クラスでできるステップ8つ「いじめが起こりにくい環境の整備」の具体策

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その子は、なぜ自分の気持ちばかりアピールするのでしょう?

子どもが教師に話を聞いてほしい時、テストの丸付けをしながら生返事(ながら聞き)をしている教師の姿を思い浮かべましょう。それは、子どもは今、聞いてほしいのに、教師は子どもの目を見ないで、適当に返事をしている姿です。本当は自分の気持ちを教師にじっくりと聞いてもらったあとに、教師から言葉を返してもらいたいのです。先生と会話がしたいのです。でも、教師がそうしてくれないので、子どもの心は全く満たされません。それが日々、積み重なってくると、子どもは仕方がないから、「先生、聞いて聞いて」の連発になります。周囲の友だち(クラスのみんな)のことなんか、お構いなしという状態です。授業中も自己チュー「ハイハイ発言」が途絶えません。

その子は、なぜ自分の気持ちをぜんぜん出せないのでしょう?

教師がが熱心に、指示や注意ばかりを、子どもに言い続けている姿を思い浮かべましょう。それは、教師から、常に評価(よい子・ダメな子)をされているというプレッシャーを感じている子どもが、「よい子ストレス」を受けまくっている姿です。そうなると、教師から「わかった人?」「できた人?」と聞かれるたびに、その子は心も体も固まって硬直し、がんじがらめになってしまいます。それが日々、積み重なってくると、子どもは「間違ってはいけない」という思いにしばられて、自由な自己表現ができなくなります。友だちに声をかけてもらっても、心の身動きがとれなくなっている状態です。指名なんかされたら、緊張でガチガチ頭の中も真っ白になります。

学校で自分を出したがる子と出せない子の、家庭における共通点

どちらの子どもにも共通する点があります。それは、「親子で、お互いの言葉に耳を傾け合うという本当の意味での会話・対話ができていない」ということです。その場合の親は、わざとではなく、無意識で、それぞれ両極端な子育てをしてしまっているケースがほとんどです。たいてい、親自身が子どもの頃、そういう子育てをされてきた可能性があります。むしろ、虐待や体罰だけでなく、子育てや指導法も、親や教師が意識的に学ばなければ、連鎖すると思ったほうがいいでしょう。

それでは、学校では、どうすればいいのでしょうか。

スモールステップを3つばかり☆☆☆

子どもにお手伝いを頼んで、「ありがとう」「助かったよ」と言うこと。子どもと、目と目を合わせて、笑顔で話を聞いてあげたり、話したりすること。お手伝いで、教師にほめられ、クラスの役に立ち、みんなに必要とされる体験をしてほしいから。いかがでしょうか。どうか、その子を、今まで以上に、頼りにしてやってください

また、子どもと、何か(給食・掃除・遊びなど)をいっしょにしながら、世間話もしつつ、さり気なく「あなたが、うちのクラスの子どもであることがうれしいよ」というメッセージを伝えること。この先生は、相談しやすいなと、どの子にも(特に、気になる子が)感じてほしいからです

あれっ?いつもと違う」と気づいたら、「どうしたの?」と声をかけます。泣かされたり、意地悪されてきた時は、「あなたはね、友だちからバカにされるような子どもじゃないよ。あなたはね、決してダメな子じゃないからね。先生の自慢の子だよ」と、抱きしめてやること(女の先生だけ)(男の先生は、男の子を抱きしめてあげるのはOKですが、誤解を招くので女の子にはしないでください)。その子の目を見て「先生が絶対に守ってあげるから」という宣言をして、その子の気持ちが落ち着いてきたら、その子のペースに合わせて事情を聞いてあげます

そして、最後は問いかけます「どうしたい?」

大丈夫?」と、子どもの思いに寄り添い、事情や気持ちをあれこれ聞いてあげて、子どもが「ぼく・私の思いを先生はわかってくれた」と感じた(心が落ち着いた)ところで、問いかける言葉はひとつです。
どうしたい?」(自己決定を促す言葉)
このひと言があることで、子ども自身が考え、気づき、次のスモールステップ(自立への第1歩)へ踏み出せるのではないでしょうか。どうするのかを、教師が決めてあげるのは、お節介になってしまうかも知れません。子どもが、どうしたいのかを決めて、行動に移す子どもの不安を支えてあげるのが親切な支援です

