1 はじめに
私は、非常勤講師や臨時的任用教員として、初任者に指導や助言をすることが多くあります。若い先生を見ていると「よい授業をしよう」という気持ちを感じるのですが、話し方や目線といった「授業以前の技術」で上手くいっていないことが多いです。そして、そのことを具体的に指摘すると、見違えるように授業がよくなることが分かりました。
これらの経験から、私がこれまで「当たり前過ぎて発信するまでもない」と思っていたことが、実はベテランのノウハウが詰まっていて、発信する価値のあることが分かりました。
そこで、「授業以前の技術」を「基本のキ」としてシリーズ化し、若い先生に役立ててほしいと思います。また、経験豊富な先生にも自分の指導を見つめ直すきっかけになれば幸いです。
本記事では、「授業中に子どもをよく見ることの大切さ」をお伝えします。
2 子どもを見ずに指導書を見る先生が多い
若い先生を見ていると、「今日中にここまで授業を進めなければ」という意識がとても強いことが多いと分かります。そのため、授業後に感想を聞いたとき、授業進度を懸念する先生が多いのです。
注意すべきは、先生は「授業」をしますが、その場の主体者は「学習」をする子どもたちです。授業では、子どもが理解し、主体的に活動することが大切です。
3 まずは子どもを見よう
「指導案の予定通り進めないといけない」という気持ちを強く持っていると、授業中に先生が見るのは教科書や指導書が中心になり、子どもを見ることが蔑ろになります。しかし、「授業を進める」より「子どもを見る」ことが大切です。
よりよい授業運営を実現するために注意すべきポイントは以下の3点です。
- 子どもがどこを見ているか(先生?発言者?よそ見?)
- 子どもが話を聞いているか
- 子どもが学習に集中しているか(違うことをしていないか)
です。
先生や発言する子どもの話を聞いていないのに授業を進めると、「授業は聞かなくていい」「やりたい人だけやればいい」ということを認めることになります。いくら時間内に授業が進んでも、指導内容が子どもに身につかなければ意味がありません。
最もよくないなのは、真面目に授業を受けたい子が「真面目に授業を受けるのが馬鹿らしい」と思ってしまうことです。
学習に集中していない子どもがいる時は、
- 話を聞く姿勢・態度ができるまで待つ
- 話を聞いている子に「話が聞けているね」と声をかける
- 話を聞くように、発言者を見るように促す
などして、子どもが話を聞ける、集中できるように支援してください。
4 子どもを見ると、授業が進むようになる
子どもをよく観察すると、
- 集中していない子が話を聞くようになるタイミング
- 話を聞いていた子の集中が途切れるタイミング
も見えてきます。そのような時に学習活動を変えると、子どもは飽きずに学習に取り組めるようになることも分かってきます。
そして、教師が子どもを見ることが、子どもが話を聞く、学習に集中できる時間が増えることに繋がるので、自ずと授業が効率的になります。
「授業を先生が進める」のではなく、「学習を子どもが進める」のが本来の姿です。「授業内で指導案の内容を終わらせるべき」という意識から離れ、子どもをよく見てください。きっと授業がスムーズに進むようになります。
5 プロフィール
千葉教生(ちば のりお)
長年公立小学校で勤めたのち、現在はフリーランス教師として様々な学校で非常勤講師としてはたらく。学校勤務が終わったら、塾、教材開発の仕事、プログラミング教室講師などをしつつ趣味の車を楽しむ。
前横浜市立公立小学校副校長。学習情報教育センター参与、EDUPEDIA社会人スタッフ、メディア教育研究会事務局、freedu代表。
主な著書に「社会科授業力の開発 小学校編(明治図書)」「学校レクリエーション大百科(ポプラ社)」(共に共著)がある。
(2021年8月時点のものです。)
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