式と計算~授業の導入(一風景より)

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目次

1.1 授業の導入時の工夫

みなさんは、授業の導入時の問題提示や資料提示について、どのような工夫(意識)されているでしょうか。

4年生の算数「式と計算」単元の授業を拝見した時のこと、

授業者は、授業開始後すぐに、「今日の問題はこれです。」と言って、用意していた問題文を黒板に貼った。

「1本900円のバットを1本と、1こ100円のボールを3こ買いました。全部でいくらになるでしょう。」

そして、一斉音読後、「わかっていることは何ですか?何算になる?言葉の式ではどうなる?」

と発問した。

みなさんは、この授業の導入について、どのように感じられるでしょうか。

いろいろな考え方がありますが、例えばやや強引ですが、良いか?悪いか?の二者択一で答えるならば、どちらでしょうか。一緒に考えてみてください。

「当然、本授業のねらいによって変わるだろう」と主張される方は、きっと授業の導入において、様々な工夫をされているのではないでしょうか。授業の導入(問題提示や資料提示)は、そのねらいによってかわります。毎回、同じ導入をしているという方は、一度、自分のやり方を見直してみることも必要かもしれません。

上述の授業の導入ですが、

☆「良い」とする場合

例えば、本授業が、これまでの学習を復習する要素が強く、技能面での習熟や、認識面での補充というねらいであれば、無駄な時間をなるべく排除すという意味合いから「良い」と考えられます。子どもはこれまでの学習経験をいかして、さっと、式と答えをノートに書いていくでしょう。正解の確認後、次の問題へと進んでいくでしょう。

★「悪い」とする場合

 様々な視点からの意見がありそうです。理由のその一つ一つが、授業の導入(問題提示や資料提示)で大切な視点だと思われます。是非、周りの先生方と議論をしてみることをお勧めします。

私が拝見した上述の授業では、本時の目標は「計算の意味と順序を考えて、1つの式で表すこと」がねらいでした。単元「式と計算」の3時間目です。本時の学習活動をみると、後半に問題づくりも位置づけてありました。また、式を考えた後の発表場面では、授業者はバットとボールの絵をその数だけ、わざわざ手づくりで用意して、黒板に貼っていました。一生懸命に準備をされた努力がみられました。

しかしながら・・・

本授業のねらいをふまえると、私ならば、このような導入はしません。

1.2 私案

まず、スポーツ店で買い物をした経験があるか尋ねます。

1人か2人に何を買ったか簡単に聞きます。そして、先生もスポーツ店で買い物をしてきましたといって、バットの絵を貼ります。きっと値段を尋ねてくるでしょうから、900円と答えます。(ここで、板書はしません)、また、「他にもあるよ」といって、ボールの絵をひとつ、ひとつ、貼っていきます。値段も教えます。黒板には、バットとボールの絵が貼ってあるだけです。

次に、「今日の問題は先生がいくら払ったか考えます。」といいます。

おそらく、すぐに1200円という答えを言う子がいるでしょうが、それらを聞き流して、「まず、どんな問題文だと思う」と投げかけます。口々に問題文を言う子がでてくる中、用意していた問題文の紙をさっと板書に貼ります。何も言わなくても、きっと読み始めるでしょうが、「全員起立、読めた人から座りましょう」と指示し、全員が読んだことを確認して、再度、全員で一斉読みをします。

そして、「ノートに、式を書きましょう」と指示し、早くできた子には、「2つめ、3つめの式を考えなさい」と伝えます。

以上、ざっとですが、私なりの授業の導入を考えてみました。

1.3 「私案」のねらい

 「私案」における私のねらいは、以下の通りです。

①スポーツ店での経験   ←   日常生活での買い物場面の想起

②買った物の発表   ←   興味づけ

③バットとボールの絵の提示   ← 具体物でイメージ化、問題への子どもの視線集中(注目を高める)

④あえて値段を板書しない   ← 子どもたちそれぞれの思考、イメージを促す。

(式で考える子、順に足している子等)

思考のイメージ:

900+300900+100+100+100900と100×3

⑤答えをいう子がいても聞き流し、問題文を考えさせる   ←   本時は答えがメインではなく、式の意味を考えることがメインであることを知らせる。また、本時の後半に、問題づくりを位置づけていることから、その活動への布石として

⑥問題文を貼り、全員起立させる  ← ここで流れの切り替え。ここまでの自由発言を一掃する。全員が読むことを確認する。

⑦全員一斉音読  ←  問題文の内容理解の再確認。

⑧ノートに式を書かせる  ← ③と④場面で頭の中で考えていたことを表出させる。

問題文をみて考えるのではなく、問題提示前から思考、イメージしているものを表現させる。

⑨2つめ、3つめの式を書かせる  ← 求める式は1つではなく、複数あることを意識づける。

その後の授業展開として、複数出てきた式を比べながら、式の意味や違いを考えることを通して、最終的に本時のねらいである「1つの式で表すこと」につなげる。

1.4 本時のねらいを意識して

問題提示の段階で、本時のねらいや学習活動にどのようにつがっていくのかという意識しておくことです。また、本時の単元での位置づけは3時間目であることや、4年生の計算領域の系統性を考えると、本時の学習内容は、子どもたちにとって、はじめてのものはほとんどありません。ほぼ、既有知識や既有経験のことが多いでしょう。

子どもたちの学びの文脈をどのようにつなげていくのか(広げていくのか)、これまでの学習の何を(知識や技能、経験、学び方など)に重点をおいて、本時の授業を行うのかということを教師は常に意識しておく必要があるのではないかと考えています。

1.5 教育課程を意識しているか

最近読んだ教育雑誌に、「日々の授業において、教育課程を意識している」という問いに、約半分の教員しか「YES」と答えていないというデータがありました。半分の教師は、目の前のこと、その時間その時間の学習で精一杯であるという内容でした。特に、教育課程を意識しなくても、教科書を一通り終えれば、学習指導要領で言われる最低限の内容は扱ったことになりますし、保護者も教科書を終えれば不満を言うことはありません。

しかしながら、教育のプロであるわたしたち教師は、常にどのような子どもを育てるのかという目指す姿を明確にして、長いスパンと短いスパン、大所高所より今の状況を見極めていく必要があります。野口芳宏氏が言われる「日々の実践に埋没する教師=実践埋没型教師」にならぬよう、日々の実践をリフレクションする目をもちたいものです。授業の導入の一風景からこのようなことを考えました。

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