はじめに
3年生にとって、日光や温度は抽象的で捉えにくい概念である。教師の説明を聞くだけではなく、体を動かしたり、自ら働きかけて実験をしたりすることで、主体的な問題解決活動に取り組むようにしたい。
本単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、かげと太陽の位置関係に着目したり、日なたと日かげを比べたりすることで問題を見いだし、観察や実験などを通して解決する。観察や実験の技能を身につけ、太陽と地面の様子について知識を深めていく中で、日常に生かそうとする態度も養いたい。
単元の評価規準
知識・技能
- 日かげは太陽の光を遮るとでき、日かげの位置は太陽の位置の変化によって変わることを理解している。
- 地面は太陽によって暖められ、日なたと日かげでは地面の暖かさや湿り気に違いがあることを理解している。
- 太陽と地面の様子との関係について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を分かりやすく記録している。
思考・判断・表現
- 太陽と地面の様子との関係について、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現するなどして問題解決している。
- 太陽と地面の様子との関係について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
- 太陽と地面の様子との関係についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
- 太陽と地面の様子との関係について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
参考:国立教育政策研究所,”「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する指導資料【小学校 理科】”,p.37,東洋館出版社,令和2年, r020326_pri_rika.pdf (nier.go.jp)
本単元の難しさ
天気
- 晴れないと観察ができない。そのためほとんどの教科書で10~11月に実施する計画が立てられている。
児童の発達段階
- 方位は社会科で習っているが、太陽の動きと関連づけるのが難しい。
- 「日光」という言葉が理解しづらい。また児童は「太陽が当たる」と表現するので、「日光が当たる」という表現に慣れるようにする。
- 初めて温度を測定する単元なので、温度計の目盛りの読み方や記録の仕方などの指導が必要になる。安全面の指導も実験ごとに必要である。
単元開始までの準備
- 授業の日程を調整する。
快晴の日を選んで観察や実験ができるようにする。授業担当者が専科であれば、一日中天気がよい日に授業がしたいということを担任に伝え、調整しておく。難しければ、快晴の日の画像や動画を撮っておいて授業を進める。
- 校内で観察に適した場所を探しておく。
⇒日中ずっと日なたの場所と、日かげの場所(地面が砂や土であることが望ましい)を見つけておく。
⇒かげ遊びができる場所を確保する。(天気がよい日に運動場の一角を使わせてもらうよう全校に周知しておくとよい)
- 温度計の誤差に児童がこだわるので、同じ温度を示す棒温度計を班の数だけそろえておく。(そろえておいても誤差は出る。)
- 予備実験をしておく。
地面の温度を測る実験はやっておくとよい。だいたいの最低温度と最高温度を知っておくと、児童の問題解決がうまくいきそうかどうか見通しをもてる。(温度計に直射日光があたらない覆いや、風で飛ばないようにおさえる石など、必要に応じてそろえておく。)
単元の展開【全8時】
第1次 太陽とかげのようす
第1時 かげふみ遊びをしよう。
- 運動場にラインを引いて四角形のコートをつくり、その中でかげ踏み遊びを楽しむ。踏むチームと逃げるチームに分かれるとよい。
- 踏む側と踏まれる側を交代して遊ぶうちに、かげが踏まれない場所があることに気付く。全員を集めて、絶対にかげを踏まれない方法や、気付いたことを挙げさせる。
子どもから出したい発言
- 絶対ふまれない方法があるよ。
- ふまれないところにいるなんてずるいよ。
- あっちのラインにいくとかげを四角の外に逃がせるから絶対にふまれないよ。
- かげはみんな同じ方向にあったよ。どうしてかな。→次時の問題につながる。
- 運動場ではできないけど、木のかげに入ったら自分のかげを消せるよ。
- かげおくりをやってみたよ。(国語との関連)
- 教室にもどり、気付いたことについて話し合い、問題作りをする。
- 授業のふりかえりをする。
※教師は動画を撮影しておくと、気付いたことを全体で共有しやすい。
※午前中にここまでの授業をして、昼休みなど午後に同じコートでかげふみをさせる。午前中と午後ではかげが反対側にできることに気付かせたい。
第2時
【問題】かげはなぜ同じ方向にできるのだろうか。
- 前時やこれまでの経験をもとに、かげが同じ方向にできる理由を考える。クラスで考えを共有する。