「いじめが起こりにくい環境の整備」8つのステップ

☆スモールステップをあたえて、ほめること(できて当然のことでも)

私たち教師は、よく「しっかりしなさい」「ちゃんとしなさい」と言いますが、子どもには、イメージしにくい、どうしていいかわからない、あいまいな言葉だと言えます。ですから、大声で
しっかりして」「ちゃんとして」「うるさい」「まだか」と、どなるより、
みんな、すわろうね・・おっ、早くすわれたね。すごいなぁ」(笑顔で)
A君、先生の方を向いて」→「うれしいな。向いててね」(ほめながら)
Bさん、本とノート出して」→「すばやいな。えら~い」(ほめながら)
C君、感想を書くんやで」→「できてるやん。さすがは△年やね」(ほめながら)
シーッ!お話するのをやめようね・・だんだん静かになったね。うれしいな」(笑顔で)
先生のお話を聞いてね・・聞いてくれてありがとうね」(笑顔で)
と、場面に応じた、子どもがイメージしやすい具体的な言い方をしてあげるほうが、子どもの心に届きやすいでしょうね

☆『失敗は成功のもと』1人の体験をみんなで共有させること

立ち直りへの支援が、子どもの自立を促すことになります。挙手した意欲を「えらいね」と認め、言えなかったことは「緊張するもんなぁ」と支え、「なあ、みんな」と周囲のみんなにも共有させ、気を取り直して、挙手したA君を再度指名し、自立を促してあげましょう。そんな教師の姿(どの子に対しても)を、周囲の子どもたちもしっかりと見ているので、教室全体に安心感が広がります

☆トラブルはその子とつながるチャンス

つらかったんやね」「そら、ムカつくわなぁ」「くやしかったんやもんなぁ」と代弁してあげましょう。その子なりの理由を、その子にも、周囲の子らにも気づかせます(自分らの言動がどうだったか、見て見ぬふりをしていなかったか)。それは、教室に悪者(@<color>{#ff0000,レッテル貼り)を1人もつくらないためなのです}。
「△△君、あなたが大切だから、ていねいに言うし、最後まで聞いててね
△△君1人に言ってるのとちがう。クラスのみんなに言っているんだよ
と見回して、他人事という雰囲気(1人だけしかられているという空気)を絶対につくりません

☆「今するべきこと」をわかりやすく、そして時には強い意志で

・指示することばは短めに。(だらだら長い話は、お説教になります
・その子の拒否の叫びや行動に、教師が動じない。(売り言葉に買い言葉は×
・断固たる決意で、その子と真正面から向き合う感覚で、決してゆずらない。
・そして、少しでも、しようとしたら、ほめる。教師自身も心から喜ぶ。
・その子が本当にしたら、おもいっきりほめて、共に喜びを分かち合う。
子どもが受けとめてくれたら、必ず具体的にほめることも忘れないことです。
この5つを、ねばり強くくり返していると、じょじょにではありますが、しかる(注意する)回数が減ってきます(不思議なくらい)

☆教師集団が組織的に動くこと

例えば、子どもたちに対して、例えば、学校に持って来てはいけない物など、特に生徒指導面では、
どの先生も、同じ思いで、同じこと、言わはる
と思わせるように、毎日のミーティングを短時間でも必ずとりましょう。また、
どの先生も、チャイムが鳴った時には、教室に来てやはる
と思わせるように、授業始まりのチャイムを教室で聞く教師集団になりましょう

☆空気を伝えること・つくること

先生が笑顔でいると『楽しい空気』が伝わり、子どもの心にも響きます。また、
ダメ!」「やめい!」「またか!」「何してんの!」「さっき言ったやろ」などと言う否定的な指示語も、緊急時(イジメ・ケガ・危険)以外は、やさしく、ゆったり、
どうしたの?」→会話(事情を聞く)→「どうしたい?」→支援
こういう時は、△△すると、うまくいくよ」「今度は、先に△△してみようね
というふうに、言いぶんも聞いてあげて、ダメの中身を、具体的に伝えることで、子どもも、気持ちをわかってくれた教師の言葉は素直に受け入れられます

