【書籍紹介】『「読解力」がほしい大人が小学1~6年の国語教科書でやり直す本 』(福嶋隆史先生) 『スイミー』の原稿も紹介!(株式会社横浜国語研究所 ふくしま国語塾Webサイト転載)

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目次

1 はじめに

本記事は、「最新情報「読解力」がほしい大人が小学1~6年の国語教科書でやり直す本」2021年11月25日発売の福嶋隆史先生著『「読解力」がほしい大人が小学1~6年の国語教科書でやり直す本』(大和出版)について、https://www.yokohama-kokugo.jp/2021/11/19/kyoukasyo/より編集のうえ転載したものです。加えて本書には掲載されていないスイミーの原稿も転載した記事となっております。当記事よりさらに詳しく当書籍について知りたい方は、転載元も上記のリンクから併せてご覧ください。

2 この本の特徴

以下は、株式会社横浜国語研究所 ふくしま国語塾Webサイトから「最新情報「読解力」がほしい大人が小学1~6年の国語教科書でやり直す本」より抜粋・編集しています。

本書のねらい

①「東京都は狭いが、北海道は涼しい」

②「東京都は狭いが、北海道は広くて涼しい」

③「東京都の面積は約2200平方キロメートルだが、北海道は広い」

④「東京都は狭いが、北海道は広い」

——このうち、最も「分かりやすい」ものはどれですか?

国語の教科書は、残念ながら、そういう「分かりやすい」文では書かれていません。それを「分かりやすく」していくプロセスを経て、あなたの読解力は着実に向上していきます。それが、本書のねらいです。

読解の要諦たる技術に重点化

この本は、小学校の教科書を題材にしているという意味では「入門書」ですが、ふくしま式をゼロから身につけるための本かと言えば、そうではありません。技術をゼロから身につけたい方は、『ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集[小学生版ベーシック]』等の問題集シリーズも、あわせてご利用ください。

では本書の位置づけは?下図をごらんください。

世に存在するさまざまな文章。言語技術の応用の産物。それが「枝・葉」です。本書が扱っている教科書の文章はもちろん、一般書籍、新聞、ネット上の文章等、あらゆる文章がこれにあたります。一方、それらを根底で支えている言語技術が「根・幹」であり、ふくしま式はこれにあたります。ふくしま式問題集シリーズ等の多くは、根幹から枝葉へと、上に向かう流れで作られています。一方、本書は、枝葉から根幹へと、下に向かう流れで作られています

全ての技術を体系的・網羅的にトレーニングするならば、まず根幹からスタートすべきでしょう。しかし、全ての技術を鍛えるのもそれはそれで大変です。「より重要度の高い技術を重点的に鍛えたい」ということならば、枝葉、すなわち本書が適しています。本書は、特に「対比関係整理」の技術を重点的に扱っており、それによって本質的かつ実践的な国語力を身につけられるよう配慮しています対比関係整理は、読解の要諦です

3 コンテンツ一覧

以下は、株式会社横浜国語研究所 ふくしま国語塾Webサイトから「最新情報「読解力」がほしい大人が小学1~6年の国語教科書でやり直す本」より抜粋・編集しています。

小学1・2年

ものの名前——抽象・具体の概念は小学1年生で既に習っている!

自動車くらべ——相違点を見つけるためにはまず共通点を見つけよ

わたしはおねえさん——対比的変化をつかまえよ、それが物語読解のカギだ

おにごっこ——あなどれない複雑な説明文を「型」によって整理する

ベーシックトレーニングⅠ——「ふくしま式二〇〇字メソッド」を学ぶ

小学3・4年

わたしと小鳥とすずと——詩も実は論理的である

モチモチの木——物語は解説を嫌い、読解は描写を嫌う

アップとルーズで伝える——「分かる」とはどういうことなのか?

ごんぎつね——あなたもきっと「思い込み」で読んでいる!

ベーシックトレーニングⅡ——「ワンセンテンス」を構成する力を高める

小学5・6年

言葉の意味が分かること——言葉が先にあり、対象は後から生まれる

大造じいさんとガン——全体像を鮮やかに整理する「図形的比喩」とは?

時計の時間と心の時間——〈芸術〉の前に〈技術〉を学べ!

やまなし——「クラムボン」の意味を考えるのは〈芸術〉だ

ベーシックトレーニングⅢ——類似したものごとの相違点を追究する

4 『スイミー』の原稿を紹介!

