円の指導<「円の定義」と「コンパスの働き」>(はなまるサポート)

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目次

1 概要

この実践は(株)教育同人社の許可を得て、「はなまるサポート」の学習指導ポイント一覧より転載しています。
実践の続き(無料)は最下部のURLからご覧ください。
また、以下より実践をPDFでダウンロードできます。
http://www.djn.co.jp/support/special/point/docs/2012/6/2/plan.pdf

2 はじめに

学習指導要領改訂によって指導学年が変わったものの中に「円」の指導があります。4年生で指導されていたものが3年生に移行したのです。もっともそれ以前は3年生で指導されていたものです。

ところで子どもたちに「コンパスは何をする道具?」と問うと、口同音に「円をかく道具」という答えが返ってきます。それほど「円」と「コンパス」の関係が強く印象づけられています。「コンパスは(同じ)長さを写す道具」という返答はほとんどありません。しかし、二等辺三角形や、平行四辺形、ひし形、合同な三角形の作図など、小学校で行われる図形の学習では「コンパスは(同じ)長さを写す道具」という機能をフルに活用しています。
 
このようなことを踏まえて初期の段階の「円」の指導をするには、どのような点に留意したらよいのでしょうか。今回は、この点を考察してみましょう。 

この単元は、平面図形としての「円」、立体図形としての「球」、コンパスの指導が挙げられます。ここでは、図形としての「円」の指導とコンパスの指導について述べます。

対象

小学3年生算数

3 1.「円」について

(1) 円の定義と性質

本来の定義は、「1点からの距離が等しい点の集まり(1点からの距離が変わらないように動いてできた線)」です。しかし小学校の段階では「定義」と「性質」の線引きを明確にしていないことがあります。この「円」についても3年生の指導という点から考えて、円の定義はどのようにしたらよいかという議論があります。すなわち「なるべくやさしく」定義するのか、「なるべくきちんと」定義するのかということです。

1. なるべくやさしい定義の例

「(茶碗の底をなぞったり、ピンから一定のながさをひもなどでとって)このようにひとまわりしてかいた丸い形を「円」といいます。」

「(ピンから一定のながさをひもなどでとって)このようにしてかいた丸い形を「円」といいます。」

「コンパスでかいたような丸い形を「円」といいます。」

このように定義した後、「中心」「直径」「半径」を指導します。

2. なるべくきちんと定義した例

「1つの点から同じ長さになるようにかいた丸い形を「円」といいます。」

このように定義した後、「その1つの点を中心、中心から円の周りまでの長さを半径、中心を通り円の周りから周りまでの長さを直径」と指導します。
 
またもう少し「きちんとすると」

「1つのもとになる点からの長さが変わらないように動いてできた線の形を「円」といいます。」

このように定義した後、「もとになる点を中心、長さを半径、中心を通る直線の円の間にある部分を直径」を指導します。

3. 性質の例

  • 1つの円では、半径はみんな同じ長さ。
  • 円を半分に折ると、その折れ線は直径と同じ。
  • 直径同士が交わったところはいつも中心と同じ。
  • 直径の長さは半径の2倍。

(2) 定義と性質の指導

円の指導の導入は、およそ次のような展開が用いられています。

  1. 丸い形を写し取る。ピンとひもを使って回転させる。簡易コンパスのような道具をつかってかく。そして、前述のように「…のような丸い形」を円というと定義する。
  2. 「できるだけきちんとした丸をかいてみましょう。」と投げかけ、「きちんとした」の意味を決めたり、どのようにしたらかけるかを工夫したりする。
  3. 点を多数示し、ある点からの距離が等しい点をいくつも取り、それが丸い形の上に並んでいることに気づく。
  • 輪投げの場面を設定し、みんなが平等になるにはどんな位置から投げるとよいか見つける。
  • ある決まった点から○○㎝のところに虫がかくれているという設定で、かくれている可能性のある場所を見つける。

(3) 指導のポイント

一口に「丸」とか「丸い形」とか言っても、上図に示したように、「丸付けの丸」から卵形、楕円、まん丸など色々な形があります。これは今までの生活経験(素地的経験)から培われてきた図形感覚です。

3年生のこの単元では、このような「丸い形」と「円」を区別できるようにすることが大切です。これは、2年生で「さんかく」と「三角形」を区別したことと同じです。

すなわち概形的な意味での「さんかく」と図形の定義としての「三角形」の区別であり、使い分けです。

この単元の終了時には「丸い形」と「円」はここが違うということを、定義や性質をもとにして的確に説明できます。従って上に示した指導の流れのどれをとるということではなく、できることならどれでも説明できる子どもにしたいのです。

つまり,単一の場や方法の設定ではなく、色々な場面に体験的に触れさせ、豊かな説明ができる子どもにしていきたいですね。

そのための1つの方法として、色々な教科書や先行事例を調べて展開を工夫し授業設計するとよいでしょう。

4 実践の続き

続きは以下のURLをご覧ください。
http://www.djn.co.jp/support/special/point/docs/2012/6/2/3.php

5 実践者紹介

初等教育研究所 山崎 憲
元東京都算数教育研究会会長。
「小学校時代から現在までで、今が最も算数がすき」と、小学校退職後も算数教育に没頭し、現職時代に引き続き年に数回研究授業も試みている。
現在東京学芸大学講師として初等算数科教育法を担当。
またボランティアとして東村山市算数教室を開催し算数好きの子どもの育成を目指している。

6 サービス紹介

同社の「はなまるサポート」は、若い先生のための授業ヒント集として、毎月の学習指導ポイントを細かく解説したり、不明点や疑問点などに関する無料相談を受け付けたりしています。

http://www.djn.co.jp/support/

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 佐々木彩奈)

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