まもなく学習指導要領が改訂に!これからを担う若い先生に知っておいてほしいこと

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作成者:Mayu Kanda (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、2017年6月11日に行われた第5回JEES(全国初等教育研究会)教育シンポジウムの内容を基に作成しています。今回のシンポジウムは、学習指導要領改訂を受け、求められている学校像・教師像についての無藤先生による基調講演と、新保元康先生、皆川寛先生、藤川大祐先生、盛山隆雄先生の4名のパネリストによる「教師力」育成に向けたパネルディスカッションの2部によって構成されています。

JEES「特定非営利活動法人全国初等教育研究会」は、公教育の担い手である教師と連携し、学校教育を支え、子どもたちにより良い教育を提供することを目的とした団体です。公教育の学力実態調査や教材開発による教師のサポート、サークル活動等による全国の教師の指導レベルの向上、地域社会と学校をつなぎ、社会全体で公教育を支える仕組みの構築を実行しています。詳しくはこちらをご覧ください。http://jees.jp/

2 基調講演

白梅学園大学大学院特任教授の無藤隆先生が、「学習指導要領の改訂-何を目指すか-」というテーマでお話しされました。

まず、学校の現状として
・教員の労働時間が長い
・教育内容の要望が増えている
ということが挙げられます。また、学校は多くの平凡な人をしっかりとした人材に育てる場所であり、少数の天才を育てる場所ではありません。

今後起こりうる未知の事態に対応するため、子どもたちが身に付けるべき資質・能力の3つの柱は
1. 知識・技能
2. 思考力・判断力・表現力
3. 学びに向かう力・人間性
です。

①知識・技能に関しては、従来は知識ひとつひとつがバラバラのものとして教えられていましたが、今後はその知識をつないで構造化し、問題解決に使えるようにします。

②思考力・判断力・人間力については、予測困難な将来を生きる児童・生徒が未知の課題に対応するため、学びを振り返り見通し、自分の知識と新たな情報を統合し、問題解決に向けていく力です。

③学びに向かう力、人間性とは、児童・生徒自身が今自分の置かれた状況を俯瞰して、意欲と意志を持って、自分の将来を切り開いていく力です。

そして、次期学習指導要領で重視される教育実践方法の改善の視点として、主体的・対話的で深い学びがあり、見通しを立てて振り返り、考えを表現し共有して対話し、教科などの考え方の本質に迫る授業を少しでも増やすように改善していきます。

3 パネルディスカッション概要

学習指導要領の改訂が決まり、新たな学校像・教師像が問われるようになりました。これを受け、若い教師は自身の指導力向上に加え、学習指導要領改訂への対応も必要とされています。

今回のパネルディスカッションは、立場の異なる、新保元康先生皆川寛先生藤川大祐先生盛山隆雄先生の4名のパネリストと、進行役の堀田龍也先生の5名で行われました。学習指導要領の改訂に向けて、これからを担う若い教師の指導力向上のため、現在行われている実践例が紹介されました。

4 若い教師のために実践されている取り組み

 新保先生の取り組み —小学校校長の立場から—

校長として、若手教師を「守り、鍛える」ことを意識しています。

まず、全校で一つの基準を作って若手にとってわかりやすい基本モデルを提示し、若手を「守る」ということです。例えば、授業前の机に出しておくもののルールを表にまとめたり、ノートの書き方や使用するドリル教材を統一したり、教師がすぐにICTを利用できるように常設ブースを設けました。さらに、全学級児童の情報共有を毎朝行っています。困っている児童の様子を担任以外も共有することで、学級をサポートしています。

また、授業力を「鍛える」ために15分程の研修をよく行っています。全員ではなくても少人数で手短に行うことで、会議にかける時間を短縮しています。
 
日本の学校はあらゆる問題を引き受け、教師は日々奮闘しています。若い教師の中には、真面目に取り組むあまり、悩んで病気離職する方もいます。学校全体の土台を作ることによって、教師がやりやすい環境を作っています。

 皆川先生の取り組み —研修センター指導主事の立場から—

教師が、土台を固め、研修などを通じて授業力・生徒指導力などを徐々に高められるよう研修を設計しています。まず教師が一番気にしていると思われる教科指導力についてです。指導主事が模擬授業を行って、手本を示しています。初任者にとって授業のポイントである授業進行のコツを知ることが大事です。

また、初任者同士のネットワークを築くことも重要です。研修中は、同期の仲間同士でディスカッションして悩みを共有する様子が見られます。

センターでの研修で得られた情報には、明日からすぐに使えるものとそうでないものとがあります。すぐに活用できなくても、多くを蓄積して引き出しを増やすことが大事です。
 

 藤川先生の取り組み —大学教授の立場から—

私が行っている取り組みについて、3つの事例をご紹介します。

1つ目は、西千葉子ども起業塾という大学生が授業の一環として運営しているプログラムです。子ども達が企業相手に取引をします。学生達は、保護者との連絡をはじめ、企業の方との折衝、広報活動など様々なことを行います。

