1 はじめに
本記事は、岡篤先生のメルマガ「担任の3K労働~613号~616号」から引用・加筆させていただいたものです。
「子供たちを少しでも良い方向に変えたい、成長させたい」
という想いはどの教師にも共通するものですが、学級に多くの問題を抱えている状況ではどうすれば子供が変わるのか、どうなればよいのか・・・と言った目安がつかみにくいです。この記事では
1 子どもが変わる目安
教室では、あらゆる取り組みで子どもが変わることを期待するわけです。
では、どれくらいで変わるのか。当然、指導する内容と子どもによって変わってきます。ですが、「長くてどれくらいかかるか」あるいは「長くてもこれくらい」という目安があると指導する側の気持ちの上でずいぶんちがってきます。
半年
私は、半年だと思っています。半年あれば、指なぞりが全くできずに、音読どころではなかった子もなんとか、みんなと同じように音読できる場面が増えてきます。縄跳びの前跳びもできなかった子が見違えるようにスムーズに連続して跳ぶようになります。授業中、すぐに立ち歩いて、続けて坐っていられなかった子が45分間、曲がりなりにも坐れるようになります。
下記リンク先の記事もぜひご参照ください↓↓↓
超スモールステップ~指なぞりで音読を得意に~(岡篤先生) | EDUPEDIA
小学1年生にも二重跳び① ~全員、二重跳びができた!(岡篤先生) | EDUPEDIA
手立ての有効性と継続
もちろん、何もしなくて半年ではありません。有効な手立てがあり、それを継続していれば、少なくとも半年すれば、大きな変化を期待できるということです。半年と腹をくくれば、指導する側も小さなことに一喜一憂してはいるわけにはいきません。ときには、指示通りにしないときもあれば、できたと思ったことが次の日にできなくなっていることもあります。半年先に変わっていればいい、と思えば、いらいらが減るはずです。
2 「何回言ったら~」子どもは分かるのか
「何回言ったら、分かるんだ」と言った後、自分が何回、その子に言ったかを考えてみました。かなりの数を言ったはずですが、よく分かりません。
そこで、その日から何回言うと、100マス計算のスタートをスムーズにできるようになるかを数えることにしました。そのときは、問題を黒板に書き、子どもが10mm方眼のノートに写すことにしていました。日付を書いたり、定規で線を引いたりといったことは言われなくてもやることに決まっていました。その子は、「何度言っても」ぼんやりしたり、しゃべったりして、準備が遅れていました。
話を聞かせる ~「何度言ったらわかるの?!」と、怒り、嘆いてしまう前に | EDUPEDIA
数え始める
その日から、あらかじめその子に声をかけることして、何日かけ続けることになるか数えることにしたわけです。おかしなもので、それまでその子のだらだらした態度にいらだっていたのですが、いざ数え始めるとゆとりを持つことができました。
数え初めの初日です。
「○○君、百マス計算の前は、どうするんだった?」
その子に声をかけました。いつものように、ぼんやりしていたその子は、はっとして「問題を書く」と言うと、ノートに向い始めました。
(1日目)
私は、心の中で数えました。
次の日も
次の日も、やはりその子は、ぼんやりしていました。真っ先にその子に声をかけました。また、あわててノートに問題を写し始めました。
(2日目)
また、数えました。
へんな話ですが、なんだか少し楽しみになってきました。もう少ししたら、「○○君、今日でもう5回連続して注意されたぞ」ということにしよう、などと考えていました。
3日目、その子に変化が出ました。
3日目の変化
さぞ、多くの日数をいい続けることになるだろうと、覚悟していました。内心、「○回言ったぞ」と注意することを楽しみ(?)にもしていました。3日目、100マス計算の問題を黒板に書くと、いつものように、その子の方へ向かいました。「ほら、どうするの?」と言おうとしました。
その寸前、その子は私を見ると百マス計算の準備を始めました。
さらに変化
4日目。いつの間にか、その子の準備のおそさに対するいらいらがなくなっていました。むしろ、「何回、いうことになるか」ということに私自身の関心は集中していることに気付きました。
百マス計算の時間になりました。この日も真っ先にその子のところへ向かいました。すると、もう準備に取りかかっています。
「お、やってるねえ」
声をかけると、その子は顔を上げてにっこりとしました。
残念な結果
5日目以降は、声をかけるまでもなく準備に取りかかっていました。「ということは…」私は考えました。
「何回言ったら分かるんだ」の「何回」は、3回だったことになります。それなら、今までももっとたくさん言ってきたはずです。いらいらするぐらいに。
この3回と、今までの「たくさん」はどうちがうのでしょう?