ここでは、著作権許諾の関係上『ふくしま式「大人の学び直し」BOOK「読解力」がほしい大人が小学1~6年の国語教科書でやり直す本』に掲載できなかった原稿をattachment://id/61b00213fb29d3000018e0c6/からそのまま転載しています。実際の原稿もお読みになりたい方は転載元をご確認ください。以降『スイミー』の本文を参照しながらお読みください。

問題

このお話は、どんなお話でしたか。スイミーの心情変化と、その変化の理由を軸にして、まとめなさい。難しいと思う場合は、次の②を先に解き、それを利用して書きなさい。

①が難しいと思う場合は、この②を解きます。次の図の空欄を考え、埋めなさい。

解説

物語というのは、人物の「変化」を描くものです。 小説、漫画、ドラマ、映画…… 何でもそうです。その変化は多くの場合、マイナスからプラスへと向かいます。挫折、失敗、不運、不幸などを乗り越えて、達成、成功、幸運、幸福へと変化します。もちろん、マイナスで終わる物語もありますが、読み取り方によっては、それはやはりプラスへの変化であるととらえることができます(小学四年『ごんぎつね』など参照)。

そうした変化の全体像(骨組み)を整理すること。これが、物語を読むときに最も大切になるプロセスです。変化の全体像は多くの場合、主人公の「心情」の変化、あるいは主人公と他の人物との「関係」の変化によって整理できます。前ページの【A→ B】が、それにあたります。次に整理すべきこと。それは、「変化の理由」です。前ページの【C】が、それにあたります。これらを合わせて全体像を表現すると、「AがCによってBに変わった話」となります。これを私は、「対比的心情変化」の型と呼んでいます(単に「対比的変化の型」と呼ぶこともあります)。図で確認しておきましょう。

これを文にすると、【aに対してAだった主人公が、CによってBに変わる話】となります。例文を示しておきます。「大会出場(a)に対して自信を失っていた(A)主人公が、友だちとともにつらい練習を乗り越えたこと(C)によって、(大会出場に対しての)自信を取り戻した(B)話」Bの前のaは繰り返しになりますから、普通は省略します。

さて、ここで『スイミー』の答えを確認しておきましょう。次の文の傍線部が答えになります。

きょうだいたちをマグロに食われてしまったことに対して、恐怖感や寂しさ、悲しみを感じていたが、そっくりな魚のきょうだいたちを見つけ、彼らと力を合わせて大きな魚を追い出したことをとおして、恐怖感や寂しさ、悲しみを克服したというお話。

これが、『スイミー』を対比的心情変化の型に沿ってまとめた要約文です。先に示した、【aに対してAだった主人公が、CによってBに変わる話】という型と一致していることを確認してください。

心情については、本文の次の記述が根拠になっています。

「スイミーは泳いだ、暗い海の底を。怖かった。寂しかった。とても悲しかった」

ただ、その心情を最終的に「克服した」と言えるのかどうかについては、正直なところ明確な根拠はありません。そもそもの仲間たちの命は取り返せませんから、もしかすると最後の場面でもまだ、暗い気持ちにとらわれていたかもしれません。また、「海には、素晴らしいものがいっぱいあった。面白いものを見るたびに、スイミーは、だんだん元気を取り戻した」とあることから、逆にこの時点でかなり克服できていたのかもしれません。

「力を合わせて」の部分は、「みんな一緒に」「みんなが、一匹の大きな魚みたいに泳げるようになったとき」などの部分をもとにすればかなり確かだと思われますが、それが「克服」の根拠であるかどうかは、絶対とは言えません。単に「大きな魚」に報復できたという事実が根拠であるとも考えられます(まあ、最後の「大きな魚」が最初のマグロと同じとも書かれていませんが)。

多くの物語において、このような「根拠のあいまいさ」はどうしても残ります。特に、この『スイミー』はあいまいな点がいろいろあります。とはいえ、そんなストーリーでも、「だいたいの流れ」を推定することはできます。大切なのは、まず型どおりに考えてみること。 そのあと、型にあてはまらないと思える部分があれば、それをさらに追求していくこと。そうやって細部と全体を往復しながら読み解いていくのが物語の読解である、ということになります。

ただ、小学二年生の教科書に載る文章がそんなに「あいまい」でよいのでしょうか。その点については、はなはだ疑問です。多様な読みができる文章であればあるほど、一様な技術は育ちにくくなるのです。小学生というのは、基礎的な技術を一様に身につけるべき存在です。『スイミー』のような文章を、名作だからという理由だけで載せ続けるのは、好ましいこととは言えません。

