4月にスタートダッシュするために

急増する若手教員

近年、教育現場では大量退職者時代を迎え、全国的な傾向で新採用数は急増です。そしてここ数年、たて続けに入ってくる新採用者に対して、教育現場は新たな課題を抱えています。それは、これまでよりも速いペースで若手教師に実践力をつけてもらわなければ、さらに新しく入ってくる若手教師に対応できないという状況がうまれています。
新学習指導要領が本格実施となり、ベテランや中堅教師が若手教師を指導する時間や余裕はだんだんと難しくなってきています。ベネッセコーポレーションの調査によると、どの層の教師も「とにかく授業進度を速めることに追われている」、「日々の事で精一杯」という結果が出ているようです。

子どもは正しく学びたがっている!(形をそろえ意識を育てる)

年度初めはどの教室も、どの子も、どの先生も、例外なく、良い1年にしたいと思っている様子が表情や言動、教室の雰囲気から伝わってきます。やはり年度初めの最初の数週間は、黄金期間であると実感します。

▼▼▼スタートダッシュのために

(1)子どもの顔と名前を3日以内に覚えること。

(2)出会いの演出を考えること。

(3)学級びらき(学校生活のしくみ・ルール)の具体化を考えること。

(4)授業びらき用の教材準備をすること。

この時期、若手教師の授業を拝見し、時折、指導力に定評のある中堅、ベテラン教師の授業を拝見すると、一見、どちらもそれほど大きな差はないように見えます。黄金期間は、子どもも教師も張り切っているからです。ところがよくよく、指導の様子を観察すると、若手教師の指導は子どもが明るく前向きであれば、発言の仕方や内容も丸ごとそのまま受け入れ、やる気あるものすべてOKにしている状況です。
一方、指導力に定評のある教師の指導では、例えば、正しい答えを発表した子どもへも、指名されて返事がなければやり直させています。また、ある子どもの発言に対して、賛成(同じ)と手を挙げた子どもへも、何が、どのように、賛成(同じ)なのかと問い返す等、周りに合わせて安易な方へ流されていないか、稚拙でも自分なりに立ち止まって考えているかという意識づけをしています。
子どもの様子を見ると、そのように指摘された子どものモチベーションは下がるどころか、むしろ、正しく発表(表現)できたことに自信をつけているように見えます。子ども自身もファジ−ではなく、明確で正しい姿で表現することを、年度初めのスタートの時期には、求めているのではないでしょうか。

枝葉のような細かなことであると思われるかもしれませんが、年度初めの学習への構え(意識づくり)に対する、教師の意識の差が問われているように感じます。

「一事が万事」、「凡事徹底」という言葉がありますが、年度初めの黄金期だからこそ、誰もができることから、その当たり前の姿をしっかりと教師が意識し、誉め、認め、おだて、叱りながらあの手この手で、教えることが、授業づくり、学級経営成功への年度初めの大きなポイントではないかと思います。
この時期、日々の指導の中にも、【形をそろえることを通して、意識を育てる】という指導のあり方を再確認したいと思います。

その子なりのわかり方を意識して!

若手教師の指導案や授業を拝見しますと、「どうにかして、子どもに楽しく、わかってもらえるように・・・・」という工夫して学習活動を展開しようとする教師の熱意が伝わってきます。本当に素晴らしいことです。教師としての心意気です。ところが、その思いが空回りして、教師からの一方的な思いに偏った授業展開がなされている場面が見られます。例えば、学習問題を提示した後、式や答え、解き方が一通りでてくることで本時の目標は達成できたという見方や考え方が聞かれることです。

今求められる学力には、3つの要素

『主体的な学習態度(意欲)』

『基礎的・基本的な知識技能』

『思考力・判断力・表現力等の能力』

が規定されています。それらがどの程度、教師に意識されているか、言い換えれば、本時の学習問題を子どもが解決していく過程において、この3要素を育てる視点や手立てが具体的に意識されているかということが問われています。

4年算数単元「式と計算」の導入を拝見した時の事です。本時のねらいは、

「計算の意味と順序を考えて、1つの式で表す」

でした。ある若手教師は授業開始後、すぐに「今日の問題はこれです」と言って、用意していた問題文を黒板に貼りました。「1本が550円のバット2本と1個200円のボール4個を買った。代金は全部でいくらになるか。」という問題でした。そして、わかることとわからないことを確認した後、式と計算を立てさせました。式を発表する場面では、あらかじめ準備していた手づくりのバットとボールの絵を黒板に貼りました。答えが確認され、次へと進んでいきました。一見、何の変哲もない授業場面のように見えます。

しかしながら、この授業のねらいを考えると、子どもが日常場面を想起しながら、例えば「スポーツ店での買い物の経験」、「バットとボールの提示の在り方」、「代金の予想」、そして「それぞれの式の意味や違い」についてお互いの意見を比べながら考える場面設定を行うことで、違う授業展開ができそうです。特に計算領域の系統性で考えますと、本時の学習内容で扱う事はほとんどが既有知識や経験があります。

