春のうた(草野心平) ~”ほっ”はどうやって読むか~ (シリウス)

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

「春のうた(草野心平)」は、春の訪れを感じさせるいい詩である。この詩のイメージを膨らませる授業をした。前書きの部分を隠しておいて

この詩で春になって喜んでいるのは誰でしょう。

前書きがないと迷うようである。

  • 草野さん
  • ちょうちょ
  • 犬のふぐり
  • かえる

 どれが一番いいか手を挙げさせると〈草野さん〉〈風〉〈かえる〉に手があがった。理由を聞いてみると〈かえる〉派が答えてくれた。

〈かえる〉

  • ケルルンはかえるの泣き声だから。
  • かえるは水が好きだから。

いぬのふぐりが気になるようなのでこの言葉を調べてみた。辞書で調べ始めた子がいたので、他の子もつられて辞書を引いた。

“いぬのふぐり”はどんな意味なのか辞書で調べてみよう。

残念ながら子ども用の辞書には「いぬのふぐり」「ふぐり」が載っていなかった。そこで、大人用の辞書を使って調べてみると【ふぐり】金玉の意味の雅語的表現。

この意味にみんなは大騒ぎ。「犬の金玉があってかえるは嬉しいかな?」などと言っている。実は、いぬのふぐりとは春の野草で、青い小さな花であることを写真と実物で見せた。かえるはこんな花の下に冬眠しているのである。

この詩には「ほっ」が何度も出てくる。この読み「ほっ」について考えた。

「ほっ」が何度出てきますか?(4回)  どんなときに「ほっ」と言いますか。

  • 安心した時
  • 疲れた時
  • 安心した時
  • びっくりした時
  • ホッとした時
  • やっとできた時

いくつもの「ほっ」が出てきた。どれがよいか読み方を変えて試してみた。
どの「ほっ」がいいか、「ほっ」を当てはめて最初の二行を読んでみよう。

どれも変で笑ってしまう。中には冬眠から目覚めていかにも疲れた「ほっ」もあった。ここはどうやって読んだらいいのか尋ねてみると「うれしそうに」という意見が圧倒的であった。

「ほっ」が嬉しいということがわかったところで、その嬉しさのわけを考えた。

かえるは、いくつ春を感じていますか。

出されたものは次の七つであった。

  • ほっ 嬉しいな。
  • ほっ まぶしな。
  • みずはつるつる。
  • かぜはそよそよ。
  • におい。
  • いぬのふぐり。
  • 大きなくも

かえるの鳴き声以外はみんなあげられたのであるが、おかしいものがないかどうかを検討をした。

この中で春を感じるのにはおかしいと思うものがありますか

〈みず〉〈風〉〈におい〉〈いぬのふぐり〉はよいとされた。〈ほっ うれしいな〉〈ほっ まぶしな〉〈大きなくも〉が検討の対象になった。

〈ほっ まぶしな〉

  • まぶしいのは太陽を見てだから、かえるは太陽で春を感じたと思う。

〈ほっ うれしいな〉

  • うれしいなは、春に関係することが入っていないから違う。
  • うれしいなは、春に関係ない。

〈大きなくもが うごいてくる〉

  • 大きなくもは春とどういう関係があるか。大きな雲は、秋も冬も動いている。
  • 雲は春に入らない。他の季節にもあるから。
  • 「春の歌」という題名だから、春に関係するものが入っているから雲もそう。

結局、雲は決着がつかなかったが、かえるの感じた春は5つか6つとなった。

次の時間、かえるはどこにいるのかについて検討した。

今、かえるはどこにいるでしょうか。絵に描いてみましょう。

出された考えが6つであった。

  • 土の中
  • 穴の中
  • 水の中
  • 石の上
  • 地面の上
  • 出てくる途中。

それぞれの理由を尋ねてみた。

〈土の中〉

  • かえるは冬眠していたから。

〈水の中〉

  • “みずはつるつる”と水を触った感じがするから

〈地面の上〉

  • 昨日、学校の帰り道にかえるが田んぼの上にたから。

〈穴の中〉

  • かえるは土を掘っていて太陽が見えてまぶしいから。

〈石の上〉

  • いろいろなところを見ているから少し高いところにいると思った。

〈出てくる途中〉

  • 久しぶりに土の中から出てまぶしいから少しだけ顔を出した。

理由を聞くとそれぞれに考えがあることがわかり面白い。次に

この6つの中で一番おかしいものはありますか?

〈土の中はおかしい〉

  • 土の中にいたらから、まぶしいや風とか匂いとかは感じない。

〈穴の中はおかしい〉

  • 穴の中は太陽や雲はわかるけれど、いのふぐりや水はわからないから違う。

〈石の上はおかしい〉

  • 石の上だと水のつるつるはわからない。

 → 石の上にある草から水が落ちてきて分かった。

こうして検討してみると、詩がより具体的にイメージできる。時局〈土の中〉8人〈出る途中〉3人〈石の上〉2人〈水の中〉1人という意見分布になった。

次にかえると雲の位置関係について考えた。

かえると雲はどうなっているか絵を描きましょう。

出された考えが大きく分けて三つ。細かく分けると6つであった。

A1:雲が真上で2つ

A2:雲は真上で1つ。

B1:雲は近づき1つ

B2:雲は近づき2つ

B3:B1の左右反対

C :雲は去りゆく

この6つの中で一番おかしいのはどれですか?

〈B2〉

  • “大きなくも”とあるから雲が2ではおかしい
  • “大きなくも”が1つだから、大きな雲が1つと想像する。2つじゃないと思う。

〈C〉

  • “うごいてくる”だから、雲はこちらの方に来ないといけない。
  • Cだと雲はもういってしまったことになってしまう。

雲の数は1つ、これからかえるの方に近づいてくるということが確認された。この条件を満たすものは〈B1〉〈B3〉となる。短かな言葉からも検討することで、周りの様子がメージとして思い浮かべることができた。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

今回の指導案は、先生が春のうたという詩を引き出しにして、児童の気持ち、イメージをどのような発問で導き出すかというものでした。詩を読む際の姿勢や気持ちを養うことももちろんですが、一つの詩を通して児童同士の意見交流も図ることができる指導であり、とても参考になる指導案でした。教員になる際には、自分自身が詩の読み方を考える必要があり、普段から詩を読むこと、感性を磨くこともひとつの勉強になるのではないでしょうか。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 坂本一途)

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