☆できたら減らしたい言葉、増やしたい言葉

△できるだけ減らしたい先生の言葉(大声、どなり声、早口で命令する声
こらっ!」「静かに!」「わかった人?」「できた人?」「他にない?」
◎できるだけ増やしたい先生の言葉(柔らかく、大きくないゆっくりした声
絵本が見えてない子はいないかな?」(読み聞かせを始める時は必ず)
困っていることはないか?」(こう言われると、子どもはうれしいのです)
先生にも聴かせてほしいな」(子どもが発言しやすい聞き方です)
みんなに聴いてほしいこと、ないか?」(子どもも言いたくなる聞き方です)
隣の人としゃべってみて、気づいたこと、聴かせて」(つぶやきも聞く)
わからない所があったら、言ってね」(「教えて」と言える子に育てたい)
わかりにくかったら、隣の人に聞いてみて」(親切に教えてあげる空気も)
「○○さんの言いたいのは、こうかなと言える人?」(モゴモゴ発言に)
○○君の言いたいことの続きがうかんだ人、いるかな?」(ボソボソ発言に)
子どものどんな発言も切り捨てずに耳を傾け、子どもと子どもの発言をつなげていくことを大事にしているうちに、徐々にですけど、自己チューの「ハイハイ発言」や、「ちぇっ、先に言われた。言おうと思ってたのに」と言う「しらけた発言」が減っていきます。

☆子どもの声を聴く教師の元でしか、聴く子どもは育たない

子どもの目を見て聴くこと、目を見て話すこと(必ず最後まで)を心がけましょう。
板書しながら、丸付けをしながらの「ながら聞き」ではなく、子どもと同じ目線の高さで、子どもの目から視線をはずさず、子どもの話を聴き、子どもに語る、そんな教師の姿勢が、子どもの満足感・安心感・信頼感、そして意欲につながります。
次の発問・板書などのプランを考えながら、子どもの発言を聞くのではなく、
自分の意図する(言ってほしい)子どもの発言にすぐに飛びつくのではなく、
ここ、何と読むの」「ここ、どうするの?」「ここ、わからないから教えて
と遠慮なく言える雰囲気の教師とクラスの仲間、そして、安心して「わからへん」と言える自分を温かく受け入れてくれる空気の教室にすることが、結果として、「イジメが起こりにくい環境の整備」になるのではないでしょうか。
子どもは自分を信じて(待って)くれる教師を信じます(話も聴きます)。教師が自分を好きでいてくれる(目を見て語りかけてくれる)から、子どもは教師も自分自身も好きになれます。そして、教師が自分を大切に思ってくれている(顔を見て聴いてくれる)と実感した子どもは、自分を大切にできるようになり、他人(クラスのみんな、弱い立場の子)も大切にできるようになっていきます

おわりに(始めの1歩)

いじめ防止対策推進法:未然防止」における、クラスで「いじめが起こりにくい環境の整備」とは、これらのような具体的実践(8ステップ)を、こつこつ根気強く毎日毎日積み重ねていくことしかありません。言わば、子どもたちとの根比べになります。全部でなくても、職場の同僚とも相談しながら、自分(全校教職員で一致できればベストですが、せめて学年教師集団で)できそうなことから「始めの1歩」を踏み出してみましょう。アプローチの仕方を意図的に180°チェンジできるのは、教室の中ではただ1人、教師しかいないのですから!子どもたちが常に「ガラスの人間関係の不安」を抱える今の時代ですから、明日からの教師が醸し出すあったかい空気(笑顔・聴く耳・待つ姿勢・受けとめる心・やわらかな語りかけ)は、きっと子どもたちの心にしみわたり、必ずや教室の空気をあったかくしていきます。私は、そう信じます。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 「子どもの声を聴く教師の元でしか、聴く子どもは育たない 」まったくそのとおりだと感じます。学校空間だけでみると先生以上の子どもは育たないですね。この言葉を締めに使われていることに感動しました。

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