能力に頼るのではなく、教えるべきことを効率よく教えることにより、追及や創造の時間を確保することが大切です。

  • 個別指導と一斉指導

授業は常に個人指導と集団指導の兼ね合いです。どの場面で、何を、誰に、どの教材をつかったら有効か、しっかり考えましょう。児童の作業時間の個人差、能力の個人差をどう埋めるかも考える必要があります。

  • 不易と流行

次の時代を見通した新しい教育方法はたくさんあり、私たち教師はそれを共有して指導に生かします。一方でベテランが若手に受け継いでいくべき指導の技もあります。例えば、ICT教育が進んだ未来でも黒板が持つ役割、教師の役割は残る。それは何かを考えることで、流行の中でも変わらないものを見つけられるかもしれません。

ICTによる授業改善の取り組み

ベテランの教師ほど、ICTの機能がどのような点で有効で、どういう場合に使うのかを、自分の授業の中に意図をもって位置づける力があります。

効率の面では、大きく見せることができ、CGや動画をクラス全体に見せることが出来ます。習得の面では、発達段階やつまづき箇所に応じた個別学習に有効です。表現の面では、児童が説明をしたり、コミュニケーションしたりする手助けになります。このような利点を意図的に位置づけます。

アクティブラーニングといわれるような、主体的、協働的に課題解決に取り組むような時間を確保するためにも、ICTの有効性を生かすことは時代の必然です。

まとめ

私たち教師の仕事は児童を育てることです。学級づくりなくしてよい授業はありません。最初は人まねでいいのです。そして、試行錯誤を重ねていく中で、自分に合ったやり方を見つけていってください。よい授業を重ねることで、学級が育ち、児童も伸びていきます。そして、常に教師になろうと志した初心に立ち戻ることを忘れずに、学び続けていってください。

5 盛山先生の授業実践

授業の中での学級づくり

私の授業では学級の全員がある一つのことを目標にして協力して向かっていくということを行っています。1年生のときは登り棒で全員上まで行けるようになる、2年生のときは長縄跳びで全員で連続千回という目標を立てました。3年生のときには、長縄跳び2千回連続を目指したいと児童が言ってくれたので、それを目標にしました。このような取り組みを行っていく際、いじめの芽にもなりかねないようなトラブルが起きることがあります。しかし、そこで起こる問題をみんなで話し合ってクリアしていくことで、よりよい学級が出来ていきます。このプロセスを経ていく中で、学級でいじめのようなことが起こりにくくなっていきます。

授業の中での具体的な実践

算数の授業では、児童の誤答はつきものです。誤答に対して他の児童にどう向き合わせるかが学級づくりにおいて大事になってきます。間違いを指摘する場面から、どうしてこのような間違いをしてしまったのか、どうしたら正答にできるかを考える方にすぐに頭を切り替えるよう指導しています。児童が実際に考えたプロセスを他の児童全員に辿らせ、理解させることは、個々の児童の学びにも学級づくりにも効果が高い指導法といえます。

クラスの約束事

クラス全体の目標の設定

私が今受け持っているクラスでは、児童全員が一人ひとりテーマを決めて調べ学習を行い、最終的に保護者の前で発表するという活動を行っています。

仲間を大切にする、認める、褒めあう

これについては教師が常にアンテナを張っている必要があります。仲間のためにやったことで、結果的に児童が起こしてしまったトラブルを頭ごなしに叱らない。また、男女仲良くしている児童を冷やかすような児童の言動はきつく叱り、男女が仲のいいクラス目指す。このようなことを実践しています。児童はきっと、自分から言うのは恥ずかしいから、男女が仲良く話してね、ということを言ってほしいと思っているのではないでしょうか。これは学級作りの中でうまくいっていることだと思います、

給食掃除で学校ナンバーワンを目指す

私のクラスでは「もくもく給食、もくもく掃除」と呼んでいます。児童が名付けてくれました。もくもくというのは黙ってやるということで、給食というのは、準備と後片付けのことです。これを練習を重ねて、徹底的にきれいにできるようにします。この過程で、結束力やチームワークが非常に鍛えられます。