どうやら、今回の取り組みは、残念な結果になったようです。その子の態度が悪いとばかり思い込んでしました。どうやら、私の指導の仕方が悪かったようです。
どうやら…
「何回言ったら分かるんだ」の「何回」が3回だと知ったとき、愕然としました。以前にだって、3回をはるかに越える回数「早くしなさい」「また忘れてる」と言っていました。それでも、その子に変わる様子はなかったのです。今回は、3回。その違いは何でしょう。
どうやら、今回は、意識して毎日連続して声かけをした、ということのようです。
10回もいかない
以降、「何回言ったら分かるんだ」と言いそうになったとき、「10回やってから考えよう」と思うようになりました。(つい「何回」を言ってしまうときもありますが)
すると、1つのことを教えるのにたいてい10回も必要ないということが分かってきました。ただし、「教える側が意識して、連続して、子どもの状態を見ながら声かけをしている」という条件です。
10回原則誕生
10回原則の誕生です。こうして自分の中で一つの概念ができました。自分にとってのキーワードですね。すると、今度はそのキーワードを使って考えることができるようになります。
「10回やってから、次のことを教えよう」
「このことを10回教えるためには、いつから始めたらいいか」
となるわけです。
10回原則が次のキーワードにもつながりました。
3 子どもが変わるのは半年
4月に床に寝転んでいたような子でも、縄跳びを回すことさえスムーズにできなかった子でも、半年指導を続ければ、大きく変わる可能性があります。
半年は、約180日です。
「180日すれば、子どもは変わる」
何となく、スッキリしません。授業日で数えるとどうでしょう。年間の授業日は、約200日。半年は、約100日。
方法10日、子ども100日
10日、100日、いい感じです。
真理は、シンプルであるという思いが私にはあります。色々とごたごたして説明している間は、まだまだ真理に到達していないというわけです。
もう一つ、私の思考法のくせに「3」があります。どの分野でも「3」で考えようとします。「3」で説明できるとうれしくなります。
百マス計算の準備など方法に10日、子どもを変えるのに100日。
あと1つ…。
こうなると、「あと1つ、1000に関するものはないか」と考えてしまうのです。といっても、自分が納得出来ないものでは意味がありません。自分の役に立たないキーワードなどもっていても使うはずがありません。
普段、私が考えていることで、1000に関すること…。
方法、子ども、に並んで違和感がないもの…。
ありました!
1000といえば…
1000に関係のあることを考えてみました。百マス計算の準備など方法に10日、
子どもを変えるのに100日、
方法、子ども、に並んで違和感がないもの…。自分がいつも考えていること…。
ありました!あるグラフが頭に浮かんだのです。
4 学校が変わるのに1000日
漢字力調査結果
それは、漢字力調査の結果です。ある学校で、漢字力調査を続けていました。結果を職員研修で共有していました。調査を始めて5年ほどたったときのことです。いつものように、職員研修で漢字力調査の分析結果を報告していました。取り組みの成果が着実に出ていたので、結果の一部をグラフにして示しました。きれいに右肩上がりに成績が向上しています。そのとき一人の職員がいいました。
「岡さん…。漢字力調査の結果と学校の雰囲気が比例してるね」
取り組みの初期からいた職員は全員納得しました。
学校は3年
最初は、単に漢字ができないから漢字の力を上げようとして始めた取り組みでした。漢字力調査に始まり、年間2回の漢字月間、夏休み、冬休みの宿題の統一、2学期に新出漢字を終えて3学期を総復習の期間に当てるといった取り組みを続けてきました。漢字月間では、全員がテストで9割以上取ることをめざし、合格したら校長印の押された認定証を渡しました。たしかに、自己肯定感、達成感、といったことも重視していました。この取り組みと結果の中に1000が入っていました。
3年といえば
漢字の取り組みを続けて、学校の雰囲気が変わったと実感をしたのは3年目くらいでした。漢字が苦手な子が増え出すのは、3年生からです。3年経てば、高学年は全員、漢字の取り組みを経ているわけです。鬼門の3年漢字もそれなりの手当を受けて経過しています。
校内漢字検定の初期
初期の頃は、校内漢字検定で自分の学年の問題で9割を取ることができなかった子が、どの学年にもいました。全学年単学級、児童数100名程の小さな学校でした。それでも、自分の学年の問題ではとても合格できないという子が10人位いました。約1割です。学校ぐるみの漢字の取り組みを始めるとそういう子たちが1年1年減っていきました。
3年経つと、自分の学年の問題で受けるのが普通になっていました。
5 0の原則
3年といえば、約1000日です!
方法の定着は10回、子どもが変わるのは100日、学校が変わるのは1000日
私の経験を整理すると以上のようなことになります。「0の原則」です。
4 執筆者プロフィール
岡 篤(おか あつし)先生
1964年生まれ。元神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。

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