今「名作だから」と書きましたが、表現を変えると、それは「道徳的だから」ということです。「小さな存在でも、力を合わせれば大きな力を発揮できる」。こういうメッセージを子どもたちに伝えたいからこそ、この作品は掲載され続けているわけです。ただ、そういう意図は「道徳科」においてこそふさわしいものであり、「国語科」ではふさわしくありません。国語が道徳と化していることをずっと訴え続けている石原千秋氏は、教科書教材の欺瞞を説きながら、『スイミー』について次のように述べています。「大きな魚は飢え死にしてもいいということだろうか」(『国語教科書の思想』ちくま新書)氏は、他学年の教材も例示しつつ、生物の「共生」をめぐる欺瞞に苦言を呈しています。

さて、内容的なツッコミはこのあたりにして、表現・読解の技法に戻りましょう。今回は、もともと文中に書かれていた心情語(気持ちを表す言葉)を利用しました。しかし、物語文においては心情語が直接書かれていないケースのほうが多いのが普通です。物語というのは、描写をとおして間接的に人物の心情を伝えるものだからです。そこで、少し練習しておくことにしましょう。

練習問題と解説

それぞれ、思い浮かぶ心情語を一つ以上挙げなさい。

(例)集合場所に着くと、誰もいなかった。みんな、どこへ行ったんだろう。時間は間違っていないはずだけど。

→ (疑問・不安・孤独感)

①リーダーにほめられている友人を見て思った。あいつより、おれのほうが実力は上だ。

(   ・   ・   )

②部下になぐさめられる結果になるなんて。今回は大失敗だったな。

(   ・   ・   )

③生まれて初めてバレンタインデーのチョコをもらった。

(   ・   ・   )

④チームの新しいメンバーと、趣味が同じだと知った。

(   ・   ・   )

⑤長期間準備してきた発表の日がやってきた。

(   ・   ・   )

さて、いかがでしょうか。考えられる答えの例を挙げてみます。

①負けん気・勝ち気・うらやましい・嫉妬・自信…… など。

②情けない・脱力感・後悔・反省・恥ずかしさ…… など。

③感動・喜び・歓喜・信じられない・興奮…… など。

④親しみ・親近感・関心を持つ…… など。

⑤緊張感・決意・覚悟・武者ぶるい…… など。

こうした語彙が多ければ多いほど、物語の全体像を、あるいは細部を、整理しやすくなります。なお、反対語としてセットで意識しておくことも有効です。

⑥恥ずかしい←→ (    )

⑦心細い←→ (    )

⑧尊敬←→(    )

⑨勇敢←→ (    )

⑩優越感←→(    )

こうした知識があればこそ、対比的変化を的確に読み取ることができるわけです(答えの例は、⑥誇らしい、⑦心強い、⑧軽蔑、⑨臆病、⑩劣等感、などとなります)

5 書籍情報

「読解力」がほしい大人が小学1~6年の国語教科書でやり直す本

6 プロフィール

福嶋隆史(ふくしま たかし)

株式会社横浜国語研究所 代表取締役

1972年、横浜市生まれ。早稲田大学第二文学部を経て、創価大学教育学部(通信教育部)児童教育学科卒業。日本リメディアル教育学会・日本言語技術教育学会会員。公立児童館・学童保育委員、公立教師を経て、2006年、ふくしま国語塾を創設。

ふくしま国語塾では、「国語力とは論理的思考力である」という明確な定義のもとで、日々の授業を行っている(対象:小4~高3)。長い文章をだらだらと読んだり書いたりする旧来の方法ではなく、論理的思考の「型」の習得に重点を置き、短い文章の読み書きを徹底的に行うことによって言語技術を高める。その結果として、生徒は、大人になってからも自分の人生を支えてくれる「スキル」を獲得する。こういった一貫した国語力育成法が高く評価され、他都県からの通塾生も多く、キャンセル待ちが続出している。その指導法は、新聞・TV・雑誌等、さまざまな場で幅広い支持を得ている。詳しくはこちら。(2022年1月現在)

主な著書

・『「本当の国語力」が驚くほど伸びる本』

・『ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集〔小学生版〕』

・『国語読解[完全攻略]22の鉄則(高校受験[必携]ハンドブック)』

7 転載元の紹介

株式会社横浜国語研究所 ふくしま国語塾Webサイトより「最新情報「読解力」がほしい大人が小学1~6年の国語教科書でやり直す本」
https://www.yokohama-kokugo.jp/2021/11/19/kyoukasyo/

『スイミー』の原稿
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(編集:EDUPEDIA編集部 安藝航)

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