新学期、支援の必要な子に出会ったときに考えたいこと ―小学校・通常の学級で取り組むスタートダッシュの支援―(田中亮先生)

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作成者:中澤 歩 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

子どもたちにとっても、先生にとっても、4月の始業式の日は1年間の中で一番ドキドキする日です。とりわけ、特別な支援が必要な子の心の中は「どんな先生だろう。どんな勉強をするのだろう。友達はできるかな。」など、人一倍の不安と楽しみが混ざっています。

気持ちよく新学期をスタートするために考えたいことは、「様子を見てから」ではなく「まずやってみる」という先手必勝の姿勢で、具体的な支援に取り組んでいきたいものです。

筆者は、特別支援教育の視点で学級経営や学習指導を考える上で、いつも以下の5つの視点で考えています。4月の始めに支援を始めるときには、特に大事にしています。

  1. 学年相応の発達に比べて、「得意な面と苦手な面」を考える。
  2. 「自分で考えた、調べた、他の先生から聞いた支援」をまずやってみる。
  3. 完璧な支援で始めるのではなく、「だいたいこういうタイプかな……」というところからまずは始めてみる。
  4. うまくいったと実感できたらその支援を続ける。うまくいかなかったら、方法を変える。
  5. 続けている支援を1ヶ月くらいで見直す。学年相応に照らし合わせて、支援がなくてもできるといいものは少しずつ抜き、過支援を防ぐ。

2 こんな子いるかな!? −支援のアイディア−

小学校の通常の学級では、「○年生にしては……」という学年相応の発達と比べて考えると支援の第一歩がイメージしやすくなります。

  • 「情報が入りやすいのは目か耳か」
  • 「この子が落ち着く座席の位置は前か後ろか」
  • 「どういう指示の出し方が伝わるのか」

……などの支援のベースをなるべく早いうちにイメージしておきたいものです。完璧な正解を考えがちですが、そうではなく、「だいたいこういうタイプの子かな」という感覚からスタートすることが大切です。

まずは、やってみる……これが基本です。イメージがもてたら、具体的な支援の取り組みを始めます。以下にタイプ別の支援の一例を示します。取り組みを始める一歩にしていただけるとありがたいです。

<その1:暴言、暴力が激しい子>

基本的に友達の心と体を傷つけることには厳しく指導します。しかし、ただやみくもに叱るだけでは、支援が必要な子に「本当に伝えたかったこと」が伝わらずに、すぐ同じことを繰り返してしまいます。

そこで、叱るレベルをわかりやすくします。例えば、「木」を用いて、「『木』の叱り方は忘れ物、『林』の叱り方は掃除をさぼる、『森』の叱り方は怖い言葉や殴ることがあったとき」という話をし、「人を傷つけることは最もいけない」ということをイメージしやすくします。すると、支援が必要な子も、周りの子どもたちも先生の指導に納得することができやすくなります

なおかつ、個別に、イライラしたときは「トイレに行く」「水を飲む」「一人になれるスペースに行く」など、クールダウンの方法を約束しておきます。

また、客観的な視点で暴言や暴力について考えさせることも効果的です。「あるクラスでドッヂボールで当てられて、それが嫌で殴りかかった人がいました。どう思う?」というような具体的場面の想定をさせたり、学級や道徳の時間に「あったか言葉とチクチク言葉」の活動を4月当初にしたりしておくことが有効です。

<その2:パニックを起こす子>

自分のクラスの子がパニックになると、担任としては、「なんとかしなくては」「信じられない」「おさえないと」と思い、慌ててしまいがちです。たしかに、目の前で自分のクラスの子が、いわゆる“暴れる”状態になると、どうしたらいいかわからなくなってしまう気持ちもよくわかりますが、そういう時ほど冷静に支援につなげたいものです。

まずは、「何があってパニックが始まり、何をして、どれくらいの時間で、どう収まったか」を記録し、傾向をつかみます。記録を重ねていくと、「やりたいことができなくてかんしゃくを起こしている」か「どうしたらいいかわからなくなり、暗闇の中で叫んでいるような状態なのか」のどちらに近いかを見極めることができるようになります。それが対応を考えるヒントとなります。

前者の場合、どうしたら折り合いをつけられるかを子どもと話し合います。前述の暴言、暴力が激しい子への支援をするとうまくいくことが多いです。後者ならば、視覚支援や言葉掛けなどで見通しをもたせ、子どもが安心して活動できることを第一に考えます。

