本単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、未知数を表す□を用いて数量の関係を式にすることができる能力を養う。また、□を用いることによって数量の関係を簡単に式に表したり、特徴を読み取ったりできる良さに気付き、今後の日常生活や学習に活用しようとする態度を育む。
単元の評価基準
- 知識・技能:未知数を表す□を用いて数量の関係を式にすることができる。
- 思考・判断・表現:問題場面を、未知数を表す□を用いてできた式で考えたり、説明したりできる。
- 主体的に取り組む態度:未知数を□を用いて表すことで、問題場面を式や図で表せる良さに気付き、日常生活や今後の学習に活用しようとする。
「□を使った立式」のメリット
「□を使った立式」のメリットは、直感的な立式が可能なことである。問題場面を式にする場合、ほとんどの児童がキーワードを参考にそれに対応した四則演算子(+-×÷)を用いるだろう。
キーワードの参考:

しかし、何を未知数(求める数)にするかによって、キーワードが適切に機能しなくなることがある。
<キーワードが機能する例>
りんごが12個、みかんが15個あります。合わせていくつになりますか。
12+15=27(個)
<キーワードが適切に機能しない例>
りんごが12個、みかんがいくつかあります。合わせて27個あるとき、みかんは全部でいくつありますか。
27-12=15(個)
キーワードはどちらもたし算を連想する「合わせて」だが、未知数を求める際にひき算を使う場合もある。これが問題場面の立式を難化させている。
しかし、□を使った立式を活用することにより、キーワードを適切に機能させ、直感的な立式が可能となる。
27-12=15(個)⇒12+□=27
□を使った式の解き方を新しく理解する必要はあるが、文章題を適切に読み取り、場面に合わせた複雑な立式を考えるよりも、機械的な計算を理解する方がはるかに簡単だ。
我々教員は、文字式、方程式の概念を知らない児童に対して、この「文章題の読み取りや立式の難しさ」と「□を使った式の機械的な解き方とその簡単さ」を同時に伝えなければならない。逆に言うと、それが適切に伝われば、児童は進んで□を使った式を活用するだろう。本単元では、中学校数学の根幹となる考えを身に付けることになる。小学校の先生方には、ただ教え込んで使えるようにするのではなく、この立式のメリットを適切に伝え、文字式や方程式への抵抗感が少しでも和らぐような指導をしていただきたい。
ICTを活用したドリル学習の方法
本単元は、□を使った立式、計算に慣れるうえで、ICTを用いた簡易ドリル(以下、「めくりドリル」と呼ぶ)を行うことが有効である。めくりドリルとは、問題カード(⇒解説カード)⇒答えカード⇒問題カード⇒……(以下繰り返し)となるように並べたICT上のドリルのことである。

計算練習になるのはもちろん、画面を切り替えるだけで文章題もテンポよく解き進められる。問題を事前に用意しておけば、理解の早い児童はより難しい問題を解く時間ができ、基礎学習の必要な児童は基礎問題をじっくり考えることができる。つまり、同じ授業を受けながらも自分の理解度に合わせた学習ができるのだ。
「□を使った立式」習得の流れ
1. □をつかった計算の習得
□を使った立式にメリットを感じられるのは、□を使った計算ができる人だけだ。まずは□を使った計算の仕方を教え、これがいかに簡単な計算なのかを児童に理解させる必要がある。
逆算はとても難しいが、「めくりドリル」+「ペアワーク」の活用により、教え込むのではなく発見学習と協同的な学びの力を借りると良い。めくりドリル活用時は教員の手が空いているので、先に進めないペアのフォローに力を注ぐこともできる。また、逆算の考え方を完璧にする必要はなく、□の式を導入するために直感でわかる簡単な計算のみ逆算でできるようになれば十分である。
2. □を使った立式の習得
□に慣れ親しんだところで、□を使った直感的な立式を行う。
ここでは以下の手順で学習を進める。
- □を使った項(数のまとまり)を作る練習
- □を使った立式のメリット確認
- □を使った立式(全体)の練習
一気に全体の立式に進んでしまわないことが大切だ。□の立式に慣れない状態で全体の立式をするには、線分図等を用いて文章題を丁寧に整理する必要がでてくる。

しかし、線分図等で表すのであれば、□を使うまでもなく答えを求めることができてしまう。つまり、児童目線ではすぐに解ける(□を使う必要がない)のにわざわざ遠回りして新しい計算で解くことを強要されるのである。その際いくら□を使った立式のメリットを話しても、児童には伝わらない。
直感的な立式ができるのが□を使うメリットなので、直感で□を使えるような練習を先にしておく必要があるのだ。
児童に必要性が伝わればあとは練習あるのみ。めくりドリルを活用して反復練習を行い、定着を促せばよい。□を使う目的を明確化することで、□を使った計算の定着度は大きく変わるだろう。
執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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