1 はじめに
この記事は、文部科学省より許可を得て、国立教育政策研究所ホームページに掲載されている、「キャリア教育リーフレットシリーズ」を転載させていただいています。
↓転載元はこちらです。↓
高校生の頃にしてほしかったキャリア教育って何?〜卒業後に振り返って思うキャリア教育の意義〜
2 高校生の頃を振り返って思う“もっと指導してほしかった”こと
キャリア教育に日々取り組む中で、生徒が意義を感じているか悩むことがあると思います。そのような時は、キャリア教育の意義は、すぐに実感されるものもあれば、後になって感じられるものもある、ということを確認することが良いでしょう。
この記事では、キャリア教育の取り組みを高校生当時に役立つと感じたか、卒業後の今になりもっと指導してほしかったと思うかという2つの点から、取り組みの意義を探ります。[*1]
A、B、Cの3つのタイプをご紹介します。
[*1] 国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター「再分析から見えるキャリア教育の可能性ー将来のリスク対応や学習意欲、インターンシップ等を例として」
どのように3つに分けたの?
高校卒業者に協力いただいたアンケート[*2]の中で、次の学習内容をどのように評価しているのかを尋ねました。
[*2] 「キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査(」国立教育政策研究所)平成24年10月上旬~11月中旬に実施。
上記の、高校での学習や指導について、高校生のときに高校卒業後の進路や自分の将来の生き方を考える上で【役に立った】【少しは役に立った】【役に立たなかった】【取り組んでいない】の4つの中から選んでもらいました。
これに加えて、高校での学習や指導のうち、高校生のときに自分の将来の生き方や進路について考えるために、【あなたが指導してほしかったと思う事柄】を選んでもらいました。
2つの問いへの回答結果を整理して見えてきたのが、下のA、B、Cの3つのタイプです。
3 3つのタイプ
A. すぐに「役立つ」と感じられる学習内容
- 自分の個性や適性(向き・不向き)を感じられる学習
- 進学にかかる費用や奨学金についての情報
- 社会全体のグローバル化(国際化)の動向についての学習など
これらは、高校生のときにも、そして卒業後に振り返ってみても、意義を感じられた項目です。キャリア教育の内容として重要視できるものです。
(例)社会のグローバル化の動向
例えば、社会全体のグローバル化の動向は、地理歴史科や公民科の授業で学ぶことができます。国際社会に主体的に生きる人間としての自覚と資質を養うことが、生徒のキャリア設計に結び付きます。
各教科における学びを断片化させない工夫や、これからの社会での生徒自身の在り方生き方と結び付けた学習が、更に求められています。各教科での日々の教育活動をキャリア教育の観点から系統立てていくための実践例については、
『高等学校キャリア教育の手引き』(文部科学省,平成24年)の第3章第4節に提示されています。
B. 時間がたってから「役立つ」と感じられる学習内容
- 社会人・職業人としての常識やマナーについての学習
「社会人・職業人としての常識やマナー」は、卒業後に必要性が感じられています。高校生の頃には意義を感じにくいからこそ、学ばせ方に工夫をしましょう。
(例)社会人としての常識やマナー
教職員の振る舞いも生徒にとっては学びの対象となります。「日々学校内の高校生活の中で先生がまずは見本を示し、生徒とともにこのビジネスマナーを実践することが大切」という提案もあります。インターンシップに 向けて事業所の方とやりとりしている様子を見せるのもよいでしょう。
C. 高校生のときに「取り組んでおきたかった」学習内容
- 就職後の離職・失業など、将来起こり得る人生上の諸リスクへの対応についての学習
- 転職希望者や再就職希望者などへの就職支援の仕組みについての学習など
これらは、卒業後に、高校生の頃にあったら良かったと思う学習内容です。
これらの内容についてのニーズは潜在的に高いと言えます。
(例) 転職希望者や再就職希望者などへの就職支援の仕組み
変化が激しい社会においては、長期的なキャリア展望を持ちづらく、様々なリスクに直面することが予想されます。
高校生や保護者も、「将来起こり得る人生上の諸リスクへの対応についての学習」を望んでいます。
将来直面する諸リスクに対して、生徒が学校で学んでいる間にいかに備えができるかは重要な課題の1つです。
4 関連記事
生徒が直面する将来のリスクに対して学校でできることって?(文部科学省)
5 編集後記
特別活動を要としたキャリア教育実践のための効果的なツールとなる「キャリアパスポート」が2020年4月よりすべての小中高で実施されるようになりました。
この記事が「キャリアパスポート」のお役に立てると幸いです。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 辻)
コメント