<その3:離席やおしゃべりが止まらない子>

どれくらいの時間、何をしていると座っていられるかを考えます。その子に合わせて、45分間を4~5つのコーナーに分けて構成すると、5~10分ずつ授業場面に変化があり、学級全体でどの子にとってもメリハリがつき、集中しやすくなります。

筆者は、「この子(このクラス)は、サザエさん(10分1話)でいくか、ちびまる子ちゃん(15分1話)でいくか、はたまた月9ドラマ(後半15分に山場)か相棒(1回完結型)……」など、テレビ番組に例えて授業構成を考えます。そして、授業中に誰もが離席してよい時間、通称「合法的立ち歩き」を取り入れます。「できた人から先生のところに持ってきてね。丸付けをするよ。」や「自由に歩いてみて同じ意見の人を探そう」などの言葉掛けで子どもたちの緊張が解けます。

また、おしゃべりが止まらない子は自分が静かにしている状態を意識できていないことが多くあります。「今おしゃべりしてないね。とてもいいよ。」という言葉掛けや、毎時間◎〇△で子ども自身が振り返ったりすることで、口を閉じていることを強化していきます。教科書を黙読する時間(2~3分程度)など、学級全体が静かな時間をつくり、習慣づけることも有効です。始めは、静かにできなくても、根気よく毎日続けていくことが大切です。

<その4:不注意傾向の子、静かだけれど話を聞いていない子>

静かにしているけど、別のことを考えていて内容を聞いていないという子は、すぐ担任は気付きやすいのですが、特に他の子に迷惑を掛けることも少ないので、支援は後回しになりがちです。しかし、一人だけ違うことをして人間関係がこじれたり、学力差がついたりすることが多く、早いうちに、「意識して聞く」という練習をしたいものです。

具体的な支援としては、担任が、話し出すときに「1回拍手をする」「『大事なことを話します』と言う」などして注意を惹く工夫をします。「先生が頭をかいたら大事な話だよ。いつ出るかわからないからよく見ていてね」など本人と約束しておくといいと思います。低学年では、朝の会で「2時間目は体育です。いつ着替えるといいでしょう?」など、クイズ形式で、考えながら聞く習慣をつけることも効果的です。

3 実践者プロフィール

田中 亮(たなかりょう)

東京都公立小学校教諭を経て、現在長野県軽井沢町立軽井沢西部小学校教諭。通常の学級の担任を務めるとともに、これまで特別支援教育コーディネーター、教育相談担当、就学支援委員などを経験し、特別支援教育の視点を取り入れた通常の学級の学級経営、学習指導に取り組んでいる。

  • 東京学芸大学GP 特別支援教育時代の教員養成システムの開発 「通常学級の教員に求められること」シンポジスト
  • 東京都特別支援教育研究会夏季研修会 通常の学級分科会 実践発表者
  • 長野県総合教育センター 特別支援教育研修「通常の学級における発達障害のある児童の指導」実践発表者
  • 全日本特別支援教育研究連盟関東甲信越地区研究協議会 通常の学級分科会 実践発表者

4 著書紹介

『小学校における特別支援教育サードステージへ』(平成26年8月『月刊特別支援教育研究』東洋館出版)

『支援量の調節を心がけた通常の学級(低学年)の学習指導』(平成26年10月『実践障害児教育』学研プラス)

『これだけは身につけたい!学級担任の基本のキ −特別支援の子どもに出会ったら−』(平成27年4月『授業力&学級経営』明治図書出版)

など多数

5 記事紹介

子どもたちの注意集中を向ける教室環境整備—夏休み中に刺激の調節を—(田中亮先生)』(2018/7/28投稿)

教室環境の整備について、特別支援の視点を取り入れた具体的なアイデアをまとめています。こちらもぜひ併せてお読みください!

6 おわりに

子どもと担任との信頼関係は支援の効果を上げるための土台です。「まず、やってみる」ことで、支援が必要な子どもは「先生は自分のことを真剣に考え、丸ごと受け入れてくれる」と感じることでしょう。

「今、目の前の子どもに、考えられることを全力で……」という視点を持ち続け、担任として、支援の必要な子どもが全幅の信頼を置くような大人、カリズマティック・アダルトになりたいものです。

さあ、4月から、張り切ってスタートダッシュでいきましょう!

(文責:長野県軽井沢町立軽井沢西部小学校教諭 田中亮)

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