本単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、2~3桁の数に2桁の数をかける乗法の計算が確実にできる能力を養う。また、乗法において成り立つきまりを理解し、今後の日常生活や学習に活用しようとする態度を育む。
単元の評価基準
- 知識・技能:2~3桁の数に2桁の数をかける乗法を、筆算で計算することができる。
- 思考・判断・表現:既習の2~3桁の数に1桁の数をかける乗法の筆算の仕方に着目して、2~3桁の数に2桁の数をかける乗法の筆算の仕方について説明することができる。
- 主体的に取り組む態度:既習の筆算とのつながりから、数理的な処理の良さに気付き、日常生活や今後の学習に活用しようとする。
スモールステップで学ぶ「かけ算の筆算(2)」の授業案
1. 2桁の数×1桁の数
復習として、12×3の計算と筆算の表し方について考える。
筆算は計算の順番を含め、必ず板書する。
その際、かけ算の意味を振り返り、計算式に適した図も合わせて板書しておくと良い。

2. 2~3桁の数×2桁の数
(1) 2桁の数×2桁の10の倍数
20×3を用いて、10の倍数を含む乗法は一の位に0を付け足せば良いことを振り返る。
その後12×20について考え、先ほどの計算と同じように解けることに気付かせる。筆算で表すとどうなるかも話し合い、計算の順番を含めて板書する。
想定する児童の回答は以下の通り。

その際教員は、正しい筆算の書き方を教えない。代わりに「0だけ分けて考える」というポイントを念押しする。
(2) 2~3桁の数×2桁の数(10の倍数以外)
12×23について考える。
式を図で表すと以下の通りである。

画像から、12の塊が20個より3個多いことに着目し、1、2(1)の和が答えになるのを確認する。ここで、かける数の「一の位と十の位を分けて考える」というポイントを伝え、2(1)とのつながりに気付かせる。2(1)は1桁目が0なので、1の位に影響しないことを念押しした後、2桁の数×2桁の数における筆算のかき方、計算の順番について教える。

2(1)の正しい筆算の書き方も必ず確認をする。
繰り上がりの計算についての解説をした後に、計算演習を行う。お勧めの演習法は次の章にまとめてあるので、参考にしていただきたい。
上記の計算が定着した後、3桁の数×2桁の数について考える。2桁の数×2桁の数の計算方法を根拠に、3桁の数×2桁の数の計算方法を児童に説明させ、全体で正しい計算方法を共有する。その後同様に計算演習を行う。
ICTを活用したお勧めの計算演習
筆算は計算だけでなく正しく書くのに時間を要する児童も多いので、問題演習にかかる時間は児童によって大きな差が生まれる。早く終わる児童は大変退屈で、解くのに時間のかかる児童は皆のことを気にしながら解き進めなければならないのだ。それらの問題は、ICTを用いた簡易計算ドリル(以下、「めくりドリル」と呼ぶ)を活用し、部分的に自由進度学習を取り入れることにより解決できる。めくりドリルとは、問題カード(⇒解説カード)⇒答えカード⇒問題カード⇒……(以下繰り返し)となるように並べたICT上のドリルのことである。
授業で筆算の演習をしている際に、なにも書けずに固まってしまい、教員の答えをただ待っているだけの児童はいないだろうか。その原因は以下の2点である。
- 筆算の書き方がわからない
- 筆算の計算の順番がわからない
それらを改善するため、解説カードを活用することがお勧めだ。筆算の書き方や計算の順番を解説カードとして入れることで、児童にとって最適なタイミングで、教員が時間をかけずとも解説を見られる。ここには答えまで記載されていないので、解説をみる抵抗感がほとんどないのも魅力の一つだ。
書き方と順番を同時に覚えることが難しいのであれば、体得するタイミングをずらしても良い。順番は以下の通り。
1) 問題カードを筆算の穴埋めにし、計算の順番を覚えさせる。
2) 筆算の穴埋めを解説カードの方に移し、書き方を忘れたら見られるようにする。
問題カードは、問題のみを記載する。

3) 解説カードから少しずつヒントを減らし、筆算の書き方も自然と身に付けられるようにする。
このような工夫により、筆算が苦手な児童でも主体的に解けるようになる。筆算が得意な児童に対しては後半に思考力を問う問題を入れておくことで、基礎問題を解き終わった後の時間も有効に活用できる。また、授業中に教員の手が空くので、悩んでいる児童やより発展的な学習を求めている児童の対応もできる。作成に多少の手間はかかるが、一度作ってしまえば学校全体で使いまわせるのが一番の魅力だ。
【思考力を磨く】発展的なドリル演習
虫食い算の活用で筆算が得意な児童の学習意欲を刺激することも有効だ。
筆算の一部を虫食いにすることで、逆算の簡単な演習ができる。めくりドリルに数問入れておくだけで、教えずとも児童は自然と考えられるので良いだろう。

執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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