三年きりしか生きられないのは本当か ~三年とうげ(光村図書3年国語)


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 「お話の世界」を壊さない程度に

「三年とうげ」は朝鮮の民話であり、「世界の民話を読む楽しさ」を感じ、読書活動につなげることを期待されている教材です。おじいさんがトルトリの言葉を信じてコロコロ転んでゆく様子はとてもユーモラスであり、どこか1年生で学習した「おむすびころりん」のリズミカルな表現と似ているような気もしてきます。
2学期末に位置する教材であったので時間が足りなくなってしまい、切羽詰まってあまい細かく登場人物の気持ちや情景描写を読み取ることができませんでした。そこで「お話の世界」を壊さない程度に、「三年とうげの言い伝え」と、「トルトリの言葉」について考えることを中心に授業を進めてみました。これがけっこう盛り上がりました。
子供たちには、
「『スイミーで魚が言葉を話すのはおかしい』とか、『お手紙でがまくんやかえるくんが字を読めるのがおかしい』なんて言ってたら、物語にならないよね。『スイミー』も『お手紙』も、そしてこの『三年とうげも』も、お話の世界なんだからそれを壊さない程度に考えて発言してね。」
と、釘を刺しておきます。お話の世界を壊さない程度に考えるのは、どの物語を読むときにも大切ですね。
「三年とうげの言い伝え」と「トルトリの言葉」はこの物語を回してゆきます。これを疑うことは、お話の世界を壊すか壊さないかのギリギリのラインかも知れません。ところが、これと「トリトルの言葉」疑って子供たちに話合わせることで、けっこうこのお話のテーマが見えてくるのです。

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 三年とうげの言い伝えは本当か

まず、「三年とうげで転んだら、三年きりしか生きられない」が本当かどうかについて考えさせてみました。何度か音読させた後であっても、私の体感では、この物語の全貌を把握している子供が3割、何の話かつかめていない子供が2割、残りの5割は分かったような分からぬような・・・です。
把握している子供もそうでない子供も、言い伝えの部分「三年とうげで転ぶ出ないぞ~長生きしたくとも生きられぬ」の部分を読むのは大好きです。デジタル教科書の範読がとても面白いので、それを真似します。
これを読ませてから、「この言い伝えが本当か本当ではないか」と、かなりザックリした問い方で挙手させました。「本当派」が7割、「本当ではない派」が3割程度でした。本当と考えるのが子供の自然な読みだと思います。
あまりディベート的に意見を戦わせると屁理屈が横行するので、ソフトなムードでそれぞれに意見を聞きました。意見を聞く際に
「本当に手を挙げた人でも、本当ではないに手を挙げた人でも、反対側の考えの方の意見を言ってくれてもいいよ」「『私は本当だと思います。理由は・・・』『僕は本当ではないと思います。理由は・・・』というように、言ってください」「友達の意見に付け加えがある人は一本指を立てて手を挙げてください」
などと、発言時の条件を示しました。また、物語の叙述を元に意見を言えた子供には、
「すごい、すごい。ちゃんとお話に書かれている事を見つけて理由を言えるのは、すごいね」
と、褒めます。
以下、両者の意見を書いてみます(2クラス分の授業で出た意見を書いていますので、1クラスでこれだけ出たわけではありません)

【本当派の意見】
① 「おじいさんは真っ青にり、がたがたふるえた」と書かれている。
② おじいさんは「病気になった」「病気はどんどん重くなった」と、書かれている。
③ おじいさんは布団をかぶって寝込んでいます。
④ ずっと言い伝えられているのだから本当。
⑤ 昔からずっと言われてきているのだから(それが言い伝え)、本当。
⑥ 昔、昔に本当に死んだ人がいるから、言い伝えになった。
⑦ おじいさんはとなりの村に反物を売りに行くぐらいだから元気なはず。そのおじいさんが病気になるんだから、本当。
⑧ 挿絵でおばあさんが薬を出している。
⑨ 坂で転んだら危ないから、少しオーバーな表現で言い伝えをしたのではないかな(これは私が出しました。)→→→ 本当ではない派から「あまり高くない、なだらかな坂」と、書いてあると反論されました(笑)

【本当ではない派の意見】
① 「その日から、おじいさんは、ごはんも食べずに」と書いている。ご飯を食べなかったから病気になった。→→→ 本当派から、「食べられなくなることこそが、呪いだよ」との意見あり。
② 今までに誰か一人でも死んだ人がいるという前例が書かれていない。→→→ 本当派が「死んだ人がいないということも書かれてない」との意見あり。
③ 挿絵でおばあさんが笑っている。
④ おばあさんがお酒を飲ませている。→→→ 本当派から、「あれは薬だよ」との意見あり。
⑤ おじいさんはトルトリの言葉ですぐに治ったから本当ではない。
⑥ 病は気から。→→→ これについては、どういうこと?と、みんなに聞き直しました。→→→ おじいさんは言い伝え通りに病気になったのではなくて、言い伝えが怖くなって気持ちが弱くなって病気になったんだ、言い伝えの事を心配し過ぎたんだ・・・といったあたりに落ち着きました。

 トルトリの言葉は本当か

挙手させたところ、こちらは本当派が5割、本当ではない派が5割程度で拮抗していました。

【本当派の意見】
① トルトリは、賢そう。
② 病気が治ったのだから、元気になった。だから、本当。
③ 三年とうげで本当に歌が聞こえてきた。
④ 歌はきっと神様が歌っているから本当。→→→ これには、

【本当ではない派の意見】
① トルトリが怪しい。→→→ 水車屋がなんで「何度も転べば、うんと長生きできる」なんて言えるのか。神様でもお坊さんでもない。
② トルトリが怪しい。→→→ (挿絵では)若いのに、そんなことが分かっているのは変。
③ おばあさんが怪しい。→→→ (挿絵では)おじいさんが寝込んでいるのにおばあさんは笑っている。
④ 病は気から。→→→ これについても、どういうこと?と、みんなに聞き直しました。→→→ おじいさんはトルトリの言葉通りに転んだことで元気になったのではなくて、トルトリの言葉を信じて転んでみたことで元気になったんだ・・・といったあたりに落ち着きました。
⑤ 病は気からなので、これはトルトリのおじいさんに安心させて元気を出させようとする作戦。
⑥ おじいさんが普通に長生きしただけ。
⑦ おじいさんはふもとまで転んでいけるのだから、元々は元気な人だったのに、言い伝えを信じすぎただけ。

 病は気から

光村図書の国語教科書には「三年とうげ」の前にことわざの学習をする単元があります。私のクラスでは1学期からことわざを少しずつ学習しており、「病は気から」についても、多くの子供が意味が分かっています。「三年とうげ」のテーマのひとつはおそらく「病は気から」でしょうから、上記のような議論をしているうちに「本当派」も「本当でない派」もだんだんそれが分かってきます。授業の最後に、「この民話が伝えたかったことを、ことわざで言うなら何だろうね?」と、問いかけて、「いっせいのーで」で答えさせたらほぼ全員が「病は気から!!」と言っていました。

この物語では、最後に「ぬるでの木のかげで歌を歌ったのは誰?」と問いかけられますが、それに対しても子供たちはとても楽しそうに考えていました。テーマが分かったからこそ、おばあさんやトルトリを含めた村の人たちがおじいさんを元気づけようとする暖かい気持ちも読み取れたのだろうなと思います。

三年とうげ~歌を歌ったのは誰? 

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