1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間教員をなさっている柴田克美先生がホームページに掲載されているさまざまな教育実践法の中の一つを紹介しています。
http://pinokio.blog.jp/
本記事では、鉄腕アトムをつくるという全42時間の単元をご紹介します。ロボットについて考え、実際につくり発表するという体験を通して、国語・道徳・算数・図工・理科・社会など様々な科目に関係する学習を行うことができます。
2 実践の内容
「鉄腕アトムをつくろう」指導計画(全42時間)
- ステップ1 ロボットを調べる(15時間)
- ステップ2 人間とくらべる(3時間)
- ステップ3 設計図をつくる(3時間)
- ステップ4 製作をする(20時間)
- ステップ5 発表をする(3時間)
- ステップ6 振り返りをしよう(1時間)
①ロボットとはどういうものだろうか。調べてみよう。
- 自立歩行型ロボット(鉄腕アトム)
- リモートコントロール型ロボット(鉄人28号)
- 部分サイボーグロボット(スターウォーズ)
- 人間型以外のロボット(掃除ロボ、ビデオ、洗濯機、エアコンなどの家電品)
★自分の調べたロボットはどの型になるのだろう?分類してみよう(国語)
・ロボットの出てくる映画を見よう
☆ロボッツ ☆スターウォーズ ☆A・I ☆アイ・ロボット
☆鉄腕アトム ☆鉄人28号 ☆ドラえもん ☆ガンダム
それぞれの感想を話し合おう・・・感想一覧表(別紙)
調べてわかったことから、自分が考えたこと、気がついたことを書こう。
②ロボットに心(感情)を持たせることはできるのだろうか。(道徳)
- センサーの工夫をする
- AIBOのように感情を持つこともできる。
- アニメのロボットはみんな感情を持っている。
- ロボットはロボットで人間の感情にはかなわない。
- 脳や体、関節の仕組みを調べよう。(理科)
- 昆虫を飼育してロボットのように操ることはできるだろうか。(理科)
③どんなロボットをつくるか、考えよう。(図工)
★基本的には箱形ロボット(自分が中に入る、あるいは立たせる工夫をする)
- デザイン(パソコンでデザインを考えよう)図形を組み合わせる。
★箱の形(算数)を生かす
- 材質(木材、金属、布、紙、プラスチック、)
- 材料(リサイクル品を活用しよう)電気製品を組み合わせる。ペットボトルや再生服、ありとあらゆる不要品を形からイメージしたり、部分を切りはなそう
- 予算(コストをなるべくかけないためにはどうしたらいいか考えよう)(算数)
④設計図に基づいて製作をしよう。(図工、国語などの時間も合わせて)
1号(紙上で簡単に描く)、2号(粘土で試作品を作る)、3号(完成品)をつくろう。
・パーツを英語で言ってみよう。
腕はハンド 頭はヘッド 部品はパーツ 足はフット ・・・・・
ロボット同士で簡単な挨拶をしよう。紹介し合う。
ナイスツーミットユー等・・・・
★豆電球や磁石、おもりやゴム、電池などを使って今までの理科の知識を生かした部分をつくろう。物作りおもちゃランド(理科)
- 目や胸や頭を豆電球で光らせる
- 磁石で顔の表情を変えられるようにする
- 腕を曲げてもゴムで元に戻るようにする
- 基盤を胸や足や腕につけてロボットらしくする
- 持ってほしい感情を紙に書いて心臓の箱の中に入れよう(心を込める意味)
腕からつくる。体、足、最後に顔の順番。
★ロボットの説明書を作ろう。(国語)
★お話の絵を描こう(市美術展出品作品・図工)
自分のロボットを宇宙に浮かべてバイオリンの音を聴かせよう
⑤ロボットコンテスト(発表会)をやろう。
・ロボットのファッションショー(一人ずつ、舞台に出て、紹介)をしよう
審査員を決めよう。(特別審査員8人、一般審査員24人)
ポイント制にする 特別審査員のポイントは一般審査員の2倍
特別審査員は今までの総合の動きでとても頑張った人を教師が指名する。
☆動き方を工夫する 照明をあてる 拍手をする(讃え合う)
- 下の学年、友だちをよんでいっしょに遊ぼう。「ロボットランドへようこそ!」
- 友だちの良さを見つけよう。ふり返りをして自分の学び方、友だちの良さを記録しよう。
- 家の人にもロボットを見てもらおう。(発表会1月27日(土)家族参観会にて)
⑥ガンダムホビーセンターに行ってみよう
- 地元の静岡工場でガンダムをつくっているんだ。
- 工場の人の苦労や工夫を聞いてみたい。
- 工場の仕組みを知りたい。(社会との学びの共振)
⑦ふり返りをしよう
「ロボットは人間の生活を豊かにするだろうか」話し合おう。(フリートーク)
◆オリエンテーション用のプレゼンがあります。
3 講師プロフィール
柴田克美(本名)
静岡県藤枝市生まれ。明治大学卒業後公立小学校教諭として33年勤め現在に至る。
その間、学研の「学習」「イマジン学園」連載、明治図書各雑誌の執筆、静岡出版文化会の「夏休みの友」など数々の著作がある。
「知的興奮・算数ドリル」(明治図書)はアドベンチャー算数として好評を博した。
近年は大手「アマゾン」の電子本サイトにてペンネーム剣崎克彦の名で「究極のダイエット」「雨ニ負ケ剣崎克彦詩集」「脳を鍛えて120歳」など多彩な分野へも執筆活動を続けている。
幼児教育の重要性を唱え、自分の息子は東大へ入学させている。現在、認知症の予防をするため介護施設をめぐりお年寄りに学ぶことの楽しさを届けている。静岡市在住。
近著
「教室レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動&アイデア事典(仮称)」「学級開き&アイデア事典(仮称)」(いずれも明治図書2015/2、発売予定)
柴田克美教育大全集は開設から半年あまりでアクセス1万件突破。他の実践も多数掲載。こちらもあわせてご覧ください。
http://pinokio.blog.jp/
4 編集後記
この実践は図工や国語、算数に理科、社会に道徳とまさにあらゆる科目が関連づけられている「総合的な学習」です。
その中でも私が特に気になったのは「ロボットに心を持たせることはできるのか」という、道徳の授業と関連させた学習です。ロボットをつくる際に図工や算数の要素が入ってくるのはよくあることだと思いますが、ロボットも人間のように心を持つことができるか、という話にまで掘り下げて学習の機会を創造している点が、さすが柴田先生の実践だと感じました。人間と会話をしたり、人間と同じような作業をできるロボットはあるけれど、心を持つことはできるのかな・・・と考えてしまいました。
自分が小学生の頃にこのような授業がもしあったとしたら絶対に受けてみたいと思える、とても楽しそうで魅力的な実践だと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 内藤かおり)
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