はじめに
年に数回、中学校の社会の先生と話す機会があります。出身大学は違っても同じ文学部ですが、相手は地理学科、こちらは教育学科、社会の授業の話になると、太刀打ちできません。
せめて、1つぐらいは「1本!」といきたいところです。その中学校の先生が、「ネイティブ・アメリカン」「イヌイット」という、私には初耳の言葉を出されたのをきっかけに、ちょっと調べてみました。そうしたら、少しだけですが、わかったことがあります。
「アメリカ・インディアン」と「ネイティブ・アメリカン」の違い
「ネイティブ・アメリカン」とは、アメリカ合衆国の先住民の総称です。
「アメリカ・インディアン」のみなさんは、この呼び方を承認しておらず、1977年にスイスで開かれた国連先住民会議に代表団を送り、
「我々の民族名はインディアンである」
と公式に表明しておられます。
「ネイティブ・アメリカン」は行政側が、そのサービス対象グループに対して使い始めた用語で、インディアン側から出てきた用語ではありません。しかもインディアンだけでなく、アラスカ先住民、ハワイ先住民すべてをさす意味があり、固有の民族名ではありません。
1995年のアメリカ国勢調査局の調査では、国民の49%が「インディアン」を支持し、37%が「ネイティブ・アメリカン」を支持しました。そして、2004年にワシントンに開館した博物館の名前は、国立アメリカ・インディアン博物館となりました。
「アメリカ・インディアン」の人口で多いのは、「チェロキー」族が約30万人、「ナバホ」族が約20万人、「チペワ」族が約10万人、「スー」族が約7万人、「ラムビー」族が約4,5万人、「プエブロ」族が約3,5万人というふうに数えていくと、もっとたくさんあるそうです。〉
以上、ウィキペディアの「インディアン ネイティブアメリカン」に載っていた説明から抜粋させていただきました。ありがとうございます。私が聞いたことがあるのは、スー族、シャイアン族、コマンチ族、アパッチ族だけでした。
「先住民族サミットinあいち2010」より
2010年10月に愛知県で開催された「国連地球生きもの会議」に合わせて開かれた「せかいSATO(里)フェスタ」のメイン行事「先住民族サミットinあいち2010」を紹介する新聞記事でも、アメリカからインディアン最大規模の1つである「ナバホ」族から参加された方の意見をのせていました。
「インディアン文化 今も」というタイトルでした。
ですから、私は「アメリカ・インディアンの教え」という詩も、タイトルをそのまま使うことが大切だと考えます。当事者であるアメリカ・インディアンのみなさんの意向を、第一に尊重すべきだからです。
学校で「インディアン」を「ネイティブ・アメリカン」「アメリカ先住民」と言おうと教えるのは、人権教育の視点からも、正しいとは言えないでしょう。先生方には、少数民族の人々の思いをきちんと受けとめた呼び方を、生徒たちに教えてやってほしいと、心から願っております。
「エスキモー」と「イヌイット」の違いを知っておきましょう
「エスキモー」とは、ロシア北極圏のシベリア極東部(1200人)・アメリカ合衆国のアラスカ(32000人)・カナダ北部(12000人)・グリーンランド(41000人)に至るまでの、ツンドラ地帯に住む先住民の総称ですから、単一の民族名ではありません。
「イヌイット」とは、カナダ北部・グリーンランド(デンマーク領)に住む先住民であるエスキモー系民族の1つであり、エスキモー最大の民族です。このカナダとグリーンランドに住むエスキモーの民族は、「エスキモー」という呼び名を拒否しておられますから「イヌイット」と呼ばれています。
理由は、アラスカでは「エスキモー」は「かんじきの網を編む」という語源だったのが、カナダでは「生肉を食べる者」と誤って解釈され、野蛮という偏見による蔑称(差別用語)になってしまったからです。
一方、アラスカには、「ユピク」「イヌピアト」など別名のエスキモー民族が先住していて、「イヌイット」ではありません。シベリアやセントローレンス島(アメリカ合衆国)は、「ユピク」民族です。
「イヌイット」はカナダとグリーンランドのエスキモーのことで、アラスカでは「{エスキモー」が公的な呼び名}ですから、アラスカのエスキモーを「イヌイット」と呼ぶのは誤りになります。
1990年前後から、新聞や出版など一部日本のマスコミも「エスキモー」を使わず「イヌイット」を使い始めました。こうした流れで平成5(1993)年度の中学校教科書、平成6(1994)年度の高校教科書から、「エスキモー」という呼称は消えました。
しかし、「エスキモー」と「イヌイット」の違いが日本でも理解された今は、「エスキモー」にもどっている教科書もあるとのことです。〉
以上、ウィキペディアの「エスキモー イヌイット」に載っていた説明から抜粋させていただきました。ありがとうございます。
「先住民族サミットinあいち2010」より
2010年10月に愛知県で開催された「国連地球生きもの会議」に合わせて開かれた「せかいSATO(里)フェスタ」のメイン行事「先住民族サミットinあいち2010」を紹介する新聞記事には、アラスカからは、「クリンギット」族の代表の方が参加されたと紹介していました。
ちなみに、「クリンギット」族はエスキモーではなくインディアンです。
日本の写真家が「クリンギット」族を訪ねた時、古老が一冊の本のページを指しながら、
『この人々は一体誰なのか』
と聞いた写真には、北海道のアイヌ民族の人々が写っていたそうです。
中学校や高校で「エスキモー」の別名として「イヌイット」が使われることが一部であるようですが、正確であるとは言えません。
先生方には、少数民族の人々の思い(歴史を背負った願い)をきちんと受けとめた呼び方を、生徒たちには教えてやってほしいと、心から願います。
4 まとめ
以上、呼称(呼び名)というものは、当事者の複雑な思いを見極めて使うものです。また、マイノリティー(過去に傷つけられた人々が少なくない事実も含めて)と呼ばれる方々の立場に思いをはせるイマジネーションが不可欠です。
さらに、相手の気持ちを尊重しようとする呼称(呼び名)が大切だと痛感しております。それらを踏まえた、海外における2つの事例の紹介と、社会科の中学校・高校の先生方へのお願いでした。近頃、【他者の思い=過去に受けた心の傷は現在進行形でもあるという事実】を平気で無視する暴言をはく人が、残念ながらいるだけに、なおさら思います。

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