4年生理科「雨水の行方と地面の様子」関係を整理して防災意識を高める授業レシピ

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目次

はじめに

長年にわたり実践が重ねられてきた単元が多い理科の内容のうち、本単元は前回の学習指導要領改訂で新設されたものである。そのためか、教科書での扱い方も教科書会社ごとに違いがある。

学校がある地域の気候学校がある土地に応じて、授業計画をたてる必要がある。

本単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、雨水の行方と地面の様子について、流れ方やしみ込み方に着目して、それらと地面の傾きや土の粒の大きさとを関係付けて問題を見いだし、実験や観察などを通して解決する。

これまでの生活経験をもとに根拠のある予想や仮説をたてたり、調べて分かったことをもとに大雨による災害について考えたりすることで、生活に生かそうとする態度を育てたい。

単元の評価規準

知識・技能

  • 水は、高い場所から低い場所へと流れて集まることを理解している。 
  • 水のしみ込み方は、土の粒の大きさによって違いがあることを理解している。 
  • 観察、実験などに関する技能を身に付けている。

思考・判断・表現

  • 雨水の行方と地面の様子について追究する中で、既習の内容や生活経験を基に、雨水の流れ方やしみ込み方と地面の傾きや土の粒の大きさとの関係について、根拠のある予想や仮説を発想し、表現している。

主体的に学習に取り組む態度

  • 雨水の行方と地面の様子についての事物・現象に進んで関わり他者と関わりながら問題解決しようとしているとともに、学んだことを学習や生活に生かそうとしている

参考:国立教育政策研究所,”「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する指導資料【小学校 理科】”,pp.86-87,東洋館出版社,令和2年, r020326_pri_rika.pdf (nier.go.jp)

本単元の難しさ

  • 運動場の水がなくなる理由を、「しみこむから」「かわくから」と考えている児童が多い。実際は流れてなくなる水が大半であるが、児童からは「流れてなくなる」という考えがでないこともある実際に運動場などで雨水が流れている様子をみせ、問題を見いだしたい
  • 「しみこむ」は第2次の問題になる。一方「かわく」は、東京書籍の場合は別単元の「自然のなかの水のすがた」につながるし、大日本図書では本単元に含まれる。教科書によって扱いは違うが大切な考え方なので、児童から出たら価値付けておきたい。(ちなみに学習指導要領では「天気の様子」の項目内に記載されている。)
  • 雨水の流れを観察するのにちょうどよい日に授業をするのが難しい。分かりやすい流れが観察できるのは経験的に10㎜前後の雨である。調整が大変だが、大雨の日に観察できると問題解決がスムーズに進む

単元開始までの準備

  • 授業の日程を調整する

各教科書では、梅雨前線が停滞する6月か、秋雨前線が停滞しがちな9月に設定されている。導入は、できるだけ大雨の日を選びたい。できれば長靴を持ってくるように伝えて思う存分観察できるようにしておく。

  • 学校敷地内の排水の仕組みを調べておく

学校の運動場は、排水を考えてわずかに傾斜がついていることが多い。運動場が土でない場合も排水溝がつくってある。敷地内に降った雨水の行方を追ったときに、児童に見せたい箇所や危ない箇所を調べておく

  • 水はけのよい土と悪い土がある場所を調べておく

水はけのよいところ(砂場など)には水たまりができず、水はけの悪いところ(運動場など)には水たまりができている。土の粒の大きさによる水のしみこみ方のちがいを調べる実験をするときに、ちょうどよい砂と土がある場所を探しておく。ラップの芯とビー玉(東京書籍の場合)など、土地の傾斜を調べる実験の材料をそろえておく

単元の展開【全5時】

第1次 雨水の流れ方

第1時 運動場の雨水はどこへいくのだろうか。(雨の日に実施)

  • 雨の日の運動場はどんな様子か、降った雨水はどこへいくのか問う。
  • 出された考えを確かめるために、運動場で雨水の様子を観察する。
  • 観察して気付いたことを結果としてまとめ、次時の問題をつくる。

※流れを追って水の行方を確かめさせたり、砂場には水たまりができていない様子を観察させたりする。

※しっかり雨が降る中で、本物を観察すると分かることがたくさんある。この観察で地面の傾斜に着目する児童がいれば、次時の問題につながるようにしたいし、砂と土のしみこみ方に気づく子がいれば、気づきとしてまとめて先で生かしたい。

※動画で水の流れる様子を撮影しておく。落ち葉など軽いものを落とし、動きが分かりやすいようにして撮影するのもよい。運動場のどこに水の流れができているか、どの方向に向かっているかがわかるように撮っておく。

第2・3時 雨水はなぜ集まってくるのだろうか。(できれば雨が降っていない日に実施)

  • 雨水が集まって流れる前時の動画をみせ、どうしておなじところに水が流れてくるのか考える。
  • 地面の様子に着目した発言を深め、地面の高さの違いを調べる方法を考える。

※高さによる地面の傾きを調べる方法を考えるのは難しい。調べる道具を用意しておき、全体に見せながら考えるとよい。

  • 運動場へ出て地面の傾きを調べる実験を行い、結果を共有する。
  • 結果から分かったことをまとめる。

※結果と考察(分かったこと・まとめ)の書き分けが難しい。結果から何がわかるのか、実験装置を示しながらていねいに確認する

  • グーグルアースで学校の周りを3D表示にすると、低いところに川が流れている様子が分かる。行政の防災マップを見せて、低いところと浸水危険区域が一致しているところにも気付かせたい。(単元の内容ではないが、この学習で防災意識を高めるために有効である。5年「流れる水のはたらき」にもつながる。)

第2次 水のしみこみ方

第1・2時 なぜ砂場には水たまりができていないのだろうか。

  • 同じだけの雨がふっているのに砂場には水たまりがないという雨の日の気づきを思い出させる。
  • 写真で地面の様子のちがいを観察し、砂と土の違いに気付かせる。(砂と土をあらかじめ採取しておき、粒を比べさせる。)

※ここで第1次に「しみこむ」と予想していた子の発言が生かせるようにする。

  • 砂と土の、水のしみこみかたの違いを調べる実験を考え、実施する。
  • 結果から分かったことをまとめる。

執筆者プロフィール

Cana

元小学校教諭。学年主任・研修主任などを経験後、家庭の事情で退職。現在も非常勤講師として小学校で授業をしながら教育系Webライターとして活動中。

学生時代は理科教育を専門に勉強し、大学院で小学校教諭専修免許を取得。理科では、本物にかかわることや、心を動かす授業にこだわっている。

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この記事を書いた人

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