子どもの学びと育ちを看取るにはどうするか(岡田広示先生)

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この記事は、2015年4月28日に行われた「MYKOHAN学校教育セミナー ON二人会」をもとに作っております。この講演会は、講師が本音で伝えるということが趣旨であることをご了承ください。

目次

1 教育評価とは

教育評価と聞いて、まず何を思い浮かべますか?絶対評価、相対評価、成績表…いろいろあると思いますが、今回は、子どもの育ちすべてを測るものとして定義します。

2 教育の目的

教育の目的は昭和22年制定の教育基本法によると、「人格の完成」として定義されています。文部科学省の出している「教育基本法の解説」では、以下のように述べられています。

真、善、美の価値に関する科学的能力、道徳的能力、芸術的能力などの発展完成。人間の諸特性、諸能力をただ自然のままに伸ばすことではなく、普遍的な規準によって、そのあるべき姿にまでもちきたすことでなければならない

[*1] 田中二郎・辻田力監修「教育基本法の解説」(国立書院, 1947)

3 教育活動の流れ

教育の一連の流れを、一度考えてみましょう。

まず、こうなって欲しい、これを身につけて欲しい、という目標を定めます。目標が決まったら、目標が決まったら、それがそのまま評価になります。それに沿って内容が決まり、方法を決めます。

目標と評価は表裏一体です。目標をもとにして、規準をつくります。基準がなければ、教育活動は目盛りの無い定規のようになってしまい、それでは意味がありません。

またここで評価とは、一般的には「教科学習の進捗状況を確認し、調整する機能」だと言われていますが、私は「子どもの学びと育ちを看取ることだ」と意識しています。

4 保育と教育の違い

保育園からの参加されている方が多いので、少しだけ脱線して、保育と教育の評価の違いを述べてみます。

教育は疑う余地が無いと思いますが、やはり達成目標が主です。それに対して保育は、方向目標です。学習対象に子どもの意識、意欲が向いていくようにします。

どちらが良い、悪いという話ではないのですが、ここを意識しておくと、小学校に入ったときに戸惑う子どもたちの理解につながると思います。

5 学びと育ちの看取り方

さて、子どもの育ちすべてを看取るにはどうすれば良いか、という話にうつります。

色眼鏡を取り除く

まずは、色眼鏡を取り除いてください。色眼鏡とは、バイアス、偏見、思い込みのことなどを指します。

自分で看る前に、人の評判によってできてしまった色眼鏡を取ってからで無いと、その子すべてを看ることには繋がっていきません。

行動観察

その上で、私が大切にしているのは、行動観察です。
「知識・理解」、「技能」の評価と違って、「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の評価は、単純なペーパーテストなどで測ることが難しいです。

そのときに参考にするのは、ノートであったり、ワークシートの記述であったり、ポートフォリオであったりします。

でも、それらを看ることが、行動観察の本質ではありません。

やはり子どもすべてを看るので、それらに書いてあることもそうですが、日々の行動にも目を向けます。視線仕草発言内容日常会話もとても参考になります。そして、とにかく毎日子どものことを看続けることが大切です。

付箋の利用

具体的な方法論は人によって様々かもしれませんが、私が推奨しているのは、休み時間も利用しながら、普通のサイズ(7.5cm × 7.5cm)の付箋に、とにかく事実だけを毎日書いていくことです。悪いところは嫌でも気になるので、良いところを見るように意識しています。書いたら、最後にはそれをその子用のノートに貼っていき、日々の変化を記録していきます。

空欄の座席表の利用

授業中であれば、空欄の座席表を教壇の上に用意しておき、その授業で子どもはどうだったかを、子ども1人に対して1時間1観点で書いていくことが役立ちます。欲張りすぎないことで、続けやすくなります。日々の変化を記録したいので、その日どうだったかをすべて書く必要はありません。

このようなことを毎日しておくとあとで見返したときに、その子の育ちが分かるようになってきます。

そして、日々の経験から、鑑識眼を養っていく。子どもすべてを看る力というのは、すぐにできることではありませんが、磨き続けていくことがとても大切です。

6 学びの評価も

「知識・理解」、「技能」の評価にも触れておきます。普通、1〜3ヶ月毎に把持テストを、そして学期毎に総括テストをすることが一般的だと思いますが、そのテストは業者が作ったものを使っている人も多いと思います。

ここで、私が推奨するのは、統括テストを自分の手でつくってみることです。単元に入る前にテストを作るのです。そのテストは、その単元のポイントを網羅するようにします。それはつまり教えるポイントを把握することでもあり、テストを自分でつくることは、授業が良くなることにもつながります。

7 終わりに

子どもを「みる」という漢字には、様々な字があります。

見る、観る、視る、診る、看る・・・

その中で私は、敢えて「看る」という漢字を使っています。英語に直すと、careとなりますね。「子ども」を「みる」とは、教育カウンセリングであり、「確認」「調整」「価値付け」「予防」「開発」など、さまざまな要素が必要です。

子ども一人ひとりに向き合い、その子の学びと育ちすべてを看取っていく。そのような姿勢が教師には求められていると思います。

8 実践者プロフィール

岡田広示(おかだこうじ)先生。兵庫県公立小学校教諭。学校教育教職修士。教育評価を中心に「子ども理解」を軸として実践をしている。

岡田広示先生の著書に、「観点別でよく分かる! 小学校各教科「評価・評定」のすべて (はじめての学級担任)」がある

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