2つ目はICTについてです。グリー株式会社の方に毎週来て頂いたり、学生がグリー本社にお邪魔して、エンジニアの方々と協力してアプリを作成したりしています。最新のテクノロジーを使った今後の社会の動向が不透明な中、学生にとってICTに慣れるだけでは不十分であり、実際にICTを用いて働いている方と一緒に活動する経験が必要です。

3つ目は、企業教育研究会というNPOの運営です。大学生が企業の方々と協力して教材を作り、学校で出前授業などを行います。大学生は、この活動を通じて学校の環境にも慣れ、授業力もつけ、企業の取り組みも知ることができます。

これらの活動を全国的に行うのは難しいでしょうが、次期学習指導要領の内容を実現するには、大学時代からこうした活動をする必要があると思います。

 盛山先生の取り組み —小学校教員の立場から—

キーワードは2つ、「任せる」と「関わる」です。筑波大学附属小(以下、筑波小)では、授業作成も学級経営も学校行事も、基本的にその担当の教員に「任せる」というスタンスを取っています。その際、担当教員は先輩教員に聞く、前例を調べるなど、プロセスは自由です。しかし、結果に関しては、教員間で良いところは褒め、修正点はきちんと批判するなど、多くの教員が「関わる」ようにしています。

自己責任を徹底することが、教員が学び、変容し続ける態度を保つことに繋がると思います。子どもに成長を求めるなら、教員も同様に互いの成長のために厳しく見合い、高め合う。これが筑波小の取り組みです。

5 若い教師へのメッセージ

 新保先生 —当たり前のことを当たり前に、大きな物差しを持つ—

教師として当たり前のことなのですが、「あいさつをする」「健康第一」「遅刻をしない」といった基礎・基本を徹底して実践できるようにしていきましょう。

当たり前のことではありますが、中教審の答申や学習指導要領を読み込んだり、教育委員会の研修をきちんと受けたりすることも大切です。

その上で、若い教師の方々に伝えたいことは、「大きな物差しを持つ」ということです。悩みは次々と出てきますが、小さな物差しでは測りきれません。大きな物差しを持っていれば、これくらいだなと解釈でき、対応できます。大きな物差しを持つには、本や新聞、雑誌などを乱読していくことがお勧めです。

それから、たくさんの人と出会うことが大切です。私は、児童の通学時間に交通安全指導をしてくださっている方などと積極的にお話するようにしています。様々な人と知り合えば、いろいろな子どもの持つ背景も分かってきます。これは、若い教師には見えにくい部分だと思います。

 皆川先生 —共有・発信・改善—

研修の良さを示すキーワードをある小学校教諭の初任者研修の感想文から抜粋すると、「共有」「出会う」「努力」「発信」「改善」という言葉が挙げられます。研修を通して人とつながり、お互いの実践やスキルを共有し、得られたフィードバックをもとに改善をしていきます。これらの積み重ねで、確実に力がついていくと考えられます。そしてこれらの努力を続けるということが何よりも大事だと思います。積み重ねるのは大変ですが、何年か経てば、大きな努力の結果として、目に見える形で現れてきます。東京都の教職員研修センターでも、「基礎」「充実」「発展」という流れの中で研修が着実に設計されています。これらの研修を、ぜひ前向きに受講していただくと、自分の実践を共有し改善するヒントが多くあると思います。

「謙虚に」「真摯に」「着実に」というのが常日頃、私が感じていることです。学び続けるためにはこれらの姿勢が欠かせないと思います。慣れるとつい横柄になったり、妥協が出てくるものです。しかし、学校は組織として高めていく必要がありますから、管理職であろうとなかろうと、お互いに学び合うという姿勢を日々継続することを大切にしたいと思います。

 藤川先生 —お互いに助け合える雰囲気づくりを—

最近、発達障害やLGBTの理解が進んでいます。しかし、教職課程を取る学生は今まで常識だと思われていた多数派の人の発想で動いているため、少数派の人たちを傷つけてしまう場合があります。いろいろな人がかかわりながら成長できる理想のコミュニティのイメージが「ない」ので、そのイメージをどう作るかというのが学生や若い教師の課題です

また、「ストレスマネジメント」が大事になってきています。みんながなるべくストレスを小さくしながら、問題を解決していく。何か問題を解決するときには、小さくできる問題は小さくしておく必要があります。「報告・連絡・相談」といった、「できることは普通にやる」ということを、学生時代に習慣づけておく必要があります。

