「いつか、すべての子供たちに」(書籍紹介)

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いつか、すべての子供たちに

「ティーチ・フォー・アメリカ」とそこで私が学んだこと ウエンディ・コップ著 (英治出版)

 この本の著者であるウエンディ・コップはアメリカの貧困地域で行われている教育の質の低さに危機感を抱き、画期的なアイデアを思いつきます。アメリカでも有数のエリート大学を卒業する学生たちを 2 年間、貧困地域や農村地帯の学校に教師として送りこむというもの。
 その取り組みによって、経済的に恵まれない家庭の子どもたちの基礎学力が向上し、自分の人生を自 分の努力で切り開いていこうという前向きな姿勢が生まれてきたという実例が紹介されています。
 資金集めの困難や批判の声にもめげず、いまや「ティーチ・フォー・アメリカ」はアメリカの大学生 の人気就職先 10 位内にランクインするほどの団体に成長しました。2 年間 の教職経験を経た若者たちは、教育格差の現実の中、悩み葛藤しながら子どもたちと向き合います。終了後は教員を続けたり、また教育行政や地域改革のリーダーになったりするものも多く、団体がアメリカの次世代のリーダーを養成しているという面もあります。この取り組みは教育という側面からの 国家改革を目指したものといえるかもしれません。
教育格差の問題が日本国内でも無視できないものとなってきた今、アメリカですでに始まっているこの改革は、私たちの時代の学校教育のもつ可能性を示してくれています。と同時に、両国間における教員採用の方法、学校運 営の裁量権の違いなどの課題についても考えさせられます。 著者はこの本の冒頭でこう書いています。
「いつか、この国のすべての子供たちに、優れた教育を受ける機会が与えられるように。」
経済的な環境にかかわらずチャンスは誰にでも与えられ、努力が報われる社会であるべきだという著者の強い信念が伝わってくる一冊です。

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