- 太陽を直接見ると目を痛めるため、遮光板を紹介し、使い方を説明する。
- 児童と一緒に調べる方法を考える中で、2人1組で観察して確かめる方法を紹介する。
- 運動場に出て、太陽の反対側にかげができていることを確かめる。
- 教室に戻り、結果と分かったことをまとめる。
- 午前と午後ではかげの向きが違ったことにふれ、太陽の位置がかわっているのではないかという新たな問題をつくる。
子どもから出したい発言
- かげの向きは太陽が関係していると思うよ。
- 夜に懐中電灯でかげあそびをしたときに、光をあてたむこうにできたよ。
- 太陽を見つけて、反対にかげができているのを確かめたらいいと思うよ。
- 目を痛めないように、遮光板を使って安全に観察しようね。
- かげは全部太陽と反対にできていてびっくりしたよ。
- 日なたは暑かったから、日かげに入って休んだよ。→第2次の問題につながる。
- 昼休みにかげふみをしたときにはかげが反対だったよ。太陽が動いたのかな。→次時の問題につながる。
第3時
- 太陽の位置が変わっているということは、前時の様子から分かっている知識としてはじめに確認する。
- かげの向きが変わった理由を考え、クラスで交流する。
【問題】太陽はどのように動くのだろうか。
- 話の中心を、太陽がどのように動いているのかにしぼり、一日の太陽の動きを予想させる。
- 調べる方法を考える。教室の窓側やベランダなど、学校にいる間に何度も観察できる場所がよい。
※太陽は南を通ると先に知っている児童がいるが、空のどこを通るのか指で予想させるとよく分かっていないことがある。指で空を指して予想することで、体全体で学習をしていきたい。
※児童の中には、太陽がゆっくり動くのではなく、時間ごとに急に位置を変えると考える児童もいる。時間ごとに太陽の位置を観察するだけではなく、ゆっくり太陽が動いている様子を観察する活動も入れるとよい。そのためには、同じ位置に立って遮光板で太陽を観察させるとよい。電柱などの障害物を目印に、太陽の位置が少しずつずれる様子を観察させることで納得させることができる。
子どもから出したい発言
- かげの向きが変わったということは、太陽が動いたとしか考えられないよ。
- 太陽はゆっくり動いていると思うよ。
- 太陽は南を通ると聞いたよ。
- 太陽は瞬間移動するみたいに、場所が変わっていると思うよ。
- 太陽は空のてっぺんをとおると思うよ。
- 太陽はじぐざぐに動いていると思うよ。
(いろいろな考えをもっている児童がいることを想定していないと、学習が身につきにくい。)
第4時(休み時間ごとに観察させるため、まとまった授業時間はとらない)
- 第3時に考えた方法で観察をさせる。
第5時
子どもから出したい発言
- 短くなったり長くなったりしているよ。
- かげは短くなったけどなくならなかったね。太陽は真上をとおらなかったんだね。
- かげは東に動いていくよ。
- 南にはかげができないんだね。
- 学校の教室の窓はぜんぶ南側だよ。
- 家でふとんを干すときには、かげにならないところにほしているのかな。
- 実験結果をもとに考察をする。
- 太陽が東からのぼり、南の空の高いところを通って西におりていくことをまとめる。
- 太陽とかげについて分かったことをまとめる。
第2次 日なたと日かげの地面
第1時
【問題】日なたと日かげは何がちがうのだろうか。
- 日なたと日かげのちがいを考える。
- 温かさは温度で表し、温度計で測ることを説明する。
【新たな問題】日光は地面を温めているのだろうか。
- 調べる方法を考える。
子どもから出したい発言
- 太陽の観察をしたとき暑かったね。
- 日かげにいくとすずしいよ。
- 校舎の北はすずしいよ。苔がはえていて、石が濡れているかんじがするよ。
第2時 日なたと日かげの地面の温度の変化を調べる。(朝と昼の温度測定と記録をとる。まとまった時間はとらない。)
- 班ごとに朝と昼に地面の温度を測って記録をする。
子どもから出したい発言
- 日なたは温度がすごく上がったよ。
- 日かげも上がったけど、日なたほどじゃなかったよ。
- 日光があると温度があがるんだね。
第3時
- 観測結果をもとに考察をする。
- 班ごとに測定した温度を発表させて、結果としてまとめる。
- 日光と地面の温度変化について分かったことをまとめる。
子どもから出したい発言
- どの班も日なたの温度が大きく上がっているね。
- 温度計で測ったらはっきり分かったよ。
- だから、日なたぼっこはあたたかいんだね。
- 日かげには苔がはえているのは温度が低いからかな。(4年以降の学習につながる)
執筆者プロフィール
Cana
元小学校教諭。学年主任・研修主任などを経験後、家庭の事情で退職。現在も非常勤講師として小学校で授業をしながら教育系Webライターとして活動中。
学生時代は理科教育を専門に勉強し、大学院で小学校教諭専修免許を取得。理科では、本物にかかわることや、心を動かす授業にこだわっている。
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