児童と向き合い、家族に支えられて乗り越えた2年間 幸田新一さんインタビュー(後編)(Teach For Japan)

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目次

1 はじめに

Teach For Japan(TFJ)とは、すべての子どもがその子にとって素晴らしい教育を受けられる社会の実現を目指しているNPO法人です。多様な経験を持ち、教育への情熱を兼ね備えたフェロー(教師)を公立学校へ送る「フェローシップ・プログラム」を展開しています。こちらの記事はフェローの方の体験談をまとめたものです。

また、こちらの記事の一部はWEBやフライヤーに掲載されたものを編集したものです。
前編はこちら

2 フェローの紹介

幸田新一さん

東京都公立義務教育学校教諭。広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、学校法人専門のコンサルティング企業に勤務し、生徒募集、カリキュラム設計、教員研修、新規開校等の支援を担当する。2015年4月よりTeach For Japanフェロー3期生として奈良県の公立小学校に赴任。2年間のフェローシップ・プログラム期間を終えた後、現職に至る。プログラム期間中に長女が生まれ、現在二児の父でもある。(2017年8月2日時点)

3 出来ることを通じて見つけた自分の役割

職員室内での他の先生との関わりはどうでしたか?

最初はやはり壁があったと思います。他の先生方からしたら、私は、「よくわからない東京の団体から来た得体の知れないやつ」といった感じだったと思います。そんな中で自分も「TFJの肩書きを背負って来ているんだからしっかりやらないと。」と肩肘張っていた部分もありました。こちらは学校現場で働くのは初めてで、当然わからないこと、できないことが多々ありました。それをわからないままにしていると、最終的に困るのは子どもですから、困ったらすぐにわかりそうな先生に聞くようにしましたね。

それから自分からできることで心がけたのは、他の先生の仕事で引き受けられそうなものは進んで引き受けたことです。特に、パソコンの操作で困っている先生に自分のパソコンの知識を活かして、厚かましいと思いながらもアドバイスなどをさせていただいて、最終的には「パソコンに困ったら幸田に聞け」というように職員室内で質問を受けるようになりました。こうして自分で出来ることを少しずつやって、職員室内で自分の役割を見つけて、周りの先生方との関係をつくっていきました。

赴任された最初と最後では職員室の印象は違いましたか?

違いましたね。最初は淡々と仕事をされている方が多いのかなと思いました。しかし、子どもに接する場面や授業の様子に触れ、皆さんそれぞれ子どもに対して情熱を持って必死に仕事に取り組んでおられると感じました。そんな先生方と一緒に教育に取り組むうちに、私自身も大きく成長させてもらえました。最後には周りの先生方とコミュニケーションをはかりながら子供たちの教育にあたっていくことができ、その中で自分も微々たるものですが、貢献できたと思います。

同じTFJのフェローの方について印象に残っていることはありますか?

私が赴任した当初、奈良にはフェロー1期生で期間を終えて、教師を続けている人、赴任2年目になる2期、そして同期である3期のフェローがいました。私と同じように関東から単身で奈良に来ている人が多かったので、たまに会ってご飯を食べながら学校の様子を話すことがありました。そういう交流がすごく心の支えになりました。今は福岡を中心に、豊かなフェローコミュニティが築かれていると聞いています。

やはり先輩がいるというのは大きかったですか?

直接会う回数が多かったわけではありませんが、同じ地域に同じTFJフェローがいてくれるのは大きかったです。また、赴任前に同じ研修を受けた同期が、福岡など他の地域で頑張っているのも心の支えになりました。

4 やりきれなかった挑戦を。卒業後も教育現場に残る決断

TFJのフェローを終えられて、現在のお仕事について伺えますでしょうか?

東京都の公立の義務教育学校に勤務しています。義務教育学校とは小学校と中学校という義務教育課程を1つの学校で行なっている学校です。フェロー2年目の時に採用試験を受けて合格し、現在は4年生の担任をしています。

教師を続けたいと思われた理由は何ですか?

TFJのフェローとしての2年間のなかでやれたこともありましたが、やりきれなかったことや、もっとこうしたらよかったと思うことが色々とありました。

そういったことにもっと挑戦してみたいと思い、子どもの成長に関われる教師を続けていきたいと思いました。2年間暮らして好きになった奈良で続けたいという思いもあったのですが、家族の仕事の関係で関東に戻って続けることにしました。

TFJのフェロー時代と現在で大きく感じる違いなどはありますか?

TFJのフェロー時代に色々な経験をしたこともあって、学校現場で働いて、3年目の現在では、ちょっとのことでは動じなくなりましたね(笑)。目の前の課題に対して絶対の正解はありませんが、似たようなことがあった経験などから、その時どう考えたかを思い出しながら、「こうしたらうまくいく」ということを考え課題に取り組むようにしています。自分の中での経験の積み重ねがあることが活きています。

TFJにいたからこそ出来たことなどはありますか?

フェロー同士の連携です。TFJを卒業したら連携できなくなるということはなく、修了生になったからこそより視野が広がり、今後も修了生だからこそできる新しいつながりや試みがあると思っています。

フェロー時代にTFJだからこそ身についたマインドやスキルなどはありますか?

赴任前研修や2年間のフェロー期間の中で、自分自身の教育に対するビジョンを深く考え、振り返りながら実践してきたことが私の教師としての根幹を形作ってくれたと思います。TFJのフェローだからこそできた経験だと思います。

5 家族の支えがあって出来た2年間

フェローになることが決まった際、ご家族の反応はいかがでしたか?

最初は「子育てほったらかして何しているの?」みたいな感じでした。奥さんと子どもを東京に置いていくという状況でしたからね。最終的にはこのプログラムを通じて自分が何をしたいのか、何を叶えたいのかを丁寧に妻に説明して、最終的には同意してくれました。ありがたかったですね。本当に頭があがりません。

前職の仕事も充実していたので、それを辞めて、住む場所も生活も変わることに不安はありましたが、やりたいことを考えた時にTFJだと思い、その点について家族にも理解をしてもらえてからは、その後に後悔したことなどはありません。

奥様が仕事を辞められて奈良についていかれるということも選択肢にはあったのでしょうか?

そういった話もありました。しかし、一度離職して子育て後に再就職は大変ではないかということもあり、一旦家族は東京に残り、単身で移住しました。ちょうど1年目の途中のタイミングで2人目の子どもが生まれ、2年目は妻の育児休暇中だったので、家族で奈良で暮らしました。今は東京に戻り、妻は元の職場に復帰しています。

6 現在、フェローへのエントリーに迷われている方に一言お願いします。

エントリー前の不安が完全に解消されることはないと思います。自分の不安を受け止めた上で、それでもやってみたいという気持ちが自分の中では大きかったので、その気持ちに素直に従って、エントリーしました。不安なしに飛び込んだ人はいないと思いますので、自分の不安も受け止められた上で前向きな気持ちがあれば是非チャレンジしていただきたいです。

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