また、出前授業のプログラムや講座などを作っています。話し合い活動に使える教材も沢山あります。今までの枠組みではなく、いろいろな子どもが参加して、意見を言い合うような授業を、ぜひやってみてほしいなと思います。

研修は、ただ話だけ聞いて終わりではなくて、人脈を作る機会です。講師役の先生に挨拶をし、名刺交換やメールを送るなどして、関係をつくっておき、何かあれば連絡できるようにしておく。人脈をどれだけ持っているかが重要になります。

最後に、教師は自分が見えていることはわずかなので、地域の方々を含めて、お互いに助け合う必要があります。そのため、みんなで助け合える雰囲気を作り出せる若い教師は大事です。若い教師だからこそできることがあるはずなので、明日から学校のコミュニティを良い雰囲気にするために、自分が出来ることは何かを考えていけるといいのかなと思います。

 盛山先生 —常に原点に立ち戻る—

皆さんは授業を楽しんでいるでしょうか。子どもの言葉を大切にし、子どもの活動が多い授業には、必ず子どもの笑顔が生まれます。そのような授業を作って楽しんでいきたいというのが、私たちの切なる願いです。教師が、子どもの素直さを可愛いなと思ってあげて、子どもから学ぶ姿勢を持つことがとても大切だと思っています。

そのために心がけているのは、常に原点に立ち戻るということです。先日、山形県酒田市から10人ほどの先生方や教育委員会の方々が視察にいらっしゃいました。その際、副校長先生に算数の授業をお見せしたところ、「今日の授業は、できる子ばかりを使っていて、あの場面であの子を当てるのはおかしい」と、かなり具体的に指摘されました。授業をたくさん公開していますが、真剣に指摘してくれる先輩や同僚がいるので、私自身が日々、修正・改善でき、大変ありがたく思っています。

また、昨日は私のクラスだけの行事で、親子交流SS大会(スポーツ・スピーチ大会)を行いました。クラスの子どもたちと親御さんを集めて、一緒にスポーツを楽しんだり、子どもたち一人ひとりがスピーチを行いました。そのような企画を同僚の先生や保護者に説明し、校長先生・副校長先生にも文書で説明して、丁寧なプロセスを踏んで計画し実行しました。そういった企画を認めていただける雰囲気があるのも、大変ありがたい環境です。

 堀田先生(まとめ)

4人の先生方のメッセージをまとめると、「世の中を知る」「いろいろなつながりを持つ」「世の中の多様さを学生のうちから経験する」「当たり前のことを当たり前に実行する」「厳しい指摘をしてくれる人とのつながりも持って、自分自身を高めていく」ということでした。

結局は、誰かとつながって、その人の協力をいただきながら、自分自身を改善していくということに帰着するのですね。そのためにも、日ごろから、どうすれば周りの人とのつながりを持てるのかを考えていく必要があります。自分マネジメントだと思います。若い先生が今抱えている課題をどう解決するか、悩んでいるかもしれませんが、ずっと教師をやっていくためには、自分をどんどん成長させていく仕組みを自分の周りに作ることが大切になると思いました。

6 編集後記

本年3月に学習指導要領が改訂・告示され、「主体的・対話的で深い学び」について多くの教員や教育関係者が注目しています。今回のシンポジウムでは立場の異なる様々な先生方から意見を伺うことで、次期学習指導要領が目指しているもの、現在の学校教育の現状や、今後どんな教師が求められているのか、そのために何をすべきなのかといったことについて知ることができました。
私が感じたことは、「これをやれば授業運営がすべてうまくいく」といったようなマニュアルがあるわけではないということです。求められている教師像に近づくために、何を目指して、何を教室で提供すべきなのかを、それぞれが考えていかなければならないのだと思います。方法論だけを求めて、日々の授業を何とか終えることばかりに目がいってしまっては、教師としての充実感を味わうことができないと思います。大切なことは、教師になってもなお「謙虚に、真摯に」学び続ける姿勢であると感じました。
最後になりましたが、この記事がこれからの教育に関わる先生方にとって有意義な記事となれば幸いです。

(文責:EDUPEDIA編集部 谷口綾菜)

7 登壇者紹介

・堀田 龍也先生 (JEES 理事長/東北大学大学院 教授)
・新保 元康先生 (札幌市立屯田小学校 校長)
・皆川 寛先生 (宮城県総合教育センター 研究研修部 主幹 (指導主事))
・藤川 大祐先生(JEES 理事/千葉大学教育学部 教授)
・盛山 隆雄先生(JEES 理事/筑波大学附属小学校 教諭)
・無藤 隆先生 (白梅学園大学大学院 特任教授)

登壇者の詳細情報やイベント概要はこちら
http://jees.jp/activity/detail/2017/0611.html

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