「学ぶ」ということの意義~中学生になるみんなへ~

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1.小学校教師になろうとした理由

私が、小学校教師になろうと決意した理由は、貧困問題を解決したいと考えたからだ。日本の子どもの相対的貧困率は約17%と言われている。つまり、6人に1人の子どもが貧困状況にあるということだ。先進国の相対的貧困問題の根深い部分は、この貧困状態が、世代間で引き継がれていくということだ。子どもが相対的貧困なら、その子が大人になったとき、生まれてくる子どもも相対的貧困状態である確率が高いのだ。日本の経済や文化の根幹を支えるのは、いつの時代も「人」である。しかし、その状況に対して表面的で形式的な支援しかなされていない。この貧困の世代間再生産を是正する本質的で抜本的な改革は、金銭面の援助ではなく、相対的貧困に晒されている子どもに対して自らの力でその貧困状態から抜け出すことのできるだけの学力と生きる力をつけることだと考えたのだ。なぜなら、金銭的援助は常に与える・与えられるの関係であり、本人の成熟がなく、援助する人がいなくなればまた貧困に逆戻りになるからだ。そうさせないためには、「教育」が大切だと考えた。

2.夢をかなえた瞬間ゴールはスタートにかわる

幼い頃は、「○○になりたい」とゴールだけ決めがちだ。しかし、ゴールは、そのゴールテープを切った瞬間からスタートになることを忘れてはならない。だから、夢や目標を決めるときは、理由の中に、「その職業を軸として、「自分はどう生きるのか」」をきちんと入れ込んで考えて決断して欲しい。なぜか、それは、私たちは個人であり市民(社会の形成者)でもあるからだ。「これになりたいな」だけでは、満足するのは自分だけだ。しかし、他人に支えられて生きている以上、あなた自身も誰かを支える他人にならなければない。だからこそ、市民として生きる理由として、「その職業を軸として、「自分はどう生きるのか」」を考えに含めて職業を選択して欲しい。

3.「どう生きるか」は「どう学ぶか」

そうは言っても、「どう生きるか」を考えることは、なかなか難しい。難しい理由は明白だ。答えなどどこにもないからだ。しかし、これだけは言える。学んで、知識を得たり、その知識と知識を整理しながらつないだりする術を得たり、そこから深くまたは広く考える力がなければ、「どう生きるか」をそもそも考えることはできない。そういう意味で、そのこれからの人生を歩んでいく上で、切ろうとしても切り離すことの難しいもの。それが「学び」だ。「学ぶ」ということ、「なぜ、学ぶのか」を考えることなしに、「どう生きるのか」という問いに対して自分なりの解釈や選択をはかることはできない。

4.学ぶことを問い続けるからこそ成熟できる

今後、嫌でも考えるだろう。「なぜ、学ばないといけないのだろう」と。算数だって歴史だって何の役に立つのだろうと。でも、大いに考えて欲しい。そして、いろいろな解釈をしてみたり、自分なりの納得できる論を導き出して欲しい。それが1つでもできたとき、ものすごく生きやすくなるし、自信がつくことだろう。

5.おわりに

これからの世の中を担う大人になるみんなへ。とことん考え、悩みながら自分で決断して、自分で決めたことを大いに実行して平和で民主的な社会を作ってほしい。今まで書いてきたこと。難しいと思う。子ども向けに書いていないから当たり前だ。今、わからなくていい。ふと、大人になって読み返したとき、成長したみんなの心に生きることへの活力を与えられたら幸いだ。

6.著者プロフィール

杉本 大昂(すぎもとひろたか)
1991年 静岡生まれ
立命館大学産業社会学部卒
京都教育大学大学院連合教職実践研究科首席修了

略 歴 
・立命館大学在学中にNPO法人ROJEにて活動
  「関西教育フォーラム2011」プロジェクトリーダー,EDUPEDIA 編集者
・京都教育大学大学院在学中に京都市内の小学校非常勤講師を経て現職。

現 在 岐阜県公立小学校 教諭

論 文
 2013
・「なぜ文化階層の低い家庭の子どもは「学力」が伸びにくいか」
  -立命館大学産業社会学部教育賞

2014
・ 「厳しい教育環境にある家庭」の子どもの「学力」をいかにして伸ばすか
 -立命館大学産業社会学部優秀賞
・「いかにして『厳しい教育環境にある家庭』の子どもに言語活動の充実を図るか」
  -日本教育メディア学会第21回年次大会発表論文集、pp.178-179

2015
・「初等社会科における『公民的資質の態度』育成をめざした授業実践」
   -日本教育メディア学会第22回年次大会発表論文集、pp.96-97

2016
・「教育社会学からみた小学校社会科におけるメディア・リテラシーの育成をめざした授業実践 」
  -日本教材文化研究財団メディア・リテラシー研究会『メディア・リテラシー教育の実践事例集の開発』,
   調査研究シリーズ70,pp.61-66

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