1 はじめに
この記事は、学習塾の講師を勤めていらっしゃるKさんに2018年12月1日にインタビューした内容をまとめたものです。
◯ シリーズ【教育に関わる仕事の生の声、集めました】とは ◯
教育に関わる仕事はしたい、でもどんな風に考えて決めたらいいかわからない。そんな学生の方に向けて、教育に関わる仕事をしている社会人の方々にお仕事の内容について実際にお聞きしてその内容をまとめたのが、シリーズ【教育に関わる仕事の生の声、集めました】です。
教育に関わる仕事に携わっている方々が、その仕事にどんな風に取り組み、そしてどんな思いを持っているのか、その仕事の魅力や大変なところはいったい何なのか。そういった仕事に関する深い内容にまで踏み込み、その仕事に関わる人のリアルな声をお届けします。
この記事を読んだ学生の皆さんが、その仕事を身近に感じ、進路選択の参考になれば幸いです。
2 今の仕事を選んだ理由
子どもの学力面をきめ細やかな「授業」でサポートしたい
私は子どもたちに勉強を教えたいという理由で、最初は小学校の教員になりたいと思っていました。しかし、教育実習に行き実際に教員の仕事を体験する中で、学級経営の仕事も楽しくやりがいもありましたが、自分がやりたいことは授業だと気づきました。道徳の授業や指導を行ったり、学校行事の準備を行ったりすることよりも、子どもたちの学力面でのサポートを行いたい、という思いが強くなっていきました。
塾の魅力として感じていたのは、子どもを「わかっていない」状態のまま置いてきぼりにしない、ということでした。学校の授業では教員一人に対して子どもたちの人数も多く、個々の生徒に応じた細かな対応ができない部分もあり、限界を感じていました。その点、塾の講師という職業は、子ども一人一人に応じた柔軟な対応ができるため、私にとっては魅力に感じました。
生徒に学校以外の居場所を作りたい
私が塾講師を選んだもう一つの理由としては、子どもたちに学校以外での居場所を作ってあげたい、という思いがあったことですね。私自身が勉強嫌いで学校の居心地が悪かった中で、塾が自分の学力を上げてくれて、自分の居場所になっていった、という経験もあり、「居場所としての塾」という側面にも魅力を感じるようになりました。
3 今の仕事について
1日のスケジュール
授業のある日のKさんの平均的な1日のスケジュールを紹介します。
仕事の魅力
授業について
仕事の魅力は授業における子どもとの距離の近さや、そこに由来する子どもたちとのコミュニケーションの量の多さですね。生徒が自然と口にしてくれる感謝の言葉が仕事のやりがいです。
また、生徒の側が単に先生を「頼る」という関係だけでなく生徒が講師を「使える」というのが塾の仕事の特徴であると思います。講師が優位に立ちすぎず、生徒と対等に近い立場に立ちながらコミュニケーションが取れる、ということですね。生徒が気軽に講師に対して「わからない」「うまくいかない」ことを講師に打ち明け、そこから講師と生徒がともにその課題の解決に向けて行動できる、ということが授業の魅力であると思います。
授業の研修について
それから、仕事の魅力としては、研修がかなり充実していることがあると思います。かつては毎週一回の研修に参加していましたが、それは大変ためになるものでした。研修の内容としては、簡単に言えば模擬授業を行って先輩からアドバイスをもらえる、というものです。作り方が上手な授業をはじめ様々な授業を見ることができるため、授業を作る上での刺激に繋がりますし、講師同士のヨコの繋がりも研修を通じて生まれてきました。自分の授業に対して細かく評価が付けられるからこそ、自分の授業力の現状を把握出来るとともに、より良い授業を作っていこうというモチベーションになりました。
組織的な授業のサポートについて
授業準備に関しては、ある程度板書案が揃っているなど、授業のサポート体制がとても整っていますし、自分の分からないところも周囲に聞きやすい風土であることもありがたいと思います。テキストに紐づけられたテストなども一通り用意されているので、授業を作る上で必要なコンテンツはとても整備されていると思います。教材を一から作ったり、カリキュラムの考案をしたり、ということに時間が取られず、カリキュラムや教材から、授業全体の見通しがつきやすかったことはとても助かりました。講師の負担を軽減するための仕組みはしっかり構築されていると思います。
仕事の大変なところ
教材研究はとても大変ですね。「完全にやり切った」というゴールがない中で、どこまでやったら子どもの理解につながるのか、ということを考えていくことが初めは本当に大変でした。研修のための授業を作らないといけないこともあり、休日を教材研究に当てないと、授業をこなすことが出来ませんでした。特に1年目は感覚的にはほとんど休みがない、という状態であったと思います。
4 編集後記
このインタビューはあくまで塾講師の一例ではありますが、職業として塾講師を選ぶとき、また塾講師として就職する企業を選ぶときに参考になる内容や観点が数多く掲載されていると思います。授業はどのような形で行われるのか、授業の講師側の裁量はどの程度あるのか。自分の授業力はどのように向上していけるのか、どのようなキャリアを歩むことができるのか。このような観点から塾講師、という職業を考えることができるのではないでしょうか。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 新井 理志)
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