子どもたちの注意集中を向ける教室環境整備―夏休み中に刺激の調節を―(田中亮先生)

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作成者:中澤 歩 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

A先生「うちのクラス全然話聞かないんです。落ち着きがない子がたくさんいてー! 授業中ほんとキョロキョロしていて!」

B先生「刺激を減らすために黒板周りの掲示物をはがしたらどうですか? 」

A先生「とっくにはがしてあるよ。できるだけ黒板周りをきれいにしてあるよ。それなのになぜ?!」

あなたがB先生だとして、A先生からこんな相談を受けたらどう答えますか? あるいは、1学期の子どもたちの姿を思い返すと、あなた自身もA先生と同じような思いをしていませんか?

今回は、子どもたちが集中できるような教室環境づくりの考え方と、具体的なアイデアを紹介します!

2 環境整備で刺激の調節

<教室を子どもの目線で見返してみる>

以前は、黒板の上に子どもたち一人ひとりの似顔絵が貼ってあったり、学級目標が貼ってあったりするクラスもたくさんありましたが、だいぶ少なくなり、黒板の上に貼ってあるものが最小限になっている教室も増えてきました。子どもたちの注意集中を授業に向けるために、基本的に掲示物は教室正面を避けることは、すでに通説のようになっています。

しかし、それでも、授業をしていると、どうも子どもたちの視線が担任や黒板から逸れていっていることが気になることはありませんか?

以前、算数の授業で、T1が算数少人数の先生、T2が自分になったときがありました。私はふと気になり、授業の冒頭、教室の後ろにいるときに、背を低くし、子どもの視線になってみました。そのときに見えた景色は写真のとおりです。(児童の下校後に撮影)

改めて、子どもの気持ちになってみると、

「教卓に山積みになったノートで黒板の下が見えない」

「教材の入った段ボール箱が置かれているが、あの中身はなんだったっけ…」

「教師用の本棚が整頓されていないでぐちゃぐちゃ…」

「カーテンがヒラヒラ揺れている」

「予定黒板にたくさん書いてある」

「3時間目の水泳あるのが楽しみだなぁ…あれいつ着替えるのだろう…」

「黒板に前の授業のメモが残っているけど…なんだっけ…」

「棚の上に本が積んであるのが気になる」

「椅子が机に入っていない」

「紅白帽子が通路側で揺れている」

など、たくさんの気になるところがありました(写真)。

さらに、もっと子どもたちの気持ちになってみると、掲示板に貼ってある画鋲がニコちゃんマークに見えたり、LANケーブルがちょうちんあんこうに見えたりするような気もしました(写真)。

ただ単に「黒板上に掲示物を貼らない」というだけでなく、改めて教室の中を子どもたちの目線、子どもたちの思考で見直してみることはとても大切なことです。子どもたちになりきって「どんなふうに子どもたちには見えているのか」を考えてみると、思いの外、教室には注意集中を妨げるものがたくさんあると思います。

最終的には、子どもたち自身が刺激があっても注意集中を授業に向けられるようになることが大切です。とはいえ、無機質で何もない教室を作ったほうがいいというわけではなく、目の前にいるクラスの子どもたちがどのようにしたらより集中を向けやすい環境ができるかを考えて、刺激の調整に取り組むことが大切なのです。

<考えられる環境整備>

以上を踏まえ、具体的な環境整備のアイデアを考えてみました。

  • 本棚をカーテンや風呂敷等で隠す
  • ノートは教卓の端に提出コーナーを作る
  • 教材の入った段ボール箱は教材室等に入れる
  • カーテンを風で揺れないように止める
  • 紅白帽子は通路側にかけないで、となりの座席側にかける
  • 予定黒板が教室正面にある場合は書いてある内容を最小限にする(写真①)
  • 授業中の板書で子どもたちの注目が集まりやすくなるようなマグネットを使う(写真②)

授業が終わった時点で徐々に消していく。また、持ち物や宿題も連絡帳を書いたり、朝の会で確認したりした段階で消す。

3 実践者プロフィール

田中亮(たなかりょう)

東京都公立小学校教諭を経て、現在長野県軽井沢町立軽井沢西部小学校教諭・東京学芸大学教育学研究科特別支援教育専攻。通常学級の担任を務めるとともに、これまで特別支援教育コーディネーター、教育相談担当、就学支援委員などを経験し、特別支援教育の視点を取り入れた通常の学級の学級経営、学習指導に取り組んでいる。

  • 東京学芸大学GP 特別支援教育時代の教員養成システムの開発 「通常学級の教員に求められること」シンポジスト
  • 東京都特別支援教育研究会夏季研修会 通常の学級分科会 実践発表者
  • 長野県総合教育センター 特別支援教育研修「通常の学級における発達障害のある児童の指導」実践発表者
  • 全日本特別支援教育研究連盟関東甲信越地区研究協議会 通常の学級分科会 実践発表者

4 著書紹介

『小学校における特別支援教育サードステージへ』(平成26年8月『月刊特別支援教育研究』東洋館出版)

『支援量の調節を心がけた通常の学級(低学年)の学習指導』(平成26年10月『実践障害児教育』学研プラス)

『これだけは身につけたい!学級担任の基本のキ −特別支援の子どもに出会ったら−』(平成27年4月『授業力&学級経営』明治図書出版)

『見通しと時間の使い方に焦点を当てた取り組みー当たり前にもちょっとした工夫をー』(平成28年4月『実践障害児教育』学研プラス)

など多数

5 記事紹介

新学期、支援の必要な子に出会ったときに考えたいこと —小学校・通常の学級で取り組むスタートダッシュの支援—(田中亮先生)』(2018/3/13投稿)

支援が必要な子への対応について、タイプ別に具体例をまとめています。2学期に向けて、こちらもぜひ合わせてお読みください!

6 まとめ

“授業で勝負の2学期”は、子どもたちの注意集中をばっちり集めて、みのり多い日々積み重ねていきたいものですね。「合理的配慮」というと何か特別なことをしなければならないような気がしてしまいがちですが、ぜひ、夏休みのうちに子どもたちのいない教室で、背を低くして子どもの視線になって、気になるところはないか考えてみてください!意外と見えてくるものがたくさんあるかもしれません。教室環境の整備で刺激の調節をするのも立派な合理的配慮です。

(文責:軽井沢町立軽井沢西部小学校教諭・東京学芸大学教育学研究科特別支援教育専攻 田中亮)

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