そのように考えますと、機械的に問題を解くのではなく、もっと子どもの学びの文脈に寄り添うことで、子どもの既有知識や学習経験を引き出し、バランスのとれた学力が育っていくのではないかと考えます。

学習活動を通して、どんな力(知識や技能、経験、学び方、思考力など)育てるのか、どこに重点を置いて授業を展開するのかということを常に意識しておくことで授業展開が大きく違ってきます。

【教材をどのように教えるのか】

という教師の側の視点と併せて、

【どのように子どもがその教材をわかっていくのか(認識していくのか)】

という子どものわかり方の視点の双方が意識される必要があるのではないでしょうか。子どもが式と答えがわかり自信をもつことはもちろん大切ですが、その過程において、意欲や思考力、学び方等の見えない部分への教師の意識が問われています。

特に、若手教師は(私もそうでしたが・・・)日々の授業に追われ、教科書を進めることで精一杯です。教科書は学習指導要領の最低限の学習内容は扱うことになりますし、保護者からも教科書の進度が遅れていなければ不満は出ません。しかしながら、私たち教師は、教えるプロとして、教科書を通して、何を教え、どのような力を育てるのかという意識を教師と子どもの目線から常に持ち続けておくことが必要ではないかということを授業研から学ばせていただいています。言うは易し、行うは難しではありますが・・・。

小見出し授業中の教師の言葉がけを意識する! (ほめるだけでなく、奮起や要求の言葉を)

有田和正氏は

「優れた授業をする教師たちは、基本的に優しさが滲み出ている。しかし、子どもの度がすぎた行為や言葉遣いには、厳しく注意する。厳しさに欠けると、優しさが生きない」

と言われます。このことは、日々指導する中で実感するところだと思います。
さて、若手教師の授業を拝見すると、1時間の授業の中で、励ましや誉める場面が見られます。例えば、学習への取り組み姿勢や発表の仕方や内容について、「がんばれ、いいですよ、すごい、なるほど、さすが、その通り」など、短く、テンポよく声かけをしています。認めてもらった子どもたちも張り切っています。
当たり前のこと、丁寧さ、努力やチャレンジすることなどそのポイントを示しながら誉めることは、とても大切な教師の働きかけであると思います。

しかしながら、ともすると励ましや誉め言葉を使うということのみで教師の意識が留まっているような感じがします。何かしら、物足りなさを感じています。率直に言うと、もっともっとその子なりの見方や考え方、意欲を引き出すような教師の言葉がけが必要ではないかと思います。教師はどのような言葉がけを意識すれば、より深みのある授業展開へと結びつくのでしょうか。

やや強引かもしれませんが、授業における言葉がけの優しさと厳しさという視点で考えると、子どもの考えや行為をそのまま受け入れる(認めたり誉めたりする)だけでなく、もっと要求したり、奮起させたりするような言葉がけが必要ではないかと思います。

例えば、

「そんなものなの、これだけ、○個は無理、もっと~、期待しすぎたか、全然だめ、お話になりません」

など、内容や状況から判断して、タイミングをみて子どもへ突き返したり、揺さぶったりするのです。若手教師の授業では、なかなか要求したり奮起させたりする教師の言葉は聞こえません。(人に見られているからということもあるかもしれませんが・・・いかがでしょうか。)
また、その子の意見に簡単に賛同したり、称賛したりするだけでなく、

「Cさんの意見をどう思うか」
「先生はおかしいと思うけど、同じ(違う)考えの人はどうか」

など一人の発言をみんなで分かち合えるように働きかけます。さらに、その子の考えにこだわる場を設定することもあります。例えば、
「Eさんの資料によると~だけれども、その考えに賛成か?反対か?」
など意図的に取り上げ、全員に意思表示をさせます。たとえ、その子から出されたものが一般的な資料や意見であっても、Cさんの資料、Fくんの意見という位置づけをすることで、その子のこだわりや見方、考え方を引き出そうとします。
【教師の意識で授業中の雰囲気はガラッと変わる】と言われるように、授業中に、どの子にどのタイミングで、どのような意図をもって、教師は言葉がけを行うのか、その瞬時瞬時の判断は非常に難しいと思います。しかし、教師の言葉がけが妥当かどうか、認めたり誉めたりするだけで授業が深まっているかどうか、常に問い直すことも必要です。
教師の言葉がけがその子に直結するものであるためには、授業中はもちろん生活場面においてもその子をしっかり探らなければなりません。その子の内面に迫るには、ハウツーではない教師の日々の絶えまない努力が求められます。

4月~6月までの3か月間で、多くの若手教師の授業を拝見させていただきました。若手教師の一生懸命な姿からいつも元気をもらいます。子どもは先生をモデルとして感化されながら育っていきます。先生が大好きという雰囲気も伝わってきます。

それだけに、授業中の教師の言葉がけは教師が思っている以上に重要なポイントではないかと思いました。

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