1 はじめに
こちらの記事は、IT×ものづくりという視点から発達障害の子どもへの支援と共に、不登校の子どもへの支援も行っているLITALICOワンダーの取材をもとにしたものです。今回の取材では、主に不登校の子どもに対して学校に通うという以外のLITALICOワンダーが提供している選択肢はどのようなものであるか、また学校で不登校を防ぐためにもどのような取り組みができるかについてお話を伺うことができました。
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2 LITALICOワンダーの実践
○保護者の要望から日中通えるコースを開講
LITALICOワンダーのオープン当初に不登校の子を持つ保護者の方から、「日中通えるコースはありますか」という質問をいただき、もともと学校が終わってからの時間帯でコースを開講していたのですが、日中のニーズもあるということから日中のコースを開講しました。また学校に行くのと同じように、日中に活動できる場所が欲しいと行った声や、規則正しいルーティンを身に付けたいという保護者の方からの声もありました。
(出典)LITALICOワンダー
○不登校の子どもへの学習環境作りで心がけていること
不登校の子や発達障害の子も、その子の個性に向き合うことが大切であると考えています。不登校の子も、学校に通っている子も、得意なことや苦手なことはそれぞれあると思うので、そこに一人一人向き合っていくことが大切であると思っています。不登校の子どもの中には家でよくゲームをしたり、1つのものづくりなどに没頭したりすることが好きな子も多いので、プログラミングやロボット製作に興味を示す子が多いように感じます。
(出典)LITALICOワンダー
また、子どもによっては学校のクラスで他の子どもと授業を受けたり、新しい人に会ったりすることが苦手な場合もあるため、他のお友だちと視線が合いにくいよう、ブロックで囲んだスペースを作ったり、基本的に同じスタッフが対応できるようスケジュールを調整するなど、保護者の方からのその子に一番合った環境について伺いながら子どもにあった環境づくりを意識し、一人一人が集中できるようにしています。
○学校との関わりについて
IT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」とは別の事業で展開している、ソーシャルスキル&学習教室「LITALICOジュニア」 では、一部横浜市との連携なども行なっており、横浜エリアのLITALICOジュニアに通うことで学校の出席換算ができるようになっている子も何名かでてきています。LITALICOワンダー横浜では、まだ具体的に不登校の子どもの出席日数の換算は行ってはいないのですが、LITALICOジュニアの流れもあり、LITALICOワンダー横浜では、出席日数の換算についてお声がけをいただくことも増えてきました。私たちとしては、お子さんが学校に再度通えることを目指すのではなく、その子にあった選択が取れることを目指しています。その過程で、その子自身が学校に通う必要性を感じたタイミングがあれば、私たちでできることがあれば何か力になれたら嬉しいなと考えています。
○学校を超えて子どもの将来へつながるような関わりについて
LITALICOワンダーでは企業との繋がりや専門学校との繋がりを活かしてお子さんの可能性を広げていこうとしています。例えば、企業との合同イベントを行い、お子さんに参加していただくことで、こういった将来の道もあるということが示せたらと思っています。昨年の夏には大手IT企業の本社でワークショップを行い社員の方と話せる機会や職場を見学できる機会を作りました。
IT企業の職場はカラフル雰囲気な会社が多いので、お子さんのイメージするいわゆるサラリーマンのような働き方や職場だけではなく、見学したIT企業のようなわくわくする雰囲気の職場や仕事もあるのだ、とお子さんたちに感じてもらい、お子さんたちに今のままでも良く、必ずしも大学進学などといった他のお友だちと同じように進まなくても良いということを気づいてもらえればと思っています。LITALICOワンダーには、専門学校に入る時の面接においてLITALICOワンダーで作ったゲームを見せて専門学校に入学したという子どももいます。まだまだ、事例は少ないですが、様々な将来への可能性があるということをお子さんたちに示していきたいと思っています。
○子どもと接していくなかで心がけていること
LITALICOワンダーに来ているお子さんの中には、学校での成功体験が少ない子もいます。そのため、その子がのびのびと自分らしい力を発揮できるように、子どもに授業の主導権を渡す、その子らしさが出た時にしっかり褒めるなど、その子の個性をそのままを伸ばしてあげられるよう心掛けています。例えば、学校ではルールに沿って、行動しなければならない場面もありますが、LITALICOワンダーに来ているときは「自分のやりたいようにやってみていいよ。」と伝えています。
また、カリキュラムを1から順番に行うのではなく、一人一人子どものレベル、興味に合わせて行うことを意識しています。そうした中で成功体験を積み、お子さん自身がやりたいことやできることをふやしていくことで、自己肯定感を養っていってほしいと考えています。
○学校など大人数の場でもできる取り組みについて
不登校に限ることではありませんが、子どものなかで自信になるものが1つでもあればいいなと思います。例えば、学校の成績が悪かったり友達と上手く付き合えなかったりしても、「私はプログラミングができるからね」というような強みが友達との会話のきっかけや学校に通うきっかけになるのかなと思っています。また学校の中でのお友達と、LITALICOワンダーという別のコミュニティでの友達、自分の好きなことで繋がることができると、自分の好きな話ができると思います。
問題行動をして叱る先生もいますが、叱るタイミング以上に、褒めるタイミングのほうが実は重要なのではと考えています。褒めることでその子の良い行動を増やし、自然と問題行動が軽減されることも時にはあります。子どもの褒めポイントを見つけるという視点を持つことで、日頃叱りがちだった先生自身の気持ちも楽になるのではないでしょうか。
LITALICOワンダーの中には、LITALICOジュニアと併用している子やLITALICOジュニアから移動してくる子がいます。LITALICOジュニアでは落ち着きがなかった子が、LITALICOワンダーに来ると態度が改善されることもあります。また、学校だと集団行動に抵抗がある子が、LITALICOワンダーであれば問題なく集団にいられるという場合があります。学校だと過度に自分を守ろうとしている子が「自分の好きなロボットを作っている人がいるから、他の友達と話すと参考になるぞ。」と感じ、自分の好きなことを通じて他の友達に主体的に話しかけようとする姿も見受けられます。一概には言えないところですが、子どもの好きなこと・興味のあることをきっかけにお子さんのできることを見つけて「そこがいいところだよ」と認めあげることも大切だと考えています。
(出典)LITALICOワンダー
また、学校でできる取り組みとしては子どもの興味に合わせて、多様なクラブ活動をつくることも一つの方法かもしれません。学校の中で子どもたちの居場所となるようなコミュニティがあると子どもたちも安心できると思います。
○先生方へのメッセージ
LITALICOワンダーに来る子でも、私から見て「あまり夢中になれていないな。」と感じる子どももいます。その子に対してはLITALICOワンダーを無理に勧めるのではなく、その子に合った選択肢を勧めてあげるようにしています。学校の中だけで不登校について解決するのは大変だと思います。地域の資源・リソースを知っておくことで、その子に合った選択肢を提案することができるようになり、お子さんにとっての“道”が開けていくのかなと思います。
(出典)LITALICOワンダー
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