言葉の封印

これは、クラス替えの後の4年生のクラスの話です。クラスで交わされる言葉が非常に悪いクラスで、ギスギスしていました。2か月半ほど放っておいたのですが、そのあと児童に聞いたら、友達の言葉で傷ついたことのある子が児童の半分以上でした。そこで、言われて嫌だった言葉をすべてカードに書かせて、そのカードを児童の前で一枚一枚折って、大きな封筒の中に入れていきました。その封筒へ児童に「ふう印」と書かせた上で、しばらく教室のなかに飾っておきました。この後、悪い言葉をピタッと聞かなくなりました。児童は、言葉をばっと発するときに、それほど気持ちとしてはその言葉の通り思っているわけではありません。しかし、一度言葉を発してしまうと、その言葉に行動や雰囲気が引っ張られてしまいます。だから、言葉に気を付けるということはとても大事だと思います。

褒めほめタイム

これは、その日の日直2人のいいところ、また4月から変わったところをひたすらクラスのほかの児童が褒める時間を作るということです。これには児童がとても喜んでくれています。

全員を見る、全員を表現する。

これは私の課題です。私が朝教卓のところへ行きますと、15人くらいの児童がワイワイといろんな話をしてくれます。そういう時に見るのは、私のところに来ていない児童です。その児童は休み時間にどこにいるかを探して、声をかけに行くということを常にやっています。

表現というのは授業の中での話です。私は、授業中にどれだけ多くの児童に表現させることが出来るかを意識しながら授業を行っています。なるべく児童の考えを心の内に秘めさせず、素直に表現させてあげられるように心がけています。

6 最後に先生方から一言

吉川先生より

これまで、問題や失敗が起こることを恐れていたということを感じました。しかし、周囲に様々なことを教えてくださるベテランの先生方がいらっしゃることを考えると、それが若手の強みであるとも思います。だからこそ、問題や失敗を恐れずに取り組んでいければいいなと思いました。

福田先生より

大切なのは「あきらめない」ということです。私もかつては、暗いトンネルの中を一人で歩いているように感じる時が必ずありました。しかし、それを通り過ぎてみると、暗いトンネルだと思っていたところには、傍らにたくさんの仲間や、エールを送ってくださる先生方いたことに気づきます。投げかけても投げかけても、これだけやっても児童は変わらないのかと思ってしまいがちですが、投げかけ続けるのが自分の仕事だと割り切ってからは楽になりました。投げかけ続けた先には、必ず児童の中に何かしらの変化が起こってくれると信じることが教師の仕事だと思います。

盛山先生より 

私はもうベテランですが、日々問題は起こります。それを児童と一緒に丁寧にひも解いていく作業をし、それを楽しむぐらいの気持ちで児童と付き合っていくしかないと思います。もうひとつは、児童がこちらに話しやすいような態度をとっていくことです。もちろん毅然とした態度を取るときは取るのですが、なんでも児童が話してくれるような雰囲気をつ作りながら学級を作っていった方が、より問題をスムーズに解決出来ることが多いと思います。

7 登壇者紹介

 
福田純子校長 (練馬区立光が丘春の風小学校)
盛山隆雄先生 (筑波大学附属小学校)
吉川奈々先生 (前橋市立細井小学校)
堀田龍也先生 (JEES 理事・東北大学大学院 教授)
   
登壇者の詳細情報やイベント概要は こちら

8 編集後記

教師の方々が普段の学級づくりにおいて、どのような悩みを抱えているのか。それに対して、ベテランの教師はどのような解決策により対処しているのか。このようなことを学べる貴重なシンポジウムだったと思います。教師が抱える問題というのは、機械でなく一人ひとり異なる児童を相手にしているため、多種多様なものです。だからこそ、ベテランの教師が今まで直面してきた様々な問題とそれに対する多様な解決へのアプローチを知ることが出来るのは、大変有益だと感じました。若手教師たちが悩みを抱えているときに、学校の中外関わりなく様々な教師と悩みやそれに対する取り組みを共有できれば、相当な負担の軽減につながると思います。このようなシンポジウムや勉強会がもっと増加し、広まっていくといいですね。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 新井 理志)

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