はじめに
大日向小学校は、日本の学習指導要領に則って教育活動を行う「一条校」として初めてのイエナプランスクールです。
イエナプランとは、ドイツの教育学者ペーター・ペーターセンが創始した、一人ひとりの子をその子らしく、最大限の可能性を引き出して育てることをビジョンとした学校の土台となる考え方を指します。
本記事は、2025年6月27日に行った学校見学とインタビューをもとにまとめたものです。
前編では教室の様子をルポでお伝えしましたが、後編では校長である久保礼子先生やスタッフへの取材から見えてきた、大日向小学校の学びの特徴をご紹介します。

6年目を迎えた学校の「落ち着き」
大日向小学校は2019年に開校し、今年(取材時:2025年)で6年目となりました。
「最初の頃は、ただ『サークルに座る』ことも難しかったんです。」と久保先生は振り返ります。
大日向小学校の1日は、朝の「サークル対話」から始まります。開校当初、「サークルに座る」「友達の話を聞く」「自分の考えを言葉にする」という、今の大日向小学校では当たり前になっている営みの実現は、決して簡単なものではありませんでした。
また、自分で学びを計画し、実施していく教材や方法についても、グループリーダー(教員)が議論しながら模索する日々が続きました。成果がすぐに見えるわけではなく、保護者・子ども・教員、皆が混乱していたといいます。
しかし、こうした試みを続けるうちに、開校から3年が経つ頃には「対話」や「自ら計画して学びを進めること」が日常になり、大日向小学校の文化として根付いていきました。
大日向小学校での「違い」とは
子どもたちがそれぞれの計画に沿って学習を進める時間である、「ブロックアワー」。
子どもたちは自ら計画を立て、それぞれ納得するまで学びを深めます。一人は算数の問題に向き合い、もう一人は社会の調べものをまとめたカードを作り、ある人は理科の実験をまとめる——異なる学びに取り組む姿が教室内に広がります。「人と違う」ことが特別に目立つことはなく、多様な取り組みが同時に存在すること自体が自然なのです。
「同じことを同じ歩調でではなく、『違うことを一緒にしている』ことが協働なのです。」と、久保先生は話します。
学びを支える環境づくり
こうした学びを支えるために、校舎の環境にも工夫があります。
大日向小学校では、廊下と教室の仕切りをガラスにし、オープンな空間になっています。誰が入ってきても驚かない環境は、子どもたちにとって日常です。
一方で、刺激が多すぎると感じる子どももいます。そのため各教室にはイヤーマフやパーテーションを常備し、必要な時に安心して使えるようにしています。導入当初は誰もが使いたがりましたが、次第に「必要な人が必要な時に」使うようになったそうです。
また「じゅうたんの部屋」と呼ばれるスペースでは、子どもと教員が一緒に学び方を考えます。そこには個別の特性に合わせた資料が準備され、子どもがよりよく学べる方法を一緒に探ることができます。
評価 ― プロセスをみとる
学びをどう評価するのか。これも大日向小学校の大きな特徴です。
相対評価や客観評価の手段として、単元テストは必要に応じて行われます。ただし必須ではなく、理解度や伸びしろを把握するために「その子にとって必要な時」に取り組みます。
一方、テストだけでは測れない「学びのプロセス」や「社会性の成長」については、文章によるフィードバックや子ども自身のリフレクションを重視します。
年に2回、児童一人ひとりが「わたしプレゼン」と呼ばれる30分程度の発表を行い、自己評価と他者評価の会をしています。そこには保護者やグループリーダー(教員)だけでなく、児童が招待したい大人——送迎バスの運転手や給食スタッフなど——も参加します。児童はポートフォリオをもとに、自分が頑張ったことやこれからの課題を発表し、質問や対話を通して自分の学びを振り返ります。
「5段階評価にするべきではないか?」という議論もありました。しかし最終的には、子ども自身の学びを「見取る」ためには、数値よりもエピソードの積み重ねが不可欠だという結論に至りました。
編集後記
学校を案内してくれた児童が最初に伝えてくれたのは、「ここには、上下関係はありません」という言葉でした。「呼ばれたい名前で呼び合うことが、その人を尊重することにつながる」として、「◯◯先生」に縛られず、グループリーダー(教員)も呼ばれたい名前で呼ばれていました。大日向小学校では、名前の呼び方一つにも一人ひとりを見つめて尊重する理念が息づいているのではと感じました。(編集・文責:EDUPEDIA編集部 下園絢音)
学校法人茂来学園大日向小学校・中学校のHPはこちら

コメント