説明文の具体例を選択する方法を教える(2)(見目宗弘先生)

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はじめに

第61回読売教育賞を受賞した見目宗弘先生の実践です。

説明文の主題をより説得力のあるものにするために用いられる具体例。その取捨選択がどのように行われるかを児童に教え、作文を書くときに活用できるようにするための指導案になっています。

この記事では具体例選択の考え方を作文で使えるようになるための実践を紹介します。また、(1)では具体例選択を学術的に考え、それを児童に教える実践が紹介されているので、そちらも合わせてご覧下さい。
説明文の具体例を選択する方法を教える(1)(見目宗弘先生)… http://p.tl/qsoc

 違った仲間から具体例を選択させる授業

「多様性」にもとづく選択を児童に定着させるため、説明文を書かせる単元を設定した。全4時間の授業で、夏休みの出来事を説明文に書き、友達と紹介し合うものである。

 単元名 夏休み事典作り

第1次 主題をもとに構成を考える(1時間)
第2次 構想メモを完成し、構想メモをもとに記述する(2時間)
第3次 互いに作文を読み、コメントする(1時間)

 第1次

はじめに、作文の構成の見本を示す。

この見本は下の図のように「外出して楽しかったこと」の複数の具体例の中から「キャンプのスイカ割り」が、「家で楽しかったこと」の複数の具体例の中から「お手伝い」が選ばれたものである。そして、2つの具体例は、「楽しい夏休み」という結論を異なる視点から説明している。

この説明後、児童に主題文(おわりの文)を決めさせ、主題文に合う具体例を3つ以上考えさせた。そして、具体例を仲間分けさせ、別々の仲間から具体例を1つずつ選ばせた。

 第2次・第3次

次の作文は、このような過程を経て書き上げた女子児童の作文である。

この児童は下の図のように、「がんばったこと」の「書道とプール」の具体例の中から「書道」を、「楽しかったこと」の「学童預かりと旅行」の具体例の中から「旅行」をそれぞれ選んだ。そして、その異なる2つの視点から「よい思い出のできた夏休みでした。」という結論を説明した。

クラス全体の具体例の選択では、ほとんどの児童が別々の仲間から1つずつ具体例を選択できていた。仲間分けの観点は次のようになった。

1 場所による仲間分け

教員の例文と同じ仲間分けである。例示の他に「家から近くのこと」と「家から遠くのこと」という仲間分けもあった。

2 内容による仲間分け

「がんばったこと」と「楽しかったこと」、「遊び」と「習い事」などだった。

3 人による仲間分けである。

「友達としたこと」と「家族でしたこと」、「親戚としたこと」など、誰とやったかという仲間分けである。

4 その他

 授業の考察

児童は平均4.6個の具体例をあげ、仲間分けし、それぞれの仲間から1つずつ具体例を選ぶことができた。ほとんどの児童が「多様性」を意識した具体例選択ができたことが成果としてあげられる。

課題は主題が限定された時の具体例の選択である。「その他」の児童は、いずれも主題が限定され、取捨選択ができなくなってしまった児童である。

例えばある児童は、はじめ「楽しい夏休みだった」という主題文をもとに具体例を5つ考えた。具体例を整理した時に「ふだんできること」と「夏休みにしかできないこと」という仲間分けをした。ここで児童は、「夏にしかできないことを楽しんだ夏休みだった」という新たな主題を発見したのだ。その新たな主題に基づく具体例は2つしかあげておらず、選択せずとも具体例が決まってしまった。

この場合は、具体例を仲間分けすることで主題が更に明確になり、具体例が絞られたので、具体例選択の手続きはできたと判断した。

一方、別の児童は、具体例は複数浮かんだが、書きたいことは「家族と東京に行ったこと」の1つだけというケースだった。
その具体例を複数に分け、その中から特に言いたい部分を選択するように指示したが、児童は時系列順に書き上げてしまった。このような場合の指導のあり方が課題としてあげられる。

 編集後記

夏休みの作文という、児童にとっても取り組みやすい題材を扱っています。この実践を行うことによって、ただの作文から「主張のわかりやすい作文(説明文、小論文)」への架け橋が築かれることでしょう。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 高橋遼)

 実践者紹介

見目宗弘(けんもくむねひろ)先生
栃木県日光市立落合西小教諭。
第61回読売教育賞最優秀賞受賞。(受賞内容は「意見を持たせる国語科教育」)。

この記事の出典…「説明文の「なか」の具体例をいかに選択するか—児童に帰納の知識を教え、結論の「確からしさ」を高める取り組み—」宇都宮大学国語教育学会『宇大国語論究』(23)より(2012)

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