叱る力を高めよう(第1回EDUPEDIA SCHOOL 吉田忍先生)

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目次

1 はじめに

本記事は、2018年2月17日に開催された第1回EDUPEDIA SCHOOLの内容を記事化したものです。

2 EDUPEDIA SCHOOLとは

EDUPEDIA SCHOOLとは、当サイトに掲載されている実践案を参加者の皆様に直接提供するための場として、EDUPEDIAスタッフが運営しているセミナーです。取材先の先生方の講演やワークショップ等を通じて、教育実践ノウハウを参加者のみなさまに提供することを目的としています。

記念すべき第1回は、コーチングに詳しい吉田忍先生(NPO法人いきはぐ)を講師にお招きし、『叱る力を高めよう』というテーマでご講演頂きました。プログラム中は参加者同士で話し合う機会も多く、非常に盛り上がったセミナーとなりました。参加者には現職教員をはじめ、教員志望の学生、保育士、会社員など様々な業種の方がいらっしゃいました。吉田先生はご講演の中で、「叱る」とはどういうことか、また叱るときのポイントに加えて、「叱る」とは反対の「ほめる」についてもお話くださいました。

3 第1回EDUPEDIA SCHOOL~叱る力を高めよう~

※編集の都合上、実際のご講演内容と順序を入れ替えている部分があります。

「ほめる」と「叱る」はワンセット

吉田先生:今回のテーマは『叱る力を高めよう』ですが、まずは「叱る」の反対の「ほめる」について考えてみましょう。私は、「叱る」と「ほめる」はワンセットになっているのではないかと思っています。そもそも「ほめる」とはどういうことでしょうか?

「ほめる」とは、前進への促し、エネルギーチャージのことです。つまり、ほめられた人は何か一歩前に前進した感覚を持つことになります。もしその人が前進した感覚を持てなかったとすれば、自分ではほめたつもりであってもそれはほめていなかったということになります。

では、それに対して「叱る」とはどういうことでしょうか?「叱る」とは、挽回への励ましのことです。何かに失敗してしまった相手に対して声をかけて、相手が「よし、挽回しよう!」と思うことができれば、「叱る」行為は成功したと言えます。「叱る」と似た言葉に「怒る」がありますが、「怒る」と「叱る」は違います。「怒る」は自分の感情を抑えるために、条件反射的に起こるものです。心理学的には、「感情的反応」と呼ばれます。それに対して「叱る」「理性的反応」と呼ばれていて、相手にどうなってほしいという明確な目的があっての行為です。分かりやすく言うと、「怒る」は自分のための行為(for me)ですが、「叱る」は相手のための行為(for you)なのです。

それでは次に、「ほめる」ときのポイントと、「叱る」ときのポイントをまとめてみましょう。

「ほめる」ときのポイント

吉田先生:ほめるときのポイントをまとめてみます。先ほども述べた通り、「ほめる」とは、前進への促しです。ですから、生徒に対して「何が前進した状態なのか」を言語化して伝えておく必要があります。先生が生徒をほめたときに、生徒に自分が前進した状態にあることを認識させ、よりほめられた実感を湧かせることが大切だからです。クラスづくりが上手な先生は、クラス目標を体現している行動をたくさん言語化して、生徒に伝えていることが多いと私は思います。

また、ほめ言葉にもポイントがあります。それは、「Iメッセージ」を使って相手をほめることです。

ほめ言葉には「Iメッセージ」と「Youメッセージ」の2種類が存在します。「Iメッセージ」とは、「ありがとう」、「嬉しいです」などの、自分の感情が含まれたほめ言葉のことです。それに対して「Youメッセージ」とは、「すごい」「えらい」などの、相手を評価する形でのほめ言葉のことです。統計的には、「Iメッセージ」の方が、ほめ言葉として効果があると言われています。「Iメッセージ」の方が相手をほめたときに自分の感情が伝わりやすいため、相手もほめられたという感覚を持ちやすくなるのです。

↑当日の様子

「叱る」ときのポイント

吉田先生:次に「叱る」ときのポイントをまとめようと思いますが、その前に、「叱る」行為がいかに難しいかということを説明しなければなりません。先ほども述べたように、「叱る」とは挽回への励ましです。「相手にこうなってほしい」という思いを伝えなければなりません。ですから、叱る相手との信頼関係がなければ難しいのです。信頼関係のない人から叱られてアドバイスをもらったとしても、そのアドバイスは何も響かないと思います。
以上を踏まえたうえで、叱るときのポイントをまとめてみます。

まず叱る前に、「叱らないといけない状況を自分が引き起こしている可能性はないか」「相手を叱る理由は何か」そして「どのように叱れば相手の可能性が広がるのか」を考えましょう。自分のせいで相手がミスをしているのに、相手を叱るというのは本末転倒です。どうして相手を叱らないといけないのかということを考えてから叱るようにしましょう。そして、どのように叱れば相手の挽回への励ましになるのかを考えましょう。

叱るときにも手順があります。まずは、正直に相手に対する自分の葛藤を伝えましょう。その時には、自分が相手に怒ったという事実も伝えるべきだと思います。次に、相手にリクエストすることを短く伝え、そのリクエストをする理由も伝えます。このような順番で伝えれば、相手を効果的に叱ることができます。注意したいことは、相手がそのリクエストを受け入れるかどうかの最終的な判断は本人に任せるということです。あくまでも「叱る」ことはリクエストなので、相手に自分の意見を強制しないようにした方がいいと思います。

登壇者のプロフィール

吉田忍 (よしだしのぶ)
〈プロフィール〉
1972年生まれ。東京理科大学大学院理工学研究科建築学修士課程修了。
ハウスメーカーに入社後、海外アウトソーシングのプロジェクトメンバーとしてマニラに10年出向し、1000人規模の生産統括マネージャーとして全社業務改善プロジェクトを担当。その後、コーチングファームに入社し、プロビジネスコーチとして5年間で約5000人のビジネスパーソンに、組織活性化のためのコーチングプログラムを提供する。
現在はこのノウハウを活かし、子どもたちの「生きる力」を育む教育を推進するために、学校教育の活性化に向けたサービスを展開中。(2018年3月15日時点のものです。)

4 編集後記

改めまして第1回EDUPEDIA SCHOOLにご参加くださったみなさまありがとうございました。今回のイベントは多種多様な職業のみなさまにお集まりいただいたので非常に貴重な場となりました。叱る力を高めるには、ほめる力も同時に高めていくことが大切だと感じました。第2回も企画しておりますのでまたよろしくお願い致します。(取材・編集:EDUPEDIA編集部 大森友暁、加藤広夢、熊川大貴)

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