逆説の日本史 ~井沢元彦氏の視点

井沢氏の視点からみた日本史の通史

ハードカバーは22巻が出版され、文庫版も追って19巻まで出版されています (2016/8/14 時点) 。 週刊ポストでも息の長い連載を続けており、はたしていつになったら現代史に突入するのかも興味深 い。

各時代を斬新な説を立てながら解説し、「言霊信仰」であるとか、「当時の常識であることは、歴史資料には記載されない」など、随所に興味深い考えが示されています。学校で習う歴史、学会で研究されている歴史とはまた違った視点を導入している点には要注目です。読者が深く細かい知識を持っていることを前提にして書かれた学者の本とは違い、週刊誌を読むぐらいの気楽さで読むことができるように書かれているのもありがたいです。歴史学者が専門分野にこだわりすぎて狭い視野で限られた時代の範囲を扱うことに終始しがちであるという批判にも頷けるものがあります。
第 1 巻の内容だけでも、 「日本史の呪術的側面の無視ないし軽視」「史書か ら抹殺された応神天皇の本当の父親」 「なぜ韓国人の姓は“一字姓”に変わったか」など、そうとうな寄り道をしながら古代史が語られていきます。古代史を語るのに信長や秀吉、桓武天皇にまつわる諸説が持ち出され、広い視野で歴 史を再認識していこうという井沢氏の意気込みが感じられます。
歴史を週刊ポストに書き下ろされた時点の現代の政治状況に結びつけて解説している部分も多く見られ、井沢氏の政治的ポリシーを読み取ることもできます。週刊ポストでの初出が 1992 年で、20年を超えるとなっているわけで、その「現代を引き合いに 出している部分」が現代の政治状況プチ 15 年史として読み取れるという結果にもなっています。
全巻を読破することに躊躇するのであれば、最初の3巻を読むことを目標にするのもよいと思います。 井沢氏の「歴史の見方」が 3 巻までに色濃く示されています。小学校教師として子供に歴史を教えるのは 6 年を担任した時の 6 か月あまりの期間です。子供に教えるための歴史の知識を身につけるというだ けではなく、歴史に対するひとつの見方を学ぶという意味でも有効であると思う。教師として歴史から 学ぶべきことは、What/When/Who/Where よりむしろ Why/How であるかもしれません。「歴史を学ぶこと」と「歴史から学ぶこと」がいかに奥深いことであるのかを考えるきっかけにもなるシリーズです。
なお、井沢氏の総論に対しても、各論に対しても、インターネット上などで随分多くの批判が寄せられているのも見られます。本書を参考としながら、併せて諸説をバランスよく吸収できるように読書をし ていくことが必要だと思います。

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