社会科「思考・判断・表現」の評価の工夫

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評価しづらい観点

社会科の評価の観点の一つに「思考・判断・表現」があります。ペーパーテストでは図りにくい力なので、この観点を評価するのに苦心している教師も多いと思います。ノートや授業中の発言で「思考」を図ろうとしても、けっこう評価しづらいというのが実情ではないでしょうか。
私は社会の時間には、「疑問を持つこと」「推測をすること」を大事に考えています。そしてどのように疑問を持つことができたか、推測をすることができたかを「思考」の評価のひとつにすることが多いです。

姉妹記事で

理科「思考・表現」の評価の工夫

もご参照ください。

疑問を持つ

見学に行って、イラストを見て、文章を読んで、疑問を持つことは大切です。学習の過程で、鋭い「ハテナ」であっても、ゆるい「ハテナ」であっても、「問い」を立てることができるのは、思考力のひとつといえるでしょう。
3~4年生では、「図書館・スーパー・消防署・・・」と、たくさんの施設を見学しに行くと思います。その折には、分かったことに加えて、新たに湧き出てくる疑問をいくつか、書きとどめさせておきましょう。
ざっくりと教科書で「○ページから○ページまでのところで、疑問に思うことを5つ書きなさい。」と考えさせてみるのもよいと思います。

◆図書館にあんなにたくさん本を置いてただで読めるようにしていると、本屋さんからは文句が出ないのかな?
◆スーパーは冷蔵庫や冷凍庫なんかに電気代がかかると思うけど、節電の工夫はしているの?
◆水をかけすぎたことでコンピュータなどの機械が台無しになって、消防士さんが弁償させられるようなことはないの?
◆(太平洋ベルトの分布を見て)どうして高知県は太平洋に面しているのに工業が盛んでないのかな?
◆(大名行列のイラストを見て)真冬や真夏の旅はきついと思うけど、大名に出発する季節を選ぶ権利はあったのかな?

などと、ちょっとひねった疑問が持てれば二重丸ですね。
イラストや写真を見て疑問を出させる時は、たくさんの疑問が湧き出てくるイラストと、いまひとつ何も思いつかないイラストがありますので、いい素材を選びましょう。なんでもかんでも「疑問を持て」と言われても、子供も困ってしまいますので、何について疑問を持たせるかをよく吟味することが必要です。

推測させる

また、推測させることも、思考力を育む上で大事です。

【明治維新の折、どうして徳川慶喜は戦う道を選ばなかったのか】

こんな問いに対して、子供たちが詳しい事情を知っているわけではありません。本当のところ、これは大人にとっても難しい問いだと思います。一つだけ答を考えさせるのではなく、「間違えていてもいいからたくさんの答を考えてみよう」「答がだいたいわかっている人も、いろいろなパターンの答をかんがえてみてください」と、できるだけたくさんの答を考えさせてみます。

◆新政府が強そうなので負けるのが分かっていて戦うのをやめた。
◆戦おうと思ったが、お金がなかった。
◆部下から戦うのをやめろと言われた。
◆いつまでも徳川家が将軍として権力を握っていることに疲れた。
◆江戸幕府はこの先長続きしないだろうと予想していた。
◆平和主義者だった。
◆臆病だった。
◆占いをして、「戦ったら負ける」と、出た。
◆江戸時代に戦がなかったので戦争の仕方を忘れていた。
◆西郷隆盛から手紙をもらって説得された。
◆もともと、天皇陛下を尊敬していて、権力を返そうと思っていた。
◆ペリーに脅されていた。
◆奥さんから戦いはやめてほしいと言われた。
◆命だけは助けてほしいと、新政府側と取引をした。

などなど、珍解答も含めて、たくさんの答が考えられます。正解を求められているわけではないので気楽に、発想力豊かな答えが出てきていいと思います。さて、どれが正しくてどれが間違いなのか、見当がつきますでしょうか。それぞれの推測の正誤について論じていると、たいへんな時間が必要になってしまいます。ですので、
「おもしろい答えをよく考えられたね。例えば、『×××』なんかは、少し当たっていて『慶喜は△△△だったそうです(簡単な逸話を披露)』。でも、一つ一つに対して答えているとものすごい時間がかかります。中学校や高校でも、この理由のいくつかは教えてもらうことになると思います。時間がある人は、ぜひ、自分で本などを読んで調べてください。」
と、逃げておきましょう。

疑問にしても、推測にしても、時にはざっと良いものを集めて、プリントにするなどして、クラスで共有するといいですね。
「○○さんは、徳川慶喜が、『将軍として権力を握っていることに疲れた』と推理していますが、そんな気持ちってわかるかな?」
などとピックアップして、みんなでさらに考えてみる時間を取るのも面白いです。疑問をとく過程で、慶喜が多くの子孫を残し、大正2年まで生きながらえた事実(平家が源頼朝に滅ぼされたのとずいぶん違った結末ですね)に行き当たると、けっこう驚くものがあると思います。

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