本単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、分数の意味や表し方について理解し、分母が等しい分数における加減計算をすることができる能力を養う。また、分数の表し方や仕組み、小数との関係性を関連付けて考え、今後の日常生活や学習に活用しようとする態度を育む。
単元の評価基準
- 知識・技能:分数の仕組みを理解し、小数第一位までの小数と分母が10の分数との関係について理解できる。
- 思考・判断・表現:分数の意味を理解し、数の大きさを図に表したり、計算したりする方法を考え、説明することができる。
- 主体的に取り組む態度:身の回りで用いられる「整数では表せない数」を、分数で表現できることの良さに気付き、日常生活や今後の学習に活用しようとする。
本実践の目的
本実践の目的は、分母が等しい分数であれば適切に大小関係をとらえられるようになることである。整数の場合は、扱う数の大小関係を理解したのちに数図ブロックや数直線を用いて加減計算について学んだ。分数も同様の流れで学ぶのだが、分数の大小関係を理解するのは容易ではない。そこで分数の大小関係を重点的に学習して加減計算をストレスなく習得できるよう支援する。
分数の加減計算で最も避けたいのは以下のような間違いをしてしまう状態である。

これが起こる原因は、分数は「分母と分子セットで一つの数を表している」という理解ができていないからに他ならない。同様の事象を中学校数学や高校数学で表すと以下のようになる。

これらは計算方法の理解というよりも、数そのものに対する理解度が低いことから起こる問題だと認識していただきたい。いくら計算方法を訓練で覚えさせてミスを減らしたとしても、理屈が分かっていないので、数が変わったり、計算が複雑になったりした場合には計算できなくなってしまうだろう。むしろ簡単な計算ができてしまう分、その児童は分数の何が分かっていないのかが不明瞭になり、必要なフォローが遅れてしまうこともある。
そのため本実践では、分数の大小関係を深く理解し、図を用いた加減計算をスモールステップで自然と習得できるような授業構成を目指す。
ICTを活用したクイズについて
本単元は、既習内容を組み合わせて深める学習をするので、ICTを用いた簡易ドリル(以下、「めくりドリル」と呼ぶ)を活用することが有効である。めくりドリルとは、問題カード(⇒解説カード)⇒答えカード⇒問題カード⇒……(以下繰り返し)となるように並べたICT上のドリルのことである。

「分数」や「図」、「言葉」の関係性を答える問題を用意することで、自然と分数についての理解を深められる。教員は手が空くので、悩んでいる児童やより発展的な学習を求めている児童の対応をすることができる。各自の進捗を把握したい場合にはペア学習を取り入れると良い。相互チェックや児童の悩みを表面化させることもできる。
本実践は部分的な自由進度学習となる。その際、児童の理解度や定着度に大きな差が生まれるので、最低限のラインを明確にし、最後に考えのまとめや確認テストを行うと良い。
【教えない授業】クイズで学ぶ「分数」の流れ
1. 分数の復習(基準量が異なる分数や小数との関係を含む)
分母が3の分数や基準量が異なる分数については、2年生のうちに扱っておくことを強くお勧めする。
2年生の分数の教え方はこちら:

3年生の小数の教え方はこちら:

ここでは、復習として以下の3点を確認しておこう。
- 単位分数の意味(分母が3=3等分)
- 同じ分数でも基準量が異なると値も異なること
- 1/10=0.1の関係性
2. 分数の大小関係①(分母が等しい分数と整数)
ここからは、ICTを活用したクイズ形式のペア学習を行う。
分母が3の分数について、「数」「図」「言葉」の3点それぞれにおいてクイズをする。
1) 分子が1~3の場合

2) 分子がランダムな数での大小比較

3) 3/3=1の確認

4) 6/3=?や?/3=4の確認

5) 7/3と2の大小比較

3. 分数の大小関係②(分母が異なる分数の比較)
(1) 単位分数同士の比較
各単位分数の大きさを比べ、大小関係について理解する。

(2) 分母が異なる場合の比較の難しさ
単位分数の重要性を理解する。分母が異なる数を比較する難しさを知る。

(3) 分母を揃えることができる可能性の提示
½と¾の大小比較をして、分母の異なる2数も、組み合わせによっては簡単に比較できることを知る。

ここで理解させたいことは以下の2点である。
- 分母が異なっても、「分母を揃える」ことにより比較できる(通分への種まき)。
- やはり分母が異なると、比較をすることは大変であると真に理解する。
4. 分母が等しい分数の加減計算
最後に、分母が等しいことの重要性を理解したうえで、分数の加減計算を行う。
執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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