子どもを教え育む言語技術

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5. 自立をうながす問いかけ

(3)利点と不利点

子どもに限らず,人が一つの行動を選択するとき,その行動には,必ず利点と不利点があります。全て利点ばかりということはありませんし,全て不利点ということもありません。その利点と不利点とが同じレベルにあるかどうかは別問題ですが。つまり,利点が論理的で,不利点が感情的であるということもあるのです。

しかし,私たち人間は,理性と感情を完全に分離することはできません。近代の哲学では,この理性と感情を完全に分離しようとしましたが,現代では,それは不可能なこととして,とらえられるようになっています。

このような視点に立ち,理性や感情,正義や倫理,さまざまなものを含み込みながら,利点と不利点が混在しているのが,日常的な行動なのです。

ただ,そのことを子どもたちは,まだまだ未熟なために理解したり,自省的にとらえたりすることが困難です。もちろん,大人も発達や成熟の途中にあるので,同様に困難なときがあります。しかし,より幼い子どもたちは,なおさらなのです。

ですから,子どもたちに,その行動の利点や不利点を言葉で説明してやる必要があります。

例えば,不登校気味で学校に行き渋っている子どもには,登校することの利点と不利点,休むことの利点と不利点を説明します。また,感情的になってすねているような子どもに対しても,そのようにすねていることの利点と不利点,自分の気持ちを落ち着かせて次に進む利点や不利点を説明します。

その上で,どちらを選択するか,子どもたちに委ねるのです。

これは,上述のような子どもの困難な状況以外でも,さまざまに利用できます。

例えば,自らの目標をたてさせるときです。

「漢字のテストで100点をとる」という目標を立てたら,その利点・不利点について考えさせます。

例えば,利点は,「家族にほめられる」「自分に自信が持てる」「次もがんばろうと思う」などが考えられます。そして,不利点は,「家族に叱られる」「漢字が苦手になる」「やる気が下がる」などです。そして,目標が達成されたかどうか振り返るときに,そのときの自分の利点,不利点についても考えさせるのです。

このようにすることで,子どもたちの意志の力が強くなります。

まとめ

【〜することの利点は…。不利点は…。どちらを選びますか?】

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