本単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、簡単な分数について知り、同じ大きさに分けることで分けた大きさを表したり、2つの数量の関係に着目して倍や分数の意味についてとらえたりできる能力を養う。また、具体物や図などを用いた数学的表現・処理をすることの良さに気付き、今後の生活や学習に活用しようとする態度を育む。
単元の評価基準
- 知識・技能:具体物の操作などによって、分数の表し方を理解することができる。
- 思考・判断・表現:元の大きさと等分した大きさの関係等に着目して分数について考えたり、2つの数量の関係に着目して倍や分数の意味について考えたりすることができる。
- 主体的に取り組む態度:具体物や図を用いて数学的に表現・処理できることのよさに気付き、今後の生活や学習に積極的に活用しようとしている。
2年生の分数で徹底すべきポイント
2年生の分数で徹底すべき3つのポイント
結論、大事なのは以下の3つである。
- 「½」「⅓」「¼」がそれぞれ半分、三等分、四半分の一つであることと表し方
- 見た目が異なっても、同じ大きさから作られた同じ分数は同じ大きさを表すこと
- もとの大きさが変わると同じ分数でも異なる大きさを表すこと
2年生で学ぶ分数は、「3年生以降で学ぶ分数の学習の素地となるもの」という観点に立ち、なぜ上記3つのポイントが重要になるかを説明していきたい。そのため、まずは小学校における分数の学習の全体観を確認しよう。
分数の学習の全体観
分数には以下の5つの分類がある。専門的な内容なので、まずは例でイメージをつかんで欲しい。
- 分割分数
何等分したうちのいくつ分かを考える数。何を1とするかによって大きさは変わる。
例:ケーキを5つに分けたうちの3つ分。 - 量分数
分数の値そのものを量と捉えた数。
例:⅗m=0.6m - 単位分数
分子が1の分数。分母が同じ数同士を比較するときに活用する。
例:3/5は単位分数⅕を3つ分。⅖は単位分数⅕が2つ分なので、⅗の方が大きい。 - 割合分数
2つの数の割合(比)として存在する分数。
例:3mは5mの何倍か ⇔ ⅗倍(3:5が分数になっているだけ。) - 商分数
割り算の答え(商)を分数で表したもの。
例:3÷5=⅗
ここで理解すべきは、分数には「数値」として扱う場合と「比」として扱う場合があるということである。上記の5種類は以下のように分けることができる。

「数値」と「比」のどちらに注目しているのかを明らかにすると、児童のスムーズな理解を促すことができる。2年生の分数で比としての分数に触れ、3年生で数値としての分数(量分数)を学ぶ流れになっている。そのため、2年生では比の素地である上述の3つのポイントに注力した授業を行うことが肝要だ。
スモールステップで考える「分数」
上述3つのポイントを徹底する際、以下の手順に従って「図形を用いた学習」から「数を用いた学習」への転換を丁寧に行うことが大変有効である。
- 「½」の図形的理解
- 同じ1であれば大きさが同じであることの図形的理解
- 「⅓」「¼」の図形的理解
- もとの大きさが変わると分数の値が同じでも大きさが異なることの図形的理解
- 数的要素(個数)を加えた等分の理解
- 手順1~4の数的理解
それぞれを詳しく説明する。
1~3で強調したいこと
折り紙をきれいに半分にするよう指示し、児童の作った半分を取り上げて½の説明をする。

ここでは、違う形であっても「もとの大きさ」が同じであれば同じ分数の大きさは同じであることを強調する。
4. もとの大きさが変わると分数の値が同じでも大きさが異なることの図形的理解
4の目的は、「比としての分数」という考え方の素地を定着させることである。つまり、½を「0.5」という数値としてではなく、「半分」という比の側面を理解させたい。そのため、次の図を見せ、違和感を覚えさせる。

「皆でピザを½ずつ食べよう!」と言いながら、違う大きさのピザ(の箱等)を見せても良いだろう。「先生だけずるい!」という発言が出たら儲けものだ。
その後、大きさの違う折り紙で、それぞれの½の大きさが異なることを体感させると良い。
5. 数的要素(個数)を加えた等分
ピザに具材を付け、「½」「⅓」「¼」を考えさせるだけで十分である。

「このピザは、サラミが入っていないから同じじゃない!」という発言を引き出しつつ、具材を増やしたり、分数を変えたりして演習をすると良い。いきなり個数のみにするのではなく、切り方が想像できる図形的な問題に数(個数)の要素を加えることで、元の大きさが数(個数)でも同じように考えられる活動だ。
6. 数的理解の場面で行うべきこと
12個のおはじきの「½」「⅓」「¼」を考える問題に取り組む。5でサラミが12個の問題まで扱えていれば、ここで躓くことはないだろう。
苦戦する児童が多い場合は、「●等分する」と「1個分がいくつかを答える(数える)」の2つの作業に分割して練習すると良い。「●等分する」とは、1年生「10よりおおいいかず」で学んだ5の塊や2の塊を作る練習と同じである。場合によっては10の塊を作る練習から入っても良いだろう。その後「1個分がいくつかを答える(数える)」に移る。分けられたらあとは数えるだけなので、大きな苦